神尾楓珠や長谷川京子が演じる役のモデルは実在のレーサーたち!「ボートレース」のCMが狙うものとは?

2023年3月24日

競馬や競輪、オートレースと並ぶ公営競技の1つ「ボートレース」。水面上でレーサー同士の熾烈なせめぎ合いが展開され、その激しさから“水上の格闘技”とも呼ばれるスポーツだ。

近年、ボートレースはCM露出に力を入れている。これまでも田中圭や南明奈、渡辺直美をはじめとした数多くの俳優やタレントを起用し、趣向を凝らしたさまざまなCMシリーズを放映してきた。では、なぜここまでCMに注力するようになったのだろうか。

2023年に入り、そのボートレースの新たなCMシリーズが公開されている。今回は新CMの裏話について、一般財団法人BOAT RACE振興会(以下、BOAT RACE振興会) 広報部 広報宣伝チームの佐伯政明さんに聞いた。

2023年のCMシリーズ「アイアム ア ボートレーサー」


目指したのは「思わず応援したくなるCM」

BOAT RACE振興会がCMに力を入れる理由は、ボートレースにおける2つの魅力をたくさんの人に知ってほしいからだという。1つはスポーツとしての魅力で、体感速度時速120キロメートルのスピード感やターンで舞い上がる水しぶき、レーサー同士の競り合いといった、攻防が水面で繰り広げられる迫力のすごさを知ってほしいという意図からだ。

ボートレースの迫力あるターン


もう1つが、エンターテインメントとしての魅力だ。100円から舟券が購入でき、北は群馬県から南は長崎県まで全国24カ所にレース場があるため、365日必ずどこかでレースが開催されている。思い立ったときにライブ配信を視聴したり、時には現地観戦に赴いたりと、思い思いの楽しみ方ができる。

「その一方で、『ファンは中高年ばかり』『先の短い競技』といったイメージを持たれることがまだまだ多いです。私たちがCM制作に注力する背景には、そういった偏ったイメージを払拭し、ボートレースが本来持っている魅力を伝えることで、イメージアップを図りたいという思いがあります」

2023年のCMシリーズは、2021年、2022年の続編にあたる。2021年の『Splash ボートレーサーになりたい!』シリーズは、神尾楓珠演じる「カミオ」がプロレーサーを目指すために養成所にて訓練に明け暮れる様子を描いている。そして2022年の『アイアム ア ボートレーサー』シリーズでは彼らが養成所を卒業し、中村獅童演じる「シドウ」をはじめとした先輩レーサーたちにもまれながら、新人レーサーとして成長していく姿をそれぞれ1年かけて描いた。3年目となる今年のCMシリーズも、2022年に引き続き『アイアム ア ボートレーサー』をキャッチコピーに掲げて展開されている。

「ボートレーサーにはそれぞれに背負っているドラマがあります。『アイアム ア ボートレーサー』で伝えたいのはレースそのものだけではなく、レーサーたち一人ひとりの魅力です。レース時はもちろん、それ以外の場面も含めたレーサーたちの様子を描くことで、視聴者がボートレーサーたちに関心を持ち、応援したくなる気持ちが芽生えるような内容を意識しています」

2023年CM第1話より


2023年に公開されるCMは、2つの軸でストーリーが動いていくという。1つ目の軸が「シドウ」と「カミオ」の師弟関係だ。ボートレーサーの世界には師弟制度が存在するが、2022年に放送されたCMの最終話でカミオが晴れてシドウの弟子となった。2023年は両者の関係がどう発展していくのかを描いている。

2つ目の軸が、女子レーサーの台頭だ。男性と女性が同じ土俵で戦うボートレースでは、女子レーサーの活躍が目覚ましい。また、2022年は最高格付けのレースである「スペシャルグレードレース」(SGレース)を、ボートレース史上初めて女子レーサーが制覇。勝負の世界に生きる女性レーサーたちの奮闘ぶりを描いていくが、どちらのストーリーも現実のボートレースの世界に即して描かれ、その魅力を訴求している点がポイントだ。

CMキャラクターは実在のレーサーがモデルに

2023年のCMでは、キャストは神尾楓珠と中村獅童以外は一新されている。佐伯氏によると、キャスティングにおいてはまずCMのストーリーやキャラクター設定を固めたうえで、それぞれのキャラクター像に合う人物を起用しているという。そのキャスティングもこだわり抜いているとのこと。新CMの注目のキャストは、女性初のSGレース覇者・遠藤エミ選手をモデルにした「キョウコ」役を演じる長谷川京子だ。

「SGレースを制覇をした女子レーサー役ということで、人一倍存在感のある方に演じてほしいと思いました。“芯の強い女性”という役柄であったため、長谷川京子さんに出演を依頼しました。また、ほかの新キャストには“あざとかわいいお嬢様レーサー”の「スズ」役に山之内すずさん、“元水球選手の豪快まくり姫”「オウリン」役に王林さん、そして“水上のエンターテイナー”「フジモリ」役に藤森慎吾さんを起用しました」

長谷川京子演じるSG覇者「キョウコ」


山之内すずと王林の起用理由は、「若年層に響くキャスティング」という点がポイントとのこと。また、フジモリのモデルになっているのは、爆笑パフォーマンスのファンサービスで人気が高い西山貴浩選手だ。すべてのキャラクターにはそれぞれにモデルとなるレーサーが存在しているので、ボートレースに興味を持ったら、起用されているタレントのモデルとなっている選手が誰なのかを探してみるのもいいだろう。

2023年のCMシリーズに登場する個性豊かなキャラクターたち


スピンオフ動画でストーリーの重厚感がアップ

BOAT RACE振興会はCMサイトも用意しており、キャラクターの説明や注目選手の紹介、CMメイキング動画、各種公式SNSへのリンクなど、さまざまな情報を掲載している。CMをきっかけにボートレースに興味を持った視聴者がアクセスすることで、よりボートレースの世界に触れられる仕掛けになっている。

「CMサイトの最もおすすめのコンテンツは、5~10分程度のスピンオフドラマです。15秒CMや30秒CMでは、レースのことや私たちが伝えたいメッセージなどを盛り込んでいますが、どうしても伝え切れないところが出てきてしまいます。それをスピンオフを通してお伝えし、理解を促進したいという狙いがあります」

2022年のCMスピンオフ。弟子入りを認めてもらおうと、カミオが思いの丈をシドウにぶつけている


2021年のスピンオフでは、カミオが母親を助けるためにボートレーサーを目指すことになった背景を描いた。一方、2022年のスピンオフでは、デビューしたカミオが“ボートレース界の絶対王者”シドウに衝撃を受けて弟子入りを志願。「弟子はとらない」と公言していたシドウが、カミオを弟子として迎え入れた心情を描いている。登場人物一人ひとりの心の葛藤を丁寧に描写することで、ストーリーに重厚感を持たせ、視聴者がボートレースの世界にさらに入りこめるようになっている。

これまでは、2021年と2022年あわせて7本のスピンオフが公開。総再生回数は420万回を超え、視聴者からの反響も大きいという。2023年のCMサイトではまだスピンオフは公開されていないが、どのようなドラマが描かれるのか今から期待したい。

2023年のCM第2話より


CMの行方もレースの行方も見逃せない!

2021年12月に行われたトレンドラボラトリーによる公営競技CM好感度調査は、ボートレースのCMが1位を獲得し、SNSなどでもキャラクターたちを応援する声があがるなど、イメージアップに向けて着実に成果をあげている。その裏にはボートレースの魅力を真摯に伝えようとする振興会の制作姿勢があった。

2023年3月時点で、今年のCMシリーズは第3話までが公開されている。第1話ではキョウコがSGレースを制覇し、ボートレースの歴史の新たな扉が開いた瞬間が、そして第2話では後輩女子レーサー2人がキョウコの活躍に刺激を受けて覚醒する様子が見られる。その女子レーサーたちの活躍を受け、シドウやカミオがサウナで熱く語り合うのが公開中の第3話の内容となっている。

ボートレースの2023年CMシリーズに注目だ


エピソードは全12話。2023年のCMシリーズはまだ始まったばかりだ。これからどのようなストーリーが繰り広げられていくのか、追いかけてみてはいかがだろうか。

取材・文=小賀野哲己(にげば企画)

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