飴が「食べきれない」「バラバラになる」を解消!カンロが開発した新パッケージが従来の飴の売上にも影響?

2023年7月5日

これまでスーパーやコンビニ、ドラッグストアなどで数多くの種類が販売されてきた「飴」。缶に入ったものから大袋に入った個包装のもの、スティックのパッケージから取り出すタイプなど、そのバリエーションは多岐にわたるが、最近ではジップ式の小さなパッケージのものが売られているのをご存知だろうか。

コンビニのグミ・飴コーナーで見かけるこのミニサイズの飴は、ジップ式なうえにマチがあり、デザイン性が高い。今までにあった飴の中でも特に持ち歩きに特化しているように思うが、なぜ今、このミニサイズの飴を開発するに至ったのだろうか?カンロ株式会社(以下、カンロ) ブランド開発部の松葉透さんに話を聞いた。

コンビニで見かけるコンパクトサイズの飴。便利なパッケージだが…


大袋とスティック、それぞれにある問題を解消すべく開発!

これまでカンロでは、大袋タイプとスティックタイプの飴を中心に開発していた。しかし、それぞれ利点がありながらも、いくつか課題を抱えていたという。大袋タイプでは食べ切れなかったり、新しい味を試しづらかったりと、大容量ならではのデメリットが。スティックタイプには鞄の中で中身の飴がバラバラになってしまったり、包み紙がゴミになってしまったりと、デメリットが挙げられていた。

そんな問題をすべて解決してかゆいところに手が届くようにしたいとの思いから、2018年に「コンパクトサイズ」という今までになかったパッケージが登場した。

「ちょうどいいサイズ感で小ぶりならではの見た目のかわいさ、いろんな味を試しやすいといった理由で、特に女性から支持されています。新しい商品を手に取ってくださるのも、女性のほうが多い傾向があります」

手のひらに収まる程度の大きさで、内容量も多すぎないため買いやすく、ジッパーがついていることなど、さまざまな特徴があるコンパクトサイズのシリーズ。なかでもこのサイズ感が、30代前後の働く女性から人気を集めているのだとか。「“バッグの中が散らからない”という点も、選ばれる理由の1つなのかもしれませんね」と松葉さん。

大袋タイプやスティックタイプのパッケージデザインを踏襲しつつ、目に留まりやすいキュートなデザインが印象的

ポケットにすっぽり収まるサイズのスティックタイプ。バッグやポケットの中でバラバラになりやすいのが課題だった


そしてコンパクトサイズの魅力の1つが、そのデザイン性の高さ。大袋タイプやスティックタイプとは少し違い、華やかでかわいらしいパッケージの商品が多い。というのも、コンパクトサイズの商品開発は若手の女性社員が担当している商品が多く、主なターゲットである女性の目線で企画しているそうだ。自分たちが「手に取りたい」と思えるようなデザインを目指し、遊び心が詰め込まれたパッケージになっている。

「まず大きなものが小さくなっているだけで“かわいい”ですよね。また、中に個包装がないので色合いや形など、飴本来のかわいらしさをアピールすることもできます。デザインする側の目線になってしまいますが、細かな装飾を施したときに要素がぎゅっとまとまりやすい点も、思い切ったデザインにチャレンジしやすい要因です」

ちなみに、コンパクトサイズのパッケージの構造にはかなり苦労したという。ジッパーをつけていることだけでなく、自立させるために底にマチをつけているなど、飴のパッケージとしてはこれまでにない形状となっているため、イチから開発をスタートさせる必要があったようだ。

自立するため、デスクにも置きやすい!

マチ付きのパッケージには、遊び心も満載!


コンパクトサイズは人気上々。では「大袋」の売上は?

現在、すっかり人気となったコンパクトサイズ。そこで気になるのが、従来の大袋タイプの売上だ。消費者がコンパクトサイズに流れ、大袋タイプが売れなくなるという不安はなかったのだろうか。

「コンパクトサイズの発売当初は心配していましたね。でも、コンパクトサイズの販路が“コンビニや駅売店限定”なこともあってか、いざ販売を開始すると、大袋が売れなくなるようなことはありませんでした。むしろコンパクトサイズで味を気に入ってもらえたら、次は大袋を購入する人もいるようで、うまく棲み分けができているのが現状です」

大袋タイプとコンパクトサイズのそれぞれの特徴がうまく合致して、相乗効果を生んでいるようだ。松葉さんいわく、「これまでは大袋タイプで売られていた飴をコンパクトサイズに展開することが多かったんですが、コンパクトサイズから大袋タイプへの展開も今後あり得ますね」とのこと。

60年以上愛され続ける、カンロの代表的な飴。「カンロといえば大袋のこれ!」という人も多いのでは?


「コンパクトサイズは可能性の塊」。今後は飴以外にも採用を

従来の飴と並び、定番商品として愛され始めているコンパクトサイズ。2023年5月には、現役高校生との共同開発によって生まれた商品「透明なハートで生きたい」を発売し、さらにその勢いが増している。「透明なハートで生きたい」は10代の揺れ動く感情をイメージした商品で、ガラスのような透明感のあるハート型の飴は、いわゆる“エモい”デザインに。パッケージデザインはなんと6種類もあり、気分や好みで選ぶことができるので、まさに“揺れ動く感情”に対応していると言える。7月には大袋サイズでの販売も開始予定だそう。

現役高校生との共同開発によって生まれた「透明なハートで生きたい」

多くても10~30回程度の試作を、なんと120回も繰り返したという飴のデザイン。ガラスのような透明感がある


さらに、2023年7月4日より「健康のど飴 りんご飴」が新発売。31種のいたわり素材(和漢素材)をブレンドした、国産りんご果汁のフレッシュさとハーブの効能感を楽しめるのど飴で、「“季節を楽しむ心のいたわり時間”を提供したい」という思いから生まれた。甘いりんご飴の、夏の思い出の味をイメージしたフレーバーとなっている。

新発売の「健康のど飴 りんご飴」。パッケージには花火が描かれている


「コンパクトサイズは挑戦的なことがしやすく、パッケージとしてとても便利。飴だけでなく、ほかのお菓子でも展開できる可能性を秘めていると思います」と松葉さん。

初めて見かけるフレーバーの商品は、どうしても手に取りにくいもの。松葉さんは開発側の目線から「挑戦しやすい」と話していたが、このコンパクトサイズであれば消費者側も新しい味にチャレンジできる画期的なパッケージだと感じる。数々の問題点をクリアしてきたコンパクトサイズの今後の展開に期待したい。

夏らしいデザインでつい持ち歩きたくなる


取材・文=織田繭(にげば企画)

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