「朝、アラームが鳴っても起きられない」。そんな経験を持つ人は少なくないはず。特に、秋の季節は「秋バテ」で体がだるく、布団から出るのが一層つらく感じる時期だ。
スマートフォンのアラームを利用する人も多いだろうが、スワイプひとつで止められる音では心もとない。「絶対に起きたい朝に、頼れる存在がほしい」──。そんな願いに応えるのが、セイコーウオッチの「RAIDEN(ライデン)」だ。
“電車が通過する時並みの音量”で知られるこのシリーズは、38年にわたり「寝坊できない人たち」の味方であり続けている。
今回は、セイコーウオッチ株式会社の広報・PR室 室長の平岡孝悦さんと、クロックデザイン・企画部の大五亮太さんに、RAIDEN誕生のきっかけからその圧倒的な音の秘密などについて話を聞いた。
遊び心から始まった“RAIDEN”ブランド
「RAIDEN」は、ただの目覚まし時計シリーズではない。1988年に誕生して以来、独自の世界観と信頼性で支持を集める“ブランド”として進化してきた。
「もともとは“クロック業界でなにかおもしろいものを作りたい”という発想から始まりました。当時、開発チームが出した答えが『とにかく大きな目覚まし時計を作ろう』というものでした」(平岡さん)
初代モデルは、上部や下部に大きなベルを配置した4機種。翌1989年には4つのベルを搭載したモデルが登場し、ここで初めて「RAIDEN」という名が正式に与えられたという。
「“これなら寝坊しない”という安心感を、見た目でも伝えたかったんです。RAIDENの歴史は“安心感を形にする挑戦”と言えますね」(平岡さん)
その後、2001年には左右にベルを配した「スーパーライデン」、2007年には電波修正機能を備えたデジタルモデルが登場。
現在では、初代の伝統を受け継ぐ“シングルベルタイプ”、安心感ある“ダブルベルタイプ”、そして大人のライフスタイルに合わせた“モダンタイプ”の3系統に進化している。
電車が通過する時と同じレベル?圧倒的な爆音の秘密
RAIDEN最大の特徴は、その“音”だ。SNSでは「目覚ましというより警報器」「家族全員が起きる」と話題になるほどだ。
「一般的な高架下における電車の通過音が70〜90デシベルと言われますが、RAIDENはそれに匹敵する音圧を確保しています。社内でテストすると、火災報知器と間違えられるほどです」(大五さん)
圧倒的な音を生み出すのは、存在感ある大きなベルだ。モーターが直接ベルを叩く構造により、力強いサウンドを実現。また、初代から続くシングルベルタイプは、手のひらどころか顔と並ぶほどのサイズ感。見ただけで「これなら起きられそう」と思える頼もしさがある。
「このサイズには理由があります。『これなら起きられる』という信頼をデザインで伝えたかったんです」と大五さん。近年は、現代の生活空間に合わせてコンパクト化も進む。
「ベルを内側に配置し、デザインをスリム化したモデルも登場しています。ただし、音量はそのまま。見た目は静かでも、中身は“雷クラス”です」(平岡さん)
また、RAIDENは、音だけでなくデザインの進化でもユーザーを引きつけてきた。「大音量=無骨」というイメージを覆し、インテリアとしても映えるラインがそろう。
「最新の針表示式のRAIDENは、大きなベルを上部に置きながら、奥行きを抑えてスッキリ見える構造を採用しました。これが意匠権を取るほど画期的だったんです」(大五さん)
さらに、黒とメタリックを組み合わせ、力強さとモダンさを兼ね備えたモデルも人気なのだとか。
「毎日使うものだから、視認性や“止めやすさ”にもこだわっています。デザインが安心感を後押しする、そんな時計を目指しています」と平岡さん。一方で、健康面にも配慮がある。
「音が強すぎると健康被害が出かねません。社内基準で上限を定め、耳から一定距離を保つよう推奨しており、音量を段階的に調整できるモデルもあります」(大五さん)
「スマホでよくない?」という声に、RAIDENの答え
もちろん、読者の中には「スマホのアラームで十分では?」と思う人もいるだろう。その声に、RAIDENは真正面から向き合ってきた。
「スマホは確かに便利です。ただ、スワイプひとつで止められてしまうのが弱点なんです。RAIDENは、“起こす”という行為そのものに特化しています」(平岡さん)
さらにRAIDENがこだわるのは、起きる瞬間だけではない。“安心して眠れる環境”をつくることにも配慮している。
「スマホのブルーライトは睡眠を妨げることがありますが、RAIDENのライトは穏やかで、眠りを邪魔しません」と大五さんは語る。
電池(※電池寿命約1.5年間)で動くから停電のときも問題なし。どのような環境でも確実に動く安心感は、スマートフォンなどのデジタル機器にはない魅力だ。加えて、平岡さんは「RAIDENには、“アナログならではの信頼感”があるんです」と話す。
最近では、“光で起こす”タイプの目覚まし時計も注目を集めている。RAIDENは、この新たなトレンドをどのように捉えているのだろうか。
「新しい方式の目覚まし時計の研究も社内で進めています。実は30年以上前、“香りで起こす時計”という企画もあったんですよ」と平岡さん。そんなセイコーウオッチの探求心はいまも健在だ。
「電池で動き、充電を気にせず長く使える。その安心感こそRAIDENの本質です。これからも“音の力”を軸に、ライフスタイルの変化に寄り添う形を模索していきます」(大五さん)
続けて、平岡さんは「“RAIDENが鳴る=起きなきゃ”という安心感を、これからも届けたいですね」と意気込む。
寝坊が心配な朝。アラームをかけても「ちゃんと起きられるかな」と不安で眠れない夜。そんなときは、RAIDENをそばに置いてみてほしい。「起きられないかも」という不安ごと、きっと吹き飛ばしてくれるはずだ。
取材・文=西脇章太(にげば企画)
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