「みなさまのお墨付き」の“みなさま”って誰のこと?西友のプライベートブランドの謎に迫る

2023年2月23日

スーパーマーケットチェーンやコンビニエンスストアなどで展開されている「プライベートブランド」。さまざまな企業の商品よりも低価格で売られることが多く、店によってはプライベートブランドの商品がSNSで話題になることもしばしば。

そんななか、市販品と同等かそれ以上のクオリティを実現させつつ、リーズナブルな価格を実現しているブランドがある。西友の「みなさまのお墨付き」シリーズだ。そのラインナップは食品を中心としながら、日用品やペット用品など、実に多岐にわたる。そして「ポモドーロカレー」「ポテトチップス ガパオライス味」など、そこでしか手に入らないような商品も多い。

「みなさまのお墨付き」に裏打ちされているからこその商品展開だと思うが、ここでふと疑問が。「みなさまのお墨付き」の“みなさま”とは、一体誰のことを指しているのだろうか?

今回は、「みなさまのお墨付き」を展開する株式会社西友の担当者にインタビュー。この素朴な疑問について話を聞いた。

第三者機関が実施する独自の消費者テストを行い、「みなさまのお墨付き」ブランドの商品化を実施する西友


消費者テストで80%以上の支持を受けたものだけを商品化

西友の設立は、今から60年前の1963年。「⻄友」「サニー」「LIVIN」の300以上の店舗と、「楽天⻄友ネットスーパー」を通じ、全国の消費者に対し食料品や日用品を提供している。

西友は、当時の親会社だったウォルマートのプライベートブランド「Great Value」の日本版を自社のブランドとして展開していた。2005年に販売をスタートしたものだが、発売から7年が経ってアイテム数やバラエティが広がった結果、ブランドとしてのポジショニングが曖昧になったそうだ。そこで、明確なブランドポジショニングを打ち出しながら、小売各社に負けない低価格を実現できる新しいプライベートブランドの立ち上げに至った。

その際にヒントになったのが、当時ウォルマートのグループ会社であるイギリスの小売チェーン「アズダ」が実施していた、“第三者機関が実施する消費者テストで高評価を得たものだけを商品化する”というもの。日本ではそのような手法で開発を行う競合メーカーがなかったため、「大きな差別化につながる」と、これをヒントに「みなさまのお墨付き」ブランドを立ち上げるに至ったという。担当者は以下のように話す。

「『みなさまのお墨付き』ブランドは、『消費者が認めたもののみを商品化する』というコンセプトを日本の流通で初めて採用しました。第三者機関が実施する厳正な消費者テストで一定の支持率を獲得したものだけを商品化し、2012年よりブランド化しました。当初は支持率70%以上のものを商品化していましたが、2019年10月にブランドのルールを見直し、合格基準を80%に引き上げました。また、実際に商品を発売した後も数年おきに再テストを実施して、『商品の魅力に変化がないか』を定期的に診断しています。この際、80%未満の支持率であれば、再度商品開発からやり直す、もしくは終売にしています」

「みなさまのお墨付き」ブランドの商品化までのフロー


西友が関与しない、厳しい目を持つ人たちこそが“みなさま”

プライベートブランドの仕組みがわかったうえで、この記事の本題である“みなさまとは一体誰なのか”ということについて聞いてみることに。少なくとも筆者は“みなさま”のなかには入っておらず、手にした商品群の優位性に感動を覚えながらも、西友に“お墨付き”を与えたことはない。そして「俺、この前、西友にお墨付きを与えたんだ」という人に出会ったこともない。

担当者の開設によると、“みなさま”とは、第三者機関である調査会社が募集した20〜60代までの人のことだという。1商品につき約100名の人がテストを行うそうだが、この約100名が“みなさま”であり、これまでに60万人ほどの人が“お墨付き”を与えるかどうかをジャッジするために、口にする、使ってみるといったことを行ってきたんだとか。

食品の場合はテスト会場に来て試食してもらうか、サンプルを送って試食してもらったうえで判断し、評価する。日用品やペット用品も「使い勝手」「内容量」「価格」などを総合的に判断してジャッジするそうだ。

会場で実施する際は、参加者同士の先入観や評価のブレをなくすために私語厳禁とし、商品については「西友」という会社名やブランド名も出さず、参加者に公正な判断をしてもらえる仕組みに。参加者に関しても、全て調査会社が一括管理。西友および商品開発担当者は関与しないのだという。言い換えれば、厳正な評価を行うために調査会社が独自に集めた厳しい目線を持つ人たちこそが“みなさま”ということになる。

また、合格基準は「非常に良い」「良い」「良くない」「全く良くない」の4段階があり、このうち80%以上の人が「非常に良い」か「良い」と評価したものだけを商品化。さらに、いずれの評価においても、「なぜそのような評価にしたか」の理由も回答してもらうことで、先々の商品開発にも役立てているそうだ。

通常、プライベートブランドというと、普遍的で多くの人が欲する商品を展開するのが通例だが、「みなさまのお墨付き」シリーズは、「たとえ現状のニーズが限られようとも、良いものなら商品展開する」といった志が見え、その点もまた同シリーズのおもしろいところでもある。

西友のプライベートブランド「みなさまのお墨付き」の商品群


スタンダードなものから珍しいものまで!コスパに優れた商品群

これらの厳しいテストを行ったうえで、めでたく商品化された「みなさまのお墨付き」の商品は、2022年12月時点で約1400アイテムにのぼる。終売になったもの、あるいは商品化に至らなかったものを加えれば、気が遠くなるような数の商品開発を続けていることにもなるが、だからこそ、冒頭で触れたような「たとえ現状のニーズが限られようともクオリティが高くて良い商品」が同ブランドで展開されている理由の1つだろう。

筆者は普段から西友に足を運んでいるが、たまたま手に取った商品のなかで特に「みなさまのお墨付き」ブランドの素晴らしさに感動したのが菓子類だ。

味わいは当然おいしく、個包装になっているなど気が利いた設計となっている。食品の物価高騰が続く今であっても、現状税込100円を切る価格もありがたい。物価高騰が続くと言われる今後、菓子類などのスタンダードな商品は「みなさまのお墨付き」ブランドのなかでもさらに注目を浴びることになりそうだ。

写真左上から「ハニードーナツ」、「アールグレイ紅茶クッキー」、「細目の黒糖かりんとう」、「白かりんとう」(いずれも99円)

おいしさはもちろん、低価格なのがうれしい!


「みなさまのお墨付き」にはスタンダードな商品以外にも、「プロテイン大豆チップス うす塩味」や「福岡県産ストロベリー&ルイボスティー」、「にんじんドレッシング」など、「これは!」と目を見張るような珍しい商品もある。比較的シンプルで使い勝手のいいものが商品化されやすいプライベートブランドでは商品展開されにくいものだが、市販品よりも低価格で手が出しやすいため、「ちょっと買ってみよう」という気持ちで試すことができるのも魅力だ。

口にするのは少々ハードルが高めだったものを、手軽に楽しめるように商品化している点も素晴らしく、ひいては日本の食文化を変える可能性を秘めた商品群と言っていいだろう。

写真左上から「プロテイン大豆チップス うす塩味」(162円)、「福岡県産ストロベリー&ルイボスティー」(300円)、「にんじんドレッシング」(321円)、「on the ごはん プルコギ」(270円)、「タッカルビの素」(138円)

「タッカルビの素」で作ったタッカルビと、「にんじんドレッシング」とチーズをかけたサラダ

「on the ごはん プルコギ」をかけたご飯

「プロテイン大豆チップス うす塩味」と「福岡県産ストロベリー&ルイボスティー」


「カカクやすく、クラシおいしく。」を体感できる商品開発を

2012年の「みなさまのお墨付き」ブランド誕生から、11年目。この間、新型コロナウイルス感染症拡大などがあったほか、現在はあらゆるものの物価高騰傾向が続いている。

生活者のライフスタイルや嗜好も多様化し、特に食にまつわる商品展開はより繊細かつ高度なものになっていくと思われるが、最後に今後の展望についてに聞いてみた。

「コロナ禍の長期化によって、ますます節約志向や健康志向が高まり、また、昨今の物価高騰で今後も毎日使う食品や日用品の節約傾向が高まることが予想されます。そんななか、消費者の声に真摯に向き合った商品開発をし、多くの人に認められたもののみを商品化する『みなさまのお墨付き』は、時代の変化やニーズの多様化にも柔軟に対応していくことをお約束します。今後は、さらに多くの消費者の期待を超えられるブランドへと進化させ、西友のスローガンである『カカクやすく、クラシおいしく。』を最も体感いただける商品開発を目指していきたいと考えております。また、『⻄友』と、九州で60店舗以上を運営する『サニー』は今年で創業60周年を迎えました。60年間、多くの方々のご愛顧とご支援に心より感謝するとともに、今後もより一層の革新と挑戦を続けていきます」

西友誕生から60年。同社はこれからもより一層の革新と挑戦を続ける


取材・文=松田義人(deco)

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