近年、掃除方法の定番となりつつある、酸素系漂白剤を使ったいわゆる“オキシ漬け”。酸素系漂白剤は衣服への漂白剤としての使用に限らず、風呂やリビングなど家中に使えるマルチ洗剤として認識されるようになった。
酸素系漂白剤の使い方はSNSを中心に発信され、それを参考に実践しているという人も多いのではないだろうか。しかし、その“万能さ”が先行し、正しい使い方やより効果的な使い方はまだまだ知られていないように思う。
そこで今回は、酸素系漂白剤が流行する20年以上前から関連商品を販売しているライオンケミカル株式会社(以下、ライオンケミカル) 開発部 主任の鄭好根(ジョンホグン)さんに、より高い効果を得られるコツや使用上の注意点について話を聞いた。
主成分は1900年ごろに発見された過炭酸ナトリウム
今では、酸素系漂白剤として「オキシ」と名の付く洗剤が当たり前のように使用され、その用途は多岐にわたる。「オキシ」とは日本語で「酸化する」という意味で、洗剤の主成分は過炭酸ナトリウムとなっている。
「過炭酸ナトリウムは1900年ごろに誕生して以来、さまざまな分野で活用されてきた成分です。1980年代に粉末で発売され、衣類の漂白剤として長らく使われてきました」
そして、新型コロナウイルスのまん延をきっかけに、除菌ができる漂白剤が大流行。しかし、塩素系漂白剤は使い方が難しかったり、健康被害のリスクがあったりと、徐々に酸素系漂白剤への注目が高まっていった。さらに、アフターコロナでは除菌への意識が落ち着き、衣類へのダメージを懸念するようになったため、酸素系漂白剤の需要が逆転したという。
「現在は衣類に留まらず、洗濯機の洗濯槽や浴室、キッチンにいたるまで使用され、その活用方法はSNSでも取り上げられるようになりました。実際、家中どこにでも使っていただける掃除用品ですので、やっとその認知が高まってきたと感じています」
専門家に聞く酸素系漂白剤の正しい使い方
一般家庭でも多く使用されている酸素系漂白剤だが、その使い方について正しく把握している人は少ないのではないだろうか。そこで、酸素系漂白剤製品の開発も担当している鄭さんに、より効果的な使い方を聞いた。
「粉末を溶かすには水よりも40~50度くらいのぬるま湯のほうが溶けやすいので、溶かして使う場合はぬるま湯に入れてしっかり溶かしてください。また、気をつけていただきたいのは、酸素系漂白剤は酸性洗剤と混ぜると予期せぬ化学反応が起き、本来の効果が弱まってしまうことです 。混ぜる際は、洗剤の成分に気をつけながら、弱アルカリ性洗剤あるいは中性洗剤と混ぜていただくと効果的です」
使用時は念のため換気が必要だが、塩素系洗剤のような独特のにおいがしないことから、こぼれなどに気づきにくいので注意。手が荒れやすい人はゴム手袋などを付けて使用するのがいいだろう。
「洗濯物についての注意点としては、銅などの金属、シルクなどのタンパク質を含んだものに使うと、腐食したりタンパク質を変質させて生地を劣化させたりするので避けていただきたいです。また、酸素系漂白剤の粉末が残っていると、洗濯物が変色する恐れが高まったり、そのまま身に着けると皮膚が赤くなりかゆくなったりするので、“しっかり溶かして使う”という点が特に重要ですね」
洗濯機に入れる際もぬるま湯で溶かし、洗濯槽の一番下になるように入れるほうがいいそうだ。鄭さんによると「製品や水の温度によって変わりますが、溶けるのに数分かかるので、しっかり溶かしきるためにも洗濯物を入れたあとに投入するのではなく、洗濯槽に先に入れておくほうがいい」とのこと。衣類に限らず、掃除に使用する際にも同様に注意しよう。
今後は効果だけでなく使いやすさも追求
酸素系漂白剤の漬け置き洗いが世間で流行する前から、酸素系漂白剤の製造・販売に尽力してきたライオンケミカル。そんなライオンケミカルの酸素系漂白剤には界面活性剤が含まれており、より汚れを落としやすいように工夫しているのだとか。
「酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム)は、まだまだ幅広い用途の可能性を秘めています。今後は家中で使える洗剤として、さらに用途の幅を広げて使っていただけるように研究を続けていきたいです。その中で、より安全性に特化して展開したのがスプレータイプで、汚れた部分に直接プッシュして使える中性洗剤の洗濯スプレーとなっています。こうした使いやすさもどんどん追求していきたいですね」
酸素系漂白剤を使って夏のうちにできた汚れを一掃し、気持ちよく冬を迎えてみてはいかがだろうか。
取材・文=織田繭(にげば企画)
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