インスタント麺のNo.1ブランドとして圧倒的な知名度を誇り、おそらくほとんどの人が一度は食べたことがある「カップヌードル」。1971年9月に誕生し、その5カ月後に起こった「あさま山荘事件」で機動隊員がカップヌードルを食べている様子がテレビに映し出されたことがきっかけとなり、一気に認知が広がり全国区の商品となった。
そんなカップヌードルは2021年で50周年を迎えたが、ブランド展開の勢いはとどまる所を知らず、最近ではファッションブランドや雑貨ブランドなど、食品メーカー以外とのコラボレーションが盛んに行われている。すでにインスタント麺界の大御所であるカップヌードルが、なぜここまで果敢に挑戦を続けているのだろうか。また、商品開発の裏側はどうなっているのかなど、日頃当たり前のように食べているのにも関わらず、身近すぎて意外と知らないことが多いことに気がついた。
そこで今回は、カップヌードルの責任者である日清食品株式会社(以下、日清食品) マーケティング部 ブランドマネージャーの白澤勉さんに、カップヌードルの商品開発秘話や取り組みについて話を聞いた。
カップヌードルは何味?知られざる商品コンセプト
カップヌードルシリーズといえば豊富な品揃えが特徴的だが、期間限定商品や「カップヌードル ビッグ」といったサイズが違うものも合わせると、これまで200種類以上が発売されているそうで、特にここ10〜20年で種類がとても増えているんだとか。また、カップヌードルはいわゆる“ラーメン”ではないという。
「世界初のカップ麺であるカップヌードルは、常にオリジナルの味わいを追求し、独自のポジションを築いてきました。そのため、カップヌードルのことを『ラーメン』と考えている社員はいません。また、スープはコンソメをベースにペッパーを効かせた味わいで、一般的な“しょうゆ味”ではありません。商品パッケージに味を表記していないので、改めてご覧になってみてください。ちなみに弊社では『カップヌードル味』や『レギュラー』と呼んでいますね」
そのため、一般的なラーメンの味をそのまま採用することはないそうだ。例えば「カップヌードル 味噌」は一見「味噌ラーメン」から着想を得たように思うかもしれないが、実は日本人のソウルフードとも言える「味噌汁」をイメージした味わいにしている。また、さらに味を容易に想像できるようなメニューには、あえて挑戦しないことも。こうした裏側を知ったうえでスーパーやコンビニの棚に並んでいるカップヌードルを見てみると、また違った楽しみ方ができるかもしれない。
「カップヌードルPRO」開発に大苦戦!
では、具体的にどのようにして商品を開発しているのだろうか。「商品の味やコンセプトを考えているのは、私を含めて8名です」と話す白澤さん。少数精鋭で考えられた新商品のアイデアをもとに、八王子にある日清食品グループの開発拠点「the WAVE」で試作し、試食と改良を繰り返しながら商品化に至っているという。
「『できるか、できないか』『おいしそうか、そうでないか』といった判断基準をクリアしながら、理想とする味に近づけていきます。例えば、過去に発売した『カップヌードル ラザニア風 チーズミートソース味 ビッグ』の場合は、『クリームが多いほうがいいのか?』『それともミートソースが多いほうがいいのか?』とそれぞれの配分を検討したり、実際に自分たちでソースを作ってみたりもしました」
そんな彼らが直近で開発に苦労した商品は「カップヌードルPRO」シリーズ。通常のカップヌードルと比べて“高たんぱく&低糖質”な商品で、キャッチコピーは「おいしさ そのまま」。開発では、これらの要素を両立させるのに苦戦したんだとか。
「麺は小麦粉ベースなので、糖質の量を減らすとおいしさに影響が出てしまいます。そこで、食物繊維を入れた層を外側から小麦粉の層で挟む『三層麺製法』に、油で揚げて乾燥する工程を組み合わせた『低糖質三層フライ製法』を採用することで、『糖質50パーセントオフ』とフライ麺独特のクセになる香ばしさを両立しました。食物繊維は『レタス6個分』で、さらにたんぱく質は15グラムも入っている商品なんですが、とにかく大変でしたね(笑)」