大人向けクレヨン、なぜ?ぺんてるが「おじいちゃん先生」柴崎春通と共同開発、“今の大人”にこそ必要な理由を解説

2025年2月18日

ぺんてる株式会社は、新開発の固形画材「ART CRAYON(アートクレヨン)」の16色セットおよび新色8色の販売を、2025年2月7日から全国の文具取扱店で開始した。「アートクレヨン」は、「大人が自由に描く豊かさを取り戻す」ことを目標に、画家・美術系YouTuberである柴崎春通さんと共同開発したもの。大人が日常で描くことに寄り添う画材であるアートクレヨンについて、担当者に話を聞いてみた。

大人のためのクレヨン「アートクレヨン」に16色セットが新登場!


――大人のクレヨンについて、販売意図や狙い、目的、ターゲットなどを教えてください。
創業より77年にわたり学童用画材をつくってきたぺんてるが、今回、大人のための画材を開発した背景には、「大人が自由に描く豊かさを取り戻したい」という、強い想いがあります。描くこと、表現することは、本来、一人ひとりが持つ自分らしさの象徴であり、人生を豊かにするものです。しかし、多くの人が、子どものころは夢中になって絵を描いていても、大人になるにつれ、描くことやアートから離れてしまう、すなわち、描く自由を失っているという実情があります。AIが台頭し、人間らしさとは何かが改めて問われる時代に、自らを見つめ、自由に想像を膨らませ、オリジナルの創造性を発揮する、そんなアートの力が、今の大人には必要であり、それを支えることが、当社の使命であると考えています。そこで、想いを同じくする画家・柴崎春通さんの協力のもと、大人が自由に描くために必要なものは何かを追求し、当社に蓄積された知見と技術を結集して生まれたのがアートクレヨンです。

――16色セットとなった大人のクレヨンのイチオシのポイントを教えてください。
たった8色で油絵のような表現を可能にしたアートクレヨンに、明るい中間色8色を追加することにより、印象派のような豊かな表現が可能になりました。また、8色セット同様、パッケージのアートワークは、柴崎さんが実際にこの16色を使って書き下ろした作品です。猫の毛のモフモフしたやわらかなタッチ感は16色ならではの表現です。絵画作品のように飾って、日常にアートを取り入れられます。

――大人のクレヨンというアイデアはどのようにして生まれましたか?また、その実現に向けて苦労した点などあればそれをどうクリアしたか、あわせて教えてください。
『戦後の子どもたちに必要なのは、美術教育だ』という創業者の想いから、1946年にクレヨンの国内製造を始めたのが、当社の創業のストーリーです。以来、小学校を中心に教育用の画材の普及を担い、子どもたちに描くことのよろこびを広げてきました。そんな歴史を持ったぺんてるが、子ども向けのクレヨンを使って重厚な絵を制作する1本の動画をきっかけに、描くことの魅力をYouTubeで発信し続ける柴崎春通さんに出会いました。そして、アトリエに伺った私たちに柴崎さんが投げかけたのは「ぺんてるは、何故大人のためのクレヨンをつくらないのか?」という哲学的な問いでした。子どものための画材をつくってきたぺんてる。しかし、そんな私たち自身が大人になってからも想像のままに描き、自分だけのものの見方・考え方、自分なりの視点、自由を失っている。私たちは、とても大切なものを失いかけていると気づかされたのです。自分らしく描くこと、自分らしくいられる自由、それが、今を生きる大人には必要なのではないかと考え、「アートクレヨン」を開発いたしました。苦労した点は、柴崎さんからいただいた「パスの特長を残しながら、クレヨンのような使い方ができたら」という要望をクリアすることです。混色というのは、一般的にはパスという製品が得意な技法。一方でクレヨンというのは、色を重ねる重色が得意です。ぺんてるでは、その二つの特長をパスとクレヨンで使い分けていたのですが、パスとクレヨン、どちらの特長も持ちつつ、従来品よりも厚く塗り重ねられるように試行錯誤を重ねました。その結果、「混色」の決め手は、配合でした。そもそもクレヨンとパスの材料はほぼ共通ですが、油分が多いのがパスで、ワックス分が多いのがクレヨンです。今回は本来ならば別々の性能を持つ二つの製品のいいとこ取りをして、少し柔らかめに仕上がるよう配合しました。そうして、アートクレヨンは8色で混ぜたり、ぼかしたりしながら、淡い表現やニュアンスのある中間色の色味も出せるようになりました。

――なぜ、追加色として今回明るい中間色を選ばれたのですか?
たった8色で油絵のような表現を可能にしたアートクレヨンに、混色で作ることが難しい明るい中間色8色(オレンジ、ペールバーミリオン、ヒヤシンスバイオレット、ライトオーカー、グレー、ピーコックブルー、ベロニーズグリーン、サップグリーン)を追加した理由は、既存色と合わせて使うことで、印象派の絵画のような豊かで多彩な表現が可能になるからです。グレーは、他の色と混色することで明度を保ったまま彩度を落とす効果があり、作品に落ち着いた色調を与えます。人物像を描くときにもおすすめです。オレンジやペールバーミリオンは、空や森の表現に加えることによって作品に落ち着きとやわらかさと奥行きを与えます。また、ベロニーズグリーン、サップグリーン、既存色のビリジアンの緑系3色を使うことにより、樹木の日向や日陰など、さまざまな表情を描き分けることができます。

【写真】追加8色の色味はこちら


――大人のクレヨン発売後の反響を教えてください。
2024年10月に8色セットを発売してから、非常にポジティブな反響をいただいております。ユーザーさまからは、その鮮やかな発色と滑らかな描き心地を好評いただいております。また、「思い立ったらすぐ描けるのが素晴らしい。準備や片付けも簡単ですごく使いやすい。」と評価されています。一方で、一部のユーザーさまからは「原色だけではなく、中間色も欲しい。」といったご意見もいただいておりました。2月に発売となります16色セットは、明るい中間色の8色が新登場となります。全16色になったアートクレヨンで、もっと多彩な表現を楽しんでいただけましたらうれしいです。

――読者へのメッセージをお願いします。
アートクレヨンを通じて、こころ躍るアートのある豊かな生活を送ってほしい。それこそが、ものづくりの先にある、私たちの願いです。あなたもアートクレヨンを手に入れて、「描く」がある人生に、私たちと一緒に半歩踏み出しませんか?

「アートクレヨン」商品価格

「アートクレヨン」全16色

■アートクレヨン16色セット:6600円
■アートクレヨン単色:418円

子どものころは好きなように絵を描いていたのに、大人になると絵を描くのは難しいと思い込んでしまう。そんな思い込みを解消し、絵を描く楽しみを取り戻してくれるのがこのアートクレヨンである。ぜひアートクレヨンを使って自由に表現する楽しみを見つけてほしい。

文=岸遥南
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