写真フィルムと化粧品には4つの意外な共通点があった。富士フイルムが展開する「アスタリフト」が美容家から一目置かれるワケ

2025年10月3日

富士フイルム株式会社(以下、富士フイルム)といえば、写真や映像に関する製品やサービスを提供するイメージが真っ先に浮かぶのではないだろうか。特に昭和・平成時代には誰でも簡単に写真が撮れる「写ルンです」を旅行やイベントで使っていた人も多いかもしれない。

そんな富士フイルムは、2006年に化粧品市場に参入し、2007年にスキンケアブランド「アスタリフト」を立ち上げた。現在では数々の口コミサイトでも高い評価を集め、昨今は女性だけでなく男性のユーザーも多いのだとか。それにしても数あるスキンケア商品があるなかで、なぜアスタリフトが選ばれているのか。

そこで、アスタリフトのブランドを立ち上げた背景や、高い評価を受ける理由などについて、富士フィルム 化粧品事業部 マーケティング統括部 PRチーフ 藤谷知世さんに話を聞いた。

写真フィルムを作って売っていた富士フイルムが、スキンケア製品をどのように生み出したのか。その開発の裏側に迫る


写真フィルムと化粧品、4つの意外な共通点

1934年、大日本セルロイド株式会社から写真フィルム事業を独立させて誕生した富士写真フィルムは、写真用・映画用フィルムの国産化を目的に事業をスタート。長年、フィルムに加えカメラも製造する総合写真メーカーとして活躍した。

そんな同社が、写真技術をスキンケアに転用できる点に注目し、2007年にアスタリフトブランドの創設にいたった。同ブランドについて、藤谷さんは「フィルム技術とスキンケア開発には4つの共通項があります」と話す。

【画像で解説】スキンケア製品開発に応用された写真フィルム技術は4つ存在する


「一つ目は、コラーゲン研究です。コラーゲンは肌のハリや弾力を生む重要な成分で、美容に興味がない方でも一度は聞いたことがあると思いますが、実はこのコラーゲンが写真フィルムのベースの約半分に使われているのです」

富士フイルムでは、創業時から高品質コラーゲンを精製し、劣化防止技術を蓄積。それをもとに、肌に適したコラーゲンやその保護方法の基礎研究を進めているのだそう。

「2つ目はナノテクノロジーという、1マイクロメートルの1000分の1の大きさであるナノサイズまで粒子を小さくする技術です。フィルムは何層にも重なっており、各層に何百種類もの粒子が散りばめられています。スキンケアにおいても、美容成分を小さくして浸透率を上げるために使われています」

ナノサイズにすると同じ体積で表面積が大きくなるため、肌との接触面積が増え、成分が効率的に浸透するようだ。

「3つ目は、抗酸化技術です。古い写真が色あせてしまうのは紫外線による酸化が原因なのをご存知でしょうか。このフィルムを酸化から守る長年の研究が、肌のUV保護や老化防止技術に活かされているのです」

アスタリフトに配合されている「アスタキサンチン」は、サケやエビなどに多く含まれる赤色の天然色素で高い抗酸化力を持つ


続けて「4つ目は、光解析コントロール技術です。レントゲン機器やフィルムで、体を傷つけずに内部を可視化する技術を開発しています」と藤谷さん。これをスキンケアに活用し、シミやシワなどの肌悩みの内部メカニズムを基礎研究している。

起死回生の一手で名品を生み出した「第2の創業」

デジタルカメラやスマートフォンの普及で、写真フィルムの需要は2000年から急激に減少していた。当時の状況を藤谷さんは「需要がなくなるほどの危機感が迫るなか、ほかの分野への事業転換を探るため、富士フイルム独自の技術を徹底的に洗い出しました」と振り返る。

「リストアップした技術から、コラーゲン、ナノテクノロジー、抗酸化技術、光解析コントロール技術が化粧品事業に活用できると確信。アスタリフトの事業が始まりました。同時にほかの新規事業も立ち上げ、この時期を『第2の創業』と呼んでいます」

水に溶けないアスタキサンチンを、富士フイルム独自のナノテクノロジーで化粧品に配合


起死回生のブランド展開となったアスタリフト。2025年に15周年を迎えるジェリー アクアリスタは、美容家やインフルエンサーから高評価を受け、口コミサイトでも上位にランクインしている。

「化粧品業界に4000社以上あるなか、他社との違いが明確でないと選ばれないと考え、独自技術とその効果をしっかり訴求。安心して使ってもらえる点をマーケティングの軸にしています」

参入当初から「化粧品の選び方が変わる」というキャッチコピーで発信。成分だけでなく、肌の奥まで届ける技術の重要性をメッセージに込めているという。

「化粧品の選び方、変わる。」というキャッチコピーでラインナップを拡充


「18年間、一貫してエビデンスに基づくメッセージを伝えてきた成果が、ここ数年で出ているようです。特にYouTubeやSNSのインフルエンサーの影響力が強まり、口コミで広がっています。富士フイルムのこだわりが詰まった商品で効果を実感してもらえれば、納得感を持って『名品』と評価されると思います」

創業以来の写真フィルム技術に加え、トータルヘルスケアカンパニーとして医療・医薬品分野まで拡大。これによりさらに進化している。

「医療と化粧品の両方を扱う企業は少なく、他社にない強みです。医薬品研究員が化粧品開発に関わることもあり、分野の垣根なく知見を融合させるのが富士フイルムらしいですね」

1000回超の厳選が生んだ、ユーザーを虜にする究極の魅力

一般的な化粧品会社は、ブランドの注目を再喚起するためにも1、2年ほどの周期でリニューアルや新商品の発売を行う。しかし、富士フイルムは3〜4年に一度のペースでリニューアルしており、他社より間隔が長い傾向があるという。

「富士フイルムでは、研究期間にかなりの時間をかけているため、リニューアル周期にかなり幅があります。ジェリー アクアリスタのリニューアルの際には、エイジングケアのニーズを一から洗い出し、富士フイルムにしかできない皮膚科学研究のアプローチ方法を模索。そこから必要な成分を何千回もスクリーニングしてニーズに合致しているか確認していきます」

アスタリフトの主力製品である「ジェリー アクアリスタ」が、2025年で誕生15周年を迎えた


さらに、浸透性を高めるための技術として何をすればよいのか、ほかの美容成分との組み合わせはどうするのかなど多くの段階を経ていく。写真フィルムを製造していたプロセスと同じように化粧品開発も行っているようだ。

「こうして丹精込めて作ったアスタリフトには、18年間ずっと使い続けてくれる方もいれば、一度離れたけど『やっぱりこれじゃないとだめだ』と戻ってきてくれた方もいます。トレンドを追うことも大事ですが、本当によいものを長く使ってもらう製品づくりを今後も続けていきたいと思います」

本質的な製品の価値と品質を追求する姿勢は、今後もエイジングケアに悩む人たちを助ける強い味方になってくれるはず。これを機に、「一度使えばほかに浮気できない」と言わしめるアスタリフトの魅力に触れてみてはいかがだろうか。

取材=西脇章太(にげば企画)、文=織田繭(にげば企画)

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