大阪・ミナミのランドマーク「えびすタワー」って知ってる?“世界初の長円形観覧車”が道頓堀にある理由

2023年9月21日

日本有数の繁華街で観光地としても人気がある大阪・道頓堀。そんな道頓堀のど真ん中にそびえ立つ観覧車「えびすタワー」をご存知だろうか。一般的な円型ではなく、世界初の“長円形観覧車”として観光客を中心に人気を集める、道頓堀エリアのランドマークの1つだ。

この「えびすタワー」を運営するのは、ドン・キホーテ道頓堀店(以下、道頓堀店)。ドン・キホーテといえば、低価格で多種多様な商品を販売するディスカウントストアチェーンだが、なぜ観覧車を運営しているのだろうか。また、なぜ道頓堀に建てたのだろうか?

自由におでかけができるようになり、常に多くの観光客で賑わうようになった大阪。今回は、「えびすタワー」の誕生秘話や現在の搭乗状況について、ドン・キホーテを運営するPPIHグループ 都市繁華街型(インバウンド)業態 西店長の塩津岳也さんに話を聞いた。

大阪・道頓堀のランドマーク「えびすタワー」の秘密に迫る!


世界初の長円形観覧車!“アミューズメント性の具現化”を目指して建設

2005年3月、道頓堀店のオープンと同時に運行を開始した「えびすタワー」。ドン・キホーテのアミューズメント性を具現化するため、また、「難波界隈のランドマークとして街を盛り上げていきたい」という思いから建設された。「『えびすタワー』を建てることが決定してから、道頓堀店の出店が決まりました」と塩津さん。

2008年6月には建物の事情により運転を休止。しばらくの間再開されることはなかったが、観光客をはじめ多くの人々から「いつ動くの?」「早く乗りたい」と復活を望む声が寄せられた。これを受けてPPIHグループ会長・安田隆夫氏は、運行を再開する方針を固め、2016年に運行再開のプロジェクトチームを発足。2018年1月に満を持して再開となった。

「えびすタワー」の夜の外観。「いずれは季節感のあるライトアップなどもできればと考えています」と塩津さん


再稼働後の1日の平均搭乗者数は約1300人にものぼったそうで、「私の配属前の話ではありますが、道頓堀店から『グリコサイン』くらいまでの約200メートルの距離に長蛇の列ができていた、なんて話を聞いたことがあります」とのこと。約10年ぶりの復活ということで、当時は多くのメディアに取り上げられて話題になっていた。

現在は月間約2万8000人が搭乗!インバウンドが7割を占める

しかし、2020年以降はコロナ禍で運行できない時期が続き、仮に運行しても緊急事態宣言によってすぐに休止してしまうといった状況だった。搭乗者数は2020年度は1日平均117人、2021年度は1日平均81人と大きく減少した。

だが、2022年11月ごろからインバウンド需要の回復に加え、海外のテレビ番組への出演や国内メディアへの露出により、2022年度の月間平均搭乗者数は1日平均220人に増加。そして2023年9月現在、1日の平均搭乗者数は平日760人、土日祝は930人にまで回復している。

「少しでも雨天になれば運行を中止するなど、安全には細心の注意を払っていますので、おのずと日数の多い平日の平均搭乗者数は少なくなります。なので単日ベースでみれば、平日と土日祝でそこまで差はないですね」

歩いているだけでは見えない「だるま大臣人形」が正面から見られる


なお、国別の搭乗者数の割合は、日本人が31%、韓国人が23%、中国人が18%、そのほか諸外国が28.8%(※)となっている。韓国や中国の人たちは友達や恋人同士で乗るケースが多いのに対し、東南アジアやヨーロッパ、アメリカの人たちは、主に家族連れであることが多いのだとか。また、家族連れの場合は、搭乗可能となる3歳から80代までと年齢層も幅広い。
※2023年9月現在の直近3カ月のデータ

「韓国や中国は日本から近いので、国内旅行の延長のような感覚で訪れている方が多いのかもしれません。これは日本の方にも同じことが言えます。対して、東南アジアやヨーロッパ、アメリカの方は遠方からお越しになるので、観光の記念として乗られることが多いみたいで、なかには親戚連れで来られる方もいますね」

副店長扮する名物キャラクターが大人気!一方で人員不足の問題も

「えびすタワー」の搭乗口には、「スパイダーマン」のタイツを着たスタッフが搭乗者を元気いっぱいで迎えてくれると人気で、彼を見つけると声を掛ける人も少なくない。実は、この「スパイダーマン」に扮するのは道頓堀店の副店長。「海外の方にも人気で、彼に挨拶している観光客もいますよ」と塩津さん。

エンターテインメント性の高さから、国内外ともに多くのリピーターがいるそうで、なかには旅行中に連日搭乗する人もいるのだとか。ただ、人気の一方で人員不足の問題が常態化している。

「『えびすタワー』のメンテナンスをしてくれている従業員がいるのですが、人員削減の影響でもともと8人だったのが、2人になってしまいました。それに伴い、もとは11時〜22時に運行していましたが、現状は16時〜22時の6時間しか稼働できていない問題もあります。通常の時間に戻せばお客さんは増えると思いますが、代わりに2人の負担がとんでもないことになってしまいますので、やはりある程度の人員を確保しなければいけません」

また、現在「えびすタワー」に関するSNSでの発信やさらに人々を楽しませる新企画、メディア出演なども増やしていきたいと考えているそうだが、人員不足の影響で実行に移せないものも多いという。

「ただ、ありがたいことに、YouTuberの方が『えびすタワー』の魅力を紹介してくださったり、『えびすタワー』に乗って『ここで働きたい!』と言って、スタッフになってくれた方もいます。こうした誠意に応えるためにも、引き続き一緒に働いてくれる方を募集し、労働環境の整備に努めてまいります」

取材後、「えびすタワー」に搭乗してみた!

取材後、熱が冷めやらぬうちに「えびすタワー」に搭乗してみることに。少し前まで雨の影響により一時運休していたが、運よく再開後すぐに乗ることができた。搭乗口に向かうと、なぜかマスクを取っていたスパイダーマン(副店長)が笑顔で迎えてくれて、出発の際はスタッフさんたちが「いってらっしゃい」と見送ってくれた。実は高所恐怖症の筆者だが、温かい対応もあってリラックスした状態で15分間の空中遊覧をスタートできた。

搭乗直後、ゴンドラの水平回転を体験。長円形観覧車に続き、こちらも世界初なんだとか。180度の回転は思いのほか迫力があり、「ここからスタートするんだな!」と気が引き締まる筆者。普通の観覧車と違い、正面は全面がガラス窓となっているので、足元の道頓堀川もハッキリと見ることができた。最頂点の77.4メートル地点に到達すると、正面には千日前の繁華街やあべのハルカス、そして背後には梅田方面のきらびやかに光るビル群が広がっていた。

最頂点77.4メートルの景色。つい「あ!あべのハルカス!」と声が出てしまう

背後から見られるのは、梅田方面の景色。大阪の景観を存分に堪能しよう


美しい景観に目を奪われる筆者だったが、ふと足元を見て思わず「うわ!高っ!」と声をあげてしまった。その後ゆっくりと降下して、最後にもう一度水平回転し、副店長とスタッフさんたちの笑顔に見守られながらスタート地点に戻った。

足元には「道頓堀川」が広がる。高所恐怖症の人はちょっと怖いかも?


今や日本のみならず、世界中の人たちに大阪の景観の魅力を届けている「えびすタワー」。大阪・道頓堀のランドマークとして、これから私たちにどんなエンターテインメントを提供してくれるのだろうか。現在考案中の企画の数々が、実現することを願ってやまない。

取材・文=西脇章太(にげば企画)

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