着せ替えやメイクアップ、ヘアアレンジやおままごとで3歳から遊べる人形「リカちゃん」。1967年の発売から2022年で55周年を迎え、今ではさまざまな企業やサービスのイメージキャラクターにも起用されるほど圧倒的な知名度を誇っている。
そんなリカちゃんだが、ボーイフレンドがいるのはご存知だろうか。有名どころは「イサムくん」だと思われるが、実はこれまで6人のボーイフレンドが登場しており、それぞれの男の子に時代ごとのトレンドが盛り込まれている。
今回は、リカちゃんとともに子供たちを夢中にさせてきたボーイフレンドシリーズが誕生した経緯や、どのようにトレンドを反映させているのかなど、株式会社タカラトミー(以下、タカラトミー)リカちゃん事業部の向井里奈さんに話を聞いた。
社内意見も覆して大人気に!ボーイフレンドの誕生秘話
リカちゃんが生まれたのは1967年。タカラ(現タカラトミー)が当時国内で主流だった海外の着せ替え人形に対抗し、「日本の女の子にとって身近に感じるかわいらしさと、夢や憧れが表現された人形を作ろう」と企画したのがきっかけだ。当時の開発スタッフたちは小学生に直接話を聞くなど、詳細な市場調査を行ったという。その結果、“少女漫画のヒロイン”が女の子たちの憧れであることがわかり、その世界観を詰め込んだ人形としてリカちゃんが誕生した。
ボーイフレンドが生まれたのはその翌年のこと。リカちゃんの世界をさらに豊かなものにし、子供たちの遊びの幅を広げることを目的に、リカちゃん発売2年目の目玉商品として企画された。
「当時の少女漫画にはヒロインの相手役として王子様のような男の子がいたことなどから、『リカちゃんの隣にもそのような人形があるといいのでは』と考えました。当時、ボーイフレンドを発売することについては社内で反対意見もあったそうですが、実験として子供たちに試作品のボーイフレンドを渡してみたところ、王子様役に見立てて遊んだりと大好評だったようです」
こうして1968年に誕生したのが初代ボーイフレンドの「わたるくん」だ。彼はスポーツが得意で学校の成績もオール5。将来の夢は探検家というハイスペックぶり。小学5年生のリカちゃんより1歳年上の小学6年生で、顔立ちは宝塚の男役をイメージして作られたという。宝塚に出てくる男役と言えば、まさに王子様中の王子様。まさに高嶺の花といった感じのプロフィールからは、リカちゃんを企画した時の“少女漫画のヒロイン”というコンセプトがしっかりと反映されている。
ちなみに、同時に発売されたのがガールフレンドの「やさしいいづみちゃん」。当時は“トリオ”という言葉がお笑い芸人やアーティストの名前に使われていた流行のキーワードだったことから、3人合わせて「リカちゃんトリオ」としてCMが制作されていた。美男美女が3人揃った姿が子供たちに印象を残し、瞬く間に大人気となったそうだ。
1976年には2代目ボーイフレンド「マサトくん」への代替えが行われ、その後、19年間という最長の販売期間を記録した3代目の「イサムくん」が1981年に発売。そして2000年に登場した4代目の「かけるくん」以降、ボーイフレンドシリーズは8年ごとに登場している。