長さを測るために使われる定規。ごく身近なアイテムだが、新潟県三条市に本社を構える新潟精機株式会社が作る定規は一味違う。


1センチの部分を見たときに、5ミリの部分が長く、間の1ミリ単位の線は同じ長さの短い線で表現されているのが一般的だ。これに対し、新潟精機の定規は1ミリ単位の線の長さが階段状になっている。新潟精機ではこのオリジナルの目盛を「快段目盛」と名付け、さまざまなタイプの定規を製造・販売している。「快段目盛」は従来品と比べて見やすいとさまざまな場所で評判だという。ステレオタイプにとらわれない、斬新な発想の商品はどのようにして生まれたのだろうか?新潟精機代表取締役社長の五十嵐利行さんに話を聞いた。

定規の役割とは何か?原点に立ち戻って生まれた「快段目盛」
1960年に創業した新潟精機。創業当時から一貫して精密測定工具の製造・販売を生業としており、主力商品はPT(Precision Tool、精密測定工具)製品だ。
「PT製品もいろいろとありますが、穴の直径を測るための『ピンゲージ』がわかりやすいでしょうか。直径の異なる棒で、これを穴に刺してぴったりハマるかどうかで穴の直径を測ることができるというものです。ピンゲージのサイズは2.998ミリ、2.997ミリというように、ミリよりも小さい1マイクロメートル単位で異なるものを用意していて、肉眼では差がわからないようなものも測ることができます。自動車、ロケット、航空機といった精密さが求められる製造現場で使用されるプロ仕様の測定機器を私たちは作ってきました。ただ、今から40年くらい前でしょうか。新潟県三条市はもの作り産業の町としても知られていて、その当時は一般で使われる定規を作る会社も数多くありました。それで、私たちも地元産業を盛り立てようということで、一般向けの定規も手がけるようになりました」
階段状の目盛の“快段定規”を販売するようになったのは2012年のこと。
「私は便利だな、楽だなって感じるものが好きなんです。定規はなんのためにあるのか?長さを測るためですよね。それなのに、ミリ単位の目盛を見ていると読みづらいと感じることがある。特に老眼が入ってくると細かい部分が見づらい。定規を使う仕事だと、1日に何回も、何十回も測ったりするので余計疲れてしまいます。では、目盛自体を変えていくことで、もっとわかりやすくできないかな、と考えていろいろなパターンの目盛を作ってみたんです。そしたら階段状の目盛が一番しっくりきたので、これでやってみようということで快段目盛の製品が生まれました」
目盛を変えるという思い切った発想。社内で反対意見は出なかったのだろうか?

「賛否両論ありましたね。社内で年代別にアンケートをとってみて、それで見やすいという意見が多かったのでならやってみようということになりました。それで工業系の現場でも一般でも使いやすいアルミ製の30センチ定規をリリースしました。ホームセンターなどに販路があったので持って行くと、反応が良く、これはいける!となりました」