“現代版ベーゴマ”と言われ、平成から令和に渡り大流行している、株式会社タカラトミーから発売されている『ベイブレード』。「スリー!ツー!ワン!GO シュート!」の掛け声とともに始まるバトルに夢中になった人も多いはずだ。
そんなベイブレードは、2023年3月までは第3世代となる『ベイブレードバースト』が展開され、さらに2023年7月15日(土)からは第4世代『BEYBLADE X』(ベイブレード エックス)を展開予定だ。30歳の筆者は第1世代の『爆転シュート ベイブレード』世代で、小学生の頃にはほぼ毎日ベイブレードで遊んでいた時期があったほどだ。当時はいろんなおもちゃやゲームが存在していたはずだが、多くの子供たちの心を掴んだ理由は何なのだろうか?
そこで今回、株式会社タカラトミー(以下、タカラトミー) Global BEYBLADE事業部 マーケティング課の堀川亮さんに、ベイブレードの開発秘話と今もなお人気であり続ける理由を聞いた。さらに取材後、筆者が約20年ぶりのベイブレードで遊び、その懐かしさをレポート!
「伝承玩具」のリバイバルが流行した90年代に誕生!
1990年代、おはじきやめんこ、ヨーヨーなど、昔ながらの遊びである「伝承玩具」を現代風にリバイバルするのが流行していた。そんな中、1999年にタカラトミーから発売されたのが「ベーゴマ」をリバイバルした『爆転シュート ベイブレード』(以下、『爆転シュート』)。過去と現代の技術の融合、そして2001年に放送を開始したアニメ『爆転シュート ベイブレード』の人気も相まって、爆発的なヒットに至ったという。
「弊社はベイブレード以前にも、『すげゴマ』や『バトルトップ』といったコマ玩具を発売していましたが、そこに『ビーダマン』などが該当する“バトルホビー”の改造要素と、当時小学生の間で大流行していた『デュエル・マスターズ』などが該当する“トレーディングカードゲーム”のデッキを組む要素を入れたのがベイブレードです」
その後、2008年に第2シリーズ『メタルファイト ベイブレード』(以下、『メタルファイト』)の販売がスタート。当時、子供たちの間でゲームが流行しており、アナログ玩具はとても厳しい状況だったため、玩具業界では前代未聞だったストリートファッションの要素を取り入れ、ほかにもデジタル要素を採用したりと、前シリーズから一新された。
2015年には、第3シリーズ『ベイブレードバースト』(以下、『バースト』)の展開を開始。ベイブレードをバースト(破壊)させるという新たな要素が加わり、“破壊して勝つ”爽快感が得られ、より白熱したバトルが楽しめるようになった。さらに「ライフログ」に着目し、日々のシュート回数やパワーを記録可能なほか、アプリケーションと連動することでポイントを集めてアイテムをゲットできたりと、いずれも時代におけるトレンドとうまくブレンドさせることで、常にバトルホビーの最先端を走り続けている。
1つの試作品につき1000回以上対戦…知られざる開発の裏側
1999年の発売以来、常に子供たちの心を掴み続けてきたベイブレードだが、やはり気になるのは開発の裏側だ。まず製品1つにつき、企画から発売までは約1年ほどかかるそうで、開発メンバーは10人以下で行っているという。
「最初に、全体の方向性やデザインコンセプトを考えます。そのうえで今何が流行っているのか、また、今子供たちが憧れているもので、かつ前作よりもよいものかどうかを踏まえたうえでコンセプトを決定。製品ごとに担当を割り振って、それぞれが技量や個性を出して試作品を作っていきます。その後は、テーマがブレないように随時意見を交換して、切磋琢磨しながら完成させていきますね」
試作段階ではさまざまなチャレンジが行われるため、ボツネタも多数。なかでも「空飛ぶベイ」は衝撃的だったそうだ。「試作段階でベイにプロペラをつけて思いっきりシュートしたんですが、びっくりするくらい飛ばなかったです(笑)」と堀川さん。
1つの試作が完成すると、これまでに発売されたすべての商品と対戦させるそうで、その回数は1日で平均約1000回以上にのぼるのだとか。加えて、先に発売を控えている製品の性能を考慮して、あえて弱点を作ったりと、“最強の製品”を作らないようにしているという。堀川さんは「ライト・ヘビー問わず、全てのユーザーの皆さんが楽しんでいただけるよう心掛けています」と話す。
また、開発の過程でイベントや大会、製品が並ぶ店舗に足を運び、実際にどのようにして遊ばれているのかをリサーチしているようだが、なかでも、子供が親に買ってもらうべく交渉しているシーンが印象的だそう。
「子供が親に商品の魅力をしっかりと伝えられているということは、商品の良いところがわかりやすくビジュアルやキャッチで表現できているとも言えます。開発チーム内では、商品の機能やデザインの特徴などを子供でもすぐ言えるレベルまでわかりやすくすることを徹底しています」
“大人ユーザー”も多数!今夏には新シリーズが始動
現在の主なユーザー層は小学3・4年生とのことだが、『爆転シュート』の頃に子供だった人たちは、今もベイブレードをプレイしているのだろうか。そこで、“大人ユーザー”の推移を聞いた。
「2018年頃に、『バースト』のフォーマットで見た目はドラグーンという、『爆転シュート』世代向けにキャンペーンを実施したところ、かつてのユーザーから大きな反響がありました。このような取り組みもあって、今では大人のユーザーも全体の3割を占めるようになりました。この中には、『爆転シュート』世代から遊んでくださっている方も多いかと思います」
そんなベイブレードは、2024年で誕生25周年を迎える。2018年には、25カ国以上の国と地域の人たちを集めてフランスで世界大会を開催するなど、さらに規模を拡大しているが、今後の取り組みについてはどのように考えているのか。
「言葉が通じなくても、バトル後に仲良くなっている姿を見ると、本当に感動するんです。これからも“現代版ベーゴマ”として世界中に発信していきたいですね。そして2023年7月15日(土)から、いよいよ第4世代の完全新作「BEYBLADE X」(ベイブレード エックス)がスタートします。歴代最速のアタックを生み出す新ギミック「Xダッシュ」(エクストリームダッシュ)により、戦略性が増し、バトルが激しく派手になりました。ぜひそちらも楽しんでいただけたらと思います!」
アラサー3人で約20年ぶりに遊んでみたら白熱しすぎた
取材後、熱が冷めやらぬうちに、筆者とライター・福井、編集部員でベイブレードをプレイしてみることに。3人とも30歳で、初期の『爆転シュート』ど真ん中の世代。小学生の頃は毎日のようにベイブレードで遊んでいた。そんなアラサーたちがベイブレードを約20年ぶりにプレイするということで、「クラスに1人はめちゃくちゃ強い奴いたよね」などと、始める前から当時の思い出話で盛り上がった。
かつてドラグーンを愛用していた筆者は、雰囲気が近いからと『ディヴァインベリアル.Nx.Ad-6ホワイトVer.』を選択。一方、福井は「色が好き!」と『チェインケルベウス.Kr.Mm'-3ゴールドVer.』を選び、編集部員は「キティちゃんがかわいい!」と『ベイブレードバースト B-00 ブースター アストラル ハローキティ.Ov.R’-0』を手に取った。ベイをデザイン性で選ぶ人もいれば機能性で選ぶ人もいて、これも当時から変わらない。
1対1がルールなため、ここからは総当たりで対戦。まずは筆者と福井が対戦することに。準備が完了し、「スリー!ツー!ワン!ゴーシューッ!」の掛け声とともにバトルが開幕したのも束の間、筆者はベイをボトッと落としてしまった。ランチャーへの装着が甘かったのが要因だったが、これには「やっぱ久々でブランクがあるなぁ…」と嘆かざるを得なかった。
気持ちを入れ替え、再戦。ベイ同士が当たる際にバチバチと火花のようなものが散って臨場感はマックスに…と思った次の瞬間、筆者のベイがバラバラになってしまい、「壊した!?」と焦る一同。しかし、取材時に「バーストフィニッシュ」(バトル中に相手のベイのパーツをばらばらにする勝ち方)について聞いていたことを思い出し、ひと安心。勝利した福井に「ザコ~!」と言われ、大人げなくイラッとしてしまう。まるで小学生時代に戻ったかのようだ。
続いて、筆者と編集部員の対戦。バトルを開始するも、編集部員のベイが一瞬で場外に飛んでいくハプニングが発生する。「もう1回!」とやり直すも、またもや場外となり「こんなに難しかったっけ!?」と編集部員。ランチャーを変えて仕切り直すと、今度は無事スタジアム内に収まり、バチバチとぶつかり合った末に引き分けとなった。20年のブランクがさらにバトルを盛り上げてくれているように感じた。
最後は、福井vs編集部員。2人とも2戦目で慣れてきたのか、スムーズにセッティングが完了。勝負開始から双方一歩も譲らない攻防を繰り広げ、「やばい!」「うわ!どうなる!」と大盛り上がり。僅差で勝利したのは福井で、「よっしゃ~!俺の勝ち~!」と編集部員をあおり、最終的に3人の中で最も勝ち星をあげたのも福井だったが、負けた2人も「こんなに無邪気に遊んだのって何年ぶり?」と満足気。
撮影終了後、同じくアラサーのカメラマンが「俺も久しぶりにやってみたい!」と言い、撮影外でもみんなで1時間ほど楽しんだが、その間もそれぞれがベイブレードに関する思い出を語り合い、ノスタルジーな気分に浸った。
国内外、性別問わず、誰もが熱くなれるベイブレード。今プレイしている人はもちろん、当時遊んでいた人も新シリーズのリリースを機に、家族や友達と思い出話に花を咲かせながら楽しんでみてはいかがだろうか。
取材・文=西脇章太(にげば企画)
撮影=大塚翔平