お盆の時期になるとスーパーやコンビニエンスストアで目にすることが多くなるのが、お墓参りなどに持って行くためのローソクや線香。なかでも日本を代表するブランドの1つ「カメヤマローソク」(以下、カメヤマ)の商品は、一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
多種多様なローソクやキャンドル、線香を販売するカメヤマでは、定番の白いローソクだけでなく、手に取りたくなるようなユニークな商品を展開している。それが「好物シリーズ」。ビールや寿司、スイーツなどをお供え物感覚で置くことができる画期的な商品だ。
「お墓や仏壇に供えるもの」というローソクの既成概念を変えたこのシリーズだが、そもそもなぜこの商品が生まれたのだろうか。今回は、カメヤマ株式会社の広報担当者にインタビューを行い、シリーズ誕生秘話を聞いた。
先祖供養をより身近に!シリーズ誕生のきっかけ
好物シリーズとは、食べ物や飲み物をリアルに再現したキャンドル・線香のこと。故人の好きだった食べ物や飲み物を、気軽に仏壇やお墓に供えられるというもので、唐揚げやお寿司、そしてビールまで、幅広いラインナップが揃っている。
「普通の白いローソクではなく、故人が好きだった食べ物や飲み物を模ったローソクやお線香をお供えすることで、より深く故人を偲ぶ尊い時間を持っていただけるのではと思い2009年に誕生しました」
開発のヒントの1つは、現実にある墓前の供物からも得たという。たとえば、まんじゅうやお酒。墓参りに行くと目にすることの多いこれらの食べ物もキャンドルになっている。
そして好物シリーズのなかには、企業の商品とカメヤマの線香が合体した「コラボ・好物線香」も。キャンディなど甘い香りのするものが多いが、企画の背景には幼い子供の存在があったという。
「もとは『幼いお子様に仏壇に向かう習慣を身につけていただきやすいように』と開発しました。お子様も自分専用のお線香があれば楽しくお仏壇に向かうことができ、精神が発達するうえでもプラスの効果が期待できるのではと考えました」
ロングセラー商品に着目!人気商品をキャンドルに
商品企画をする際の基本的なコンセプトは、「手向けることで、故人を偲ぶ特別な時間を持つことができるもの」。そのため、故人が好きだったものや昔懐かしい馴染みの深い食べ物などがピックアップされる。
加えて近年は、プレゼントやお土産として購入されることが増えてきたため、消費者の声を参考に商品化することもあるという。企業とのコラボレーションをする場合は、古くから消費者に広く愛されてきたロングセラー商品に着目し、それを手掛ける企業へ協力を打診しているそうだ。
開発の過程にもさまざまな工夫がある。好物シリーズのキャンドルはできるだけ本物そっくりにすることを目指しているため、時にはコラボレーションしている企業から実物を取り寄せることも。また、蝋が溶けていく過程にもひと工夫が加えられている。
「溶けていく途中で、例えばお寿司ならワサビ、おにぎりなら梅干し、豆大福はあんこが出てくる仕掛けを施しております」と担当者。そのリアルさに、「まるで本当に故人が食べたり飲んだりしているみたい」との声も寄せられる。
一方、コラボ・好物線香の開発においては“香り”がポイントに。「『サクマドロップス ミニ寸線香』は、いちご、りんご、オレンジ、メロンの4種類の香りを1箱にしており、それぞれ違った香りをお楽しみいただけます。また『ワンカップ大関 ミニ寸線香』は大関酒造の日本酒を配合、季節商品の『すいかの香り ミニ寸線香』はスイカ生産第1位の山形県尾花沢市のスイカを丸ごと絞ったパウダーを配合しています」
これだけの思い入れがあるということは、その分出来上がるまでの苦労も多いということ。キャンドルは形状や色味が多種多様であるため、燃焼を一定に保ち安定させることに苦心するという。線香は、模る商品を口に含んだ時に感じる風味を、香りだけで再現させることがとても難しいそうだ。いずれにしても、社内で何度も試行錯誤を重ね、商品化に至っている。