次に流行する言葉は「day2」?“ギャル語”の現在を雑誌『egg』の編集長に聞いてみた

2022年8月3日

「きゃぱい」(=「キャパオーバー」)「こみこみで」(=「いろんな意味で」)など若者の間で当たり前のように使用されている、ギャルが生み出した言葉「ギャル語」。その浸透力は想像以上に強く、SNSでは幅広い年齢層のユーザーがギャル語を巧みに操る様子を目撃することも少なくない。

なぜギャル語は瞬く間に広がり、たとえギャルじゃなかったとしても使いたくなってしまうのか。今回はその理由を探るため、90年代半ばの創刊からギャル文化の担い手として知られる雑誌『egg』新編集長の⼤熊芹奈さんに話を聞いた。

大熊さんがギャルサーを引退する時、記念に撮影した写真だそう


“ギャルマインド”に惹かれ『egg』の道に

本題に入る前に、そもそも大熊さんはなぜギャル文化に関心を抱き、『egg』編集長となったのだろうか。そのきっかけを尋ねてみると、「“ギャルマインド”に惹かれたことが大きかった」と話す。

「学生の頃からギャルの世界にハマり、渋谷でギャルサー(ギャルのサークル活動)をやっていました。見た目の華やかさや楽しい雰囲気はもちろんですが、何より渋谷のギャルたちはとても義理堅く、人情に厚いところがありまして、そこにグッと惹かれたんです。私たちの言葉で表現すると、“義理・人情・イェイ”っていうところですね」

そんな大熊さんは、もともとギャル雑誌『egg』の大ファン。どんどんギャル文化にのめり込んでいくなかで、いつしか以前から好きだった『egg』への思いが強くなったという。

「『egg』は一度休刊してしまうのですが、前任の赤荻編集長が復刊させてからは『どうしてもあの雑誌に参加したい』と思って。それでいろんな方との出会いを辿っていくうちに、雑誌編集ではなくティーンモデルをマネジメントする立場として参加するようになったんです」

その後、今ではエンターテインメント業界には欠かすことができない、ティーンモデルやタレントたちを人気者へと押し上げるなど、頭角を現しながらついに念願の時が訪れることになった。

「2022年4月に、新編集長に就任することができました。赤荻編集長が復活させた“eggカルチャー”をしっかりと守りながら、令和の時代に合ったギャル文化を作ることにも挑戦していく予定です」

渋谷でギャルサーをしていた頃の大熊編集長のプリクラ。バサバサのつけまつげやカラコンでザ・ギャルだ


「卍」も進化中!現在流行中のギャル語とは?

「“言いたくなる”“口ずさみやすい”、それが『ギャル語』の共通点です」という大熊さん。冒頭で紹介した「きゃぱい」や「こみこみで」は、たしかに口ずさみやすく、30代の筆者もこの原稿を書きながら、何度も声に出してしまったほどだ。では、今はどのような新語が渋谷のギャルたちの間で使用されているのだろうか。

「私が⾼校⽣の時によく使っていた、『つ』ですね。『都合がいい』っていう意味です。LINEなどでやりとりしていて、『都合がいいね』っていう場面では、『つー』って返します。あと『〜だどん』もそうです。言葉の語尾に『〜だどん』って付けるんですけど…これは意味よりも音のおもしろさですね」

また、過去に流行ったものが意味を変えながら使われるケースもあるんだとか。

「例えば、『卍』(まんじ)っていうのがありましたよね?意味的には、ネガティブな時に使う表現だったものが、今はポジティブなときにも使うようになっています。だから今の世代の子たちに『お前、卍やな』って言われたら、褒め言葉ですよ(笑)」

「鬼ムシャ」という言葉は、「すごくムシャクシャしている」という意味なのだろうか…?


ポイントは“音”だけじゃない。ギャル語を変えたSNS

彼女たちが「現場」と称する渋谷で生まれ、広がってきたギャル語。SNSが登場した今、口ずさみやすさや音のおもしろさ以外にも、新たな視点から新語が生まれてくるという。

「今の子たちはSNSがコミュニケーションの中心にあることが多いので、字面も重要になってきているように思いますね。字面を見て『おもしろい』って。ギャルモデルのゆうちゃみちゃんがよく使う、『きゃぱい』は音もいいですが、字面もかわいいですから。そういう視点から広がっていくこともあります」

ギャルにもいろいろジャンルがあるようだ


さらに、渋谷だけではなくSNSも1つの「現場」となり、そこから新語が生まれてきていると話す大熊さん。たとえば『egg』編集部内だけで流行している言葉もあるという。

「『がーちゃん』はよく使います。『ガチで』っていう意味です(笑)。『本当にお願いします!』っていう時には、『がーちゃんで!』になりますね。編集部のなかでひっそりと流行ってきていますよ」

ズバリ予想!これから流行るギャル語はコレだ!

そして最後に、今年流行するギャル語について質問すると、次の2つの言葉を教えてくれた。

「1つは『day2』でしょうね。“忙しすぎて2日間もお風呂に入ってないこと”を指す言葉です。『あーもう、今日でday2だわ』っていう使い方です(笑)。それと、『〜ドリュー』も流行る可能性が高いと思います。これは、アンドリューというモデルの男の子から来た言葉で、深い意味はないのですが(笑)。『くやドリュー』(「悔しい」)とか『だるドリュー』(「しんどい」「ダルい」)みたいな。どちらも言葉に出して楽しいですし、言いたくなりませんか?今年はこの2つの言葉が来るはずです!」

「〜ドリュー」の生みの親(?)アンドリューさん


一見わけがわからないと思っても、説明を聞けば途端に使いたくなるギャル語。息苦しく混沌とした時代だからこそ、こうしたゆるくおもしろい言葉が世代を越えて広がっているのだろう。弱音を吐きたくなった時や愚痴を言いたい時、ギャル語を取り入れてみると少し心が晴れやかになるかもしれない。

取材・文=橋本未来