2008年に始まった「ふるさと納税」。「生まれ育ったふるさとに貢献する」「自分の意思で応援したい自治体を選ぶ」ことを目的に創設されたこの制度は、2021年度の納税受入額が過去最高を達成した。今最もホットな納税制度として注目を浴びている。
そんなふるさと納税の最大の魅力といえば「返礼品」。返礼品といえば農作物や海産物といった地域の特産品がメジャーだが、ここ数年ではトイレットペーパーなどの日用品に加え、スキーのリフト券、温泉宿泊券という現地に赴いて楽しめるものも人気が上がっている。そのなかには“オホーツク海の流氷1トン”“ラジオ生出演”といった、「こんなのまであるの⁉︎」というようなユニークな返礼品も…。
今回は、ふるさと納税サイトを運営する株式会社さとふる(以下、さとふる)にて広報担当を務める道岡志保さんに、ふるさと納税の返礼品のトレンド、そして奇想天外な返礼品が出品される理由について聞いた。
そもそも「ふるさと納税」ってどんな制度?
ふるさと納税は年々利用者が増加している。2022年の総務省の調査によると、2021年度のふるさと納税受入額は過去最高の約8302億円(前年度比23.5%増)、受入件数は約4447万件(前年度比27.5%増)と、成長真っ只中の制度だ。
ふるさと納税の手続きは、寄付金のうち2000円を超える部分については所得税の還付、住民税の控除が受けられるというもの。また、寄付額の30%相当を上限とした地域の名産品などの返礼品をもらうことができる。
例えば10万円のふるさと納税をすると、翌年の住民税や所得税から9万8000円減額され、3万円相当の返礼品を受け取ることができる。通常は自分の住んでいる地域に納税をして終わりだが、ふるさと納税をすると納税額以上のリターンを得られることができる。
また、「子育てに力を入れている自治体に寄付しよう」といった形で、寄付金の使い道の観点から寄付先の自治体を選ぶことも可能。そのため、気になる自治体の取り組みなどを応援できることも利点の1つだ。
食べ物や日用品、旅行まで!「返礼品」のトレンドとは
ふるさと納税の1番の魅力といえば、自治体からもらえる返礼品。北海道紋別市のオホーツク産ホタテや福岡県太宰府市のあまおう苺、山梨県山梨市のシャインマスカットといった、全国各地のそれぞれの地域で生産された特産品が安定的な人気だ。だが、道岡さんによると、制度が始まってしばらくは食べ物が人気ランキングの上位を占めていたが、ここ1〜2年は動向が変わってきているという。
「昨今の物価高が影響して、日用品や野菜など、日常的に使用できるものが人気ランキングで6週連続1位になりました。2022年は日用品への寄付が2021年に比べて2.4倍に増え、なかでもトイレットペーパーやティッシュペーパーは3倍になりました。贅沢品か日用品かの2パターンに大きく分かれていますね」
そして贅沢品や日用品以外にも人気なのが、現地に足を運ぶ“体験型”の返礼品だ。コロナ禍で旅行やおでかけができない状態が続いたが、現在ではピーク時に比べて外出規制が緩和。そのため、ここ最近は温泉入浴券や宿泊券、スキー場のリフト券などが人気なんだそう。また、農業体験やイルカウォッチングといったアクティビティ型のものも家族連れを中心に寄付額を集めている。
「コロナ禍でおでかけができなかった反動からか、体験型返礼品への寄付額は急激に増えています。体験型は自治体に特産品がなくても出せるのが特徴で、実際に寄付した方に来てもらって、地域の魅力を知ってもらえるのが大きな利点です。そして宿泊やお土産、飲食などで地域の経済効果が狙えるのも、自治体からするとうれしいポイントですね」
担当者もびっくり!“トンデモ返礼品”が出されるワケ
さとふるで取り扱っている返礼品は、現在60万点以上。贅沢品から日用品、そして体験型のものまでさまざまな返礼品があるが、そのなかには「一体誰が寄付するのだろう…」と思ってしまうようなおもしろい返礼品も存在する。
「例えば、埼玉県川口市ではFM川口のラジオ番組出演が返礼品です。アシスタントDJと一緒に自身の企画で生出演ができます。また、医療に力を入れている地域で人気なのが人間ドックです。観光も兼ねて検査ができる病院もあります。ほかには、墓守サービスやヘリコプター観光、布団丸洗い、親孝行代行といった変わり種もたくさんあるので、ぜひお好きなものを探してみてください!」
このようなユニークな返礼品が出される理由としては、掲載するだけでその地域の特産や環境を宣伝できるPR的な側面があるためだ。さとふるに返礼品を掲載するのは無料なので、自治体は寄付金を集めるための返礼品と、地域の魅力を伝えるための返礼品の2種類を出すことができる。ページを見ているだけでも新たな発見があるのが、ふるさと納税サイトの隠れた利点。返礼品は全国の人々に地域の良さを知ってもらえる機会として非常に有効だ。
なお、道岡さんイチオシの体験型返礼品は次の2つ。1つは、北海道白糠町の「エゾ鹿ハンティング体験」。プロのハンターからハンティングの方法や獲物の捕り方、マナーなどが学べるアクティビティだ。エゾ鹿を発見した時の緊張感や、大きな獲物が倒れる大迫力の瞬間など、初心者でも気軽にハンター気分を味わえる。
もう1つは、北海道帯広市の「ばんえい競馬 個人冠協賛レース」。帯広競馬場(ばんえい十勝)で行われているばんえい競馬のレースに好きな名前を付けられるというもので、大切な記念日や思い出づくりなどにぴったり。当日の出走表や勝馬投票券に冠レース名が掲載されるだけでなく、予想新聞ほか新聞の掲載面にレース名が出たり、競馬場や各場外発売所およびCSテレビ、ケーブルテレビなどで競走名を紹介されるため、メディア露出効果もばっちりだ。
また、体験型の返礼品以外にもユニークなものはまだまだある。なかでもインパクトがあるのは、北海道紋別市の「オホーツク海の流氷1トン」。オホーツク海に打ち上げられた大きな流氷をそのままお届けするというもので、寄付金額は200万円。未だ誰も寄付をしていないらしいので、話題作りにはもってこいだ。
「税の使い道を選ぶことに」ふるさと納税の魅力
道岡さんは、「ふるさと納税は通販サイトと同じような手順で簡単に利用できるので、まずはトライしてみてほしい」と話す。今回紹介したユニークな返礼品に心を奪われた人は、ぜひ一度ふるさと納税サイトを覗いてみよう。
「税金を寄付金という形で好きな自治体に納めて地域貢献ができるだけでなく、寄付金の使い道を選択することができるので、間接的に税の使い方を選ぶことができるのが魅力です。もちろん返礼品もたくさんあるので、ぜひ一度体験してみてください。また、2022年にふるさと納税をした人は確定申告が2023年3月15日(水)までなので、手続きをお忘れなく!」
今後のふるさと納税の返礼品は、どのようなものが出てくるのだろうか。個人的には「オホーツク海の流氷1トン」レベルの斬新な返礼品が出てきてほしいところだ。これからの自治体の展開に期待が止まらない。
取材・文=越前与