マヨネーズの“キャップ”、どれが好き?キユーピーが開発した「ダブルキャップ」がヒットしたワケ

2023年3月1日

「キユーピー マヨネーズ」の“赤いキャップ”に注目したことはあるだろうか。普段から調味料として当たり前に使用しているだけに、名称や施されている工夫についてはあまり知られていないかもしれない。

実はあのキャップは、キャップをくるくると回して開ければ星形の絞り口に、パチッと上蓋を開ければ線状に出てくる絞り口という二重構造。これは「ダブルキャップ」と呼ばれ、使用用途に合わせてマヨネーズが出る絞り口の形を変えられる便利なアイテムになっている。しかし、多くの人が出てくるマヨネーズに夢中で、絞り口をじっくり見ることは少ないのでは?

毎年3月1日は「マヨネーズの日」に制定されている。そこで、今回は中身ではなくマヨネーズの「キャップ」の秘密に迫るべく、キユーピー株式会社(以下、キユーピー) 家庭用本部 調味料部マヨネーズチームの中村友美さんに、ダブルキャップの誕生秘話とユーザーからの反響を聞いた。

3つ穴キャップは、世界包装機構主催の「ワールドスターコンテスト2020」のフード部門にて「ワールドスター賞」を受賞!


「料理をもっと楽しめるように」ダブルキャップの誕生秘話

高度経済成長期にマヨネーズの売上が伸長するなか、調味料として使用する一方で、「マヨネーズを使ってもっと料理を楽しみたい」という声が多くあがっていたという。そこでキユーピーは、マヨネーズの酸化を防ぐための工夫も兼ねて、1972年に「星型」の絞り口を採用した。

「マヨネーズの適度な粘度を生かしたのが星型の絞り口です。まるでホイップクリームのように、星の形を崩すことなくきれいな線が描けるので、採用当時から人気でした。星型の採用にあたっては、いろいろと検討したと聞いています」

「星型」の絞り口を使用したイメージ


その後、より多くの料理でデコレーションを楽しみたいというユーザーの要望に応えるべく、新たに「細口キャップ」(以下、細口)の開発をスタート。そして2002年に「キユーピー ハーフ」で初めて細口と星型のダブルキャップを採用。それを、2005年からは「キユーピー マヨネーズ」にも取り入れたそうだ。

「2002年頃は、摂取カロリーへの関心が高まっていた時期。そのタイミングでの細口の採用は、マヨネーズのかける量を抑えることができるうえ、料理も楽しめると大変ご好評いただいておりました。一方で星型は、マヨネーズをたっぷり使用するサラダや卵料理などに向いていることから、使用用途に応じた使い分けを可能にしたのがダブルキャップです!」

「細口キャップ」を使用したイメージ


特に人気なのは「3つ穴」!根強い人気のワケ

細口の採用以降、アレンジ料理の嗜好が強くなっていくなか、2018年に採用されたのが「3つ穴キャップ」(以下、3つ穴)と星型のダブルキャップだ。「現在は『キユーピー マヨネーズ 350g』のみの採用ではありますが、ご要望があれば随時増やしていく予定です」と、中村さん。そして3つの種類のなかで、最も根強い人気を得ているのが「3つ穴」なんだとか。

「ユーザーさまからは、『細口以上にきれいな線を描けてとても気分が良い』『料理が華やぐ』といったお声をいただくようになりました。細口と比べて穴が小さいので、よりデコレーションに適していると言えますね。また、3つ穴を目的に購入される方も多いと聞いています」

左が「細口キャップ」、右が「3つ穴キャップ」。よく見ると、3つ穴の真ん中の穴は少し小さくなっている


ただ、現状採用されているのは、前述の通り「キユーピー マヨネーズ 350g」のみなため、ユーザーからは「どこで売っているの?」「販売終了してしまったの?」「見つからないのでキャップを再利用しています!」といった声が続出したという。

「このたび、お客様が求めているものを確実に届けたいという思いで、『キユーピー マヨネーズ 350g』のパッケージのデザインを変更しました。商品パッケージには、3つ穴を使用した調理の写真を差し込み、“かける楽しさ”を感じていただける工夫を施しています。そして『キユーピー ハーフ 400g』や『キユーピー マヨネーズ 450g』には、試験的に3つ穴を付属して需要調査をしていますので、今後の動向を見ながら随時採用する商品を追加していければと考えています」

「キユーピーマヨネーズ 350g」(2023年2月2日からの新デザイン)。カラフルな文字で絞り口を表記することで、ユーザーが感じる“かける楽しさ”を表現しているのだとか


子供の食育にも貢献!ダブルキャップの存在意義

ここ数年は、ダブルキャップを活用したレシピがSNSに数多く投稿されており、多くのユーザーが料理を楽しむ様子が見受けられる。なかには、キャップの改良案の手描き設計図を本社に送るファンもいるそうだ。では、なぜここまでダブルキャップが根強く支持されているのだろうか。

「まず、衛生面ではマヨネーズの切れを良くするために、キャップの先をあえて反らせることで外に漏れるのを防いでいます。特に3つ穴はバランス良く線描きができるように、真ん中の穴を少し小さくするなどのこだわりを持って開発しています。そのため、1つのキャップの完成に数年はかかります」

こうしたキユーピーの企業努力が、ダブルキャップの高いクオリティ、ひいては商品の満足度につながっているのであろう。そして最近では、料理を楽しむツールだけにとどまらず、小さな子供たちにも大きな影響をもたらしているのだとか。

「特に印象的だったのは、野菜を食べられなかったお子様が、ダブルキャップのデコレーションをきっかけに野菜嫌いを克服されたことです。料理をする人のお役に立てるだけでなく、お子様の食育にまで携われるのはとてもうれしいですね」

「3つ穴キャップ」を使用している様子。細口よりもさらに凝ったデコレーションが可能に!


中村さんは、「新キャップの採用が、売上と販売数伸長の要素の1つであることは確かだと思います」と話す。実用性だけでなく、さまざまな楽しみを与えてくれるキユーピーのダブルキャップ。これを機にぜひ活用して、日々の料理を彩りあるものにしてみては。

取材・文=西脇章太(にげば企画)

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