カップラーメンの1ジャンルを築いた、エースコックの「わかめラーメン」。その登場は今から約40年前の1983年のことだが、当時のカップラーメン市場では“わかめをのせたラーメンは売れない”というのが定説だったという。
しかしそんな定説を覆すように、今ではスーパーやコンビニに当たり前のように並ぶ存在に。一体どんな理由で、ここまでの人気者になることができたのだろうか。
今回は、2023年で40周年を迎える「わかめラーメン」の秘密を探るべく、エースコック株式会社 マーケティング部 商品開発グループの湯前翔さんに話を聞いた。
「こどもの日」によく売れる?「わかめラーメン」開発秘話
“わかめをのせたラーメンは売れない”…その定説から、業界ではまだまだ評価が低かったが、当時の開発スタッフは“健康志向のラーメン作り”に徹し、それまでの他社商品とは違う「わかめラーメン」を目指したそう。
わかめがのっているということだけに驕らず、魚介エキスを使いコクのあるスープを採用し、コーン、メンマといった具材にもこだわりながら、“健康志向”という理由からゴマなども加えた。もちろん、これらに合うフライめんを徹底的に選定。
この結果、発売1年目から大ヒットに。今日までカップラーメンの代表の1つとなり、同社の『ワンタンメン』『スーパーカップ』に並ぶ看板商品となった。
「主役とも言えるわかめですが、食感や味わいをポイントにわかめを厳選しています。また、発売以降は大きな味わいの変更をすることなく、『昔ながらの味』を今日まで変えずに製造しています」
ちなみに発売当時のテレビCMでは、俳優の石立鉄男さんが出演。<わーかめ好き好き>というBGMをバックに、全身を使って巨大うちわをあおぎ、その傍らには新体操のリボンの女性たちがしなやかに舞っていた。
「今の50~60代の方は覚えていらっしゃる方も多いと思いますが、石立鉄男さんのおかげで『わかめラーメン』を多くの方に知っていただけたと思っています。現在はそのリバイバルとして柳沢慎吾さんにご依頼し、このテレビCMもとても評判になっています」
また、湯前さんによると、カップラーメンが年間で最も売れる時期は冬だというが、「わかめラーメン」に関しては冬だけでなく、春や「こどもの日」などでも売れるんだとか。なぜピンポイントで「こどもの日」なのだろうか?
「新わかめが出てくる2〜3月から春にかけては『わかめラーメン』がよく売れますね。特に5月5日は『こどもの日』であると同時に『わかめの日』でもあり、この時期も需要が見込まれます。また、『わかめラーメン』はもちろん人口の多い東京や大阪でもよく売れていますが、人口と販売構成比を加味して考えると、よく売れているのが東北地方や山陰地方です。東北地方の各県や、山陰地方の鳥取や島根はわかめの消費量が多い地域で、わかめに馴染み深い土地であることから『わかめラーメン』を選んでくださる方が多いのだと思います」