ひぐち選手「もう一回モチベーションを燃やして戦うウメハラさんに感動した」【ストリートファイターリーグ・プレイオフ直前インタビュー】

2024年12月20日

「Saishunkan Sol 熊本」に所属する・ひぐち選手

2024年8月に開幕した「ストリートファイター」の公式チームリーグ戦「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2024」(略称:SFL)。本節が終了し、グランドファイナル出場を懸けたプレイオフ進出を決めたのがSaishunkan Sol 熊本(以下:SS熊本)だ。

2024年12月21日にプレイオフを控えるSaishunkan Sol 熊本(SS熊本)の4選手(右から、ふ~ど選手、ウメハラ選手、ひぐち選手、ネモ選手)


2024年12月21日(土)・22日(日)に行われるプレイオフでは、FUKUSHIMA IBUSHIGINとの対決を控えるSS熊本。FandomPlusではプレイオフ直前の選手4名それぞれに独占インタビューを実施。今回はひぐち選手に、チーム一番の若手から見たベテラン揃いのSS熊本というチームについてや、シーズンで感じたコミュニケーションの重要性などを教えてもらった。

2024年8月16日に開幕した「ストリートファイター」の公式チームリーグ戦「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2024」※SFL公式サイトより


「ゲームに対する解像度が上がった」2024年の進化とは?


――プレイオフに向けての意気込みを教えてください。

【ひぐち】今回組んでいるみんなレジェンドクラスのメンバーで、こういう経験ってなかなかないと思っています。そういう意味でも、自分としても進化できたと感じたシーズンでしたし、このプレイオフも勝って、グランドファイナルも勝って、このチームでまだまだ戦いたいという思いが強くあります。

――進化という言葉がありましたが、具体的にはどんな部分でしょうか?

【ひぐち】自分が使っているキャラクターがガイルで、もちろん今までも研究はしていたんですけど。今回のチームでウメハラさんとふ~どさんとたくさん話すようになって、2人が持っている経験が僕の中で落とし込めたんです。「こういう考え方ができるんだ」「こんな形で連携組めたら強いよね」と、ゲームに対する解像度がすごく上がったのが進化した部分です。

――今シーズンの中で自身のターニングポイントがあれば教えてください。

【ひぐち】自分の中でもっとも諦めずに集中できていたと思うのは第6節(対FUKUSHIMA IBUSHIGIN)の対cosa選手戦です。3本先取の大将戦で、2本を先にあっさり取られてしまってから3本取り直せた試合だったんです。

今まではそういう場面でズルズル負けてしまいがちで、しかもcosaさんがとってきた対策もすごくよくて、正直勝てるのかなって思いもありました。ただ、ここを勝つか負けるかでプレイオフの状況が変わってくるというのがあり、責任感というか「気を引き締めてちゃんとやり切ろう」という気持ちを持って取り組めました。

――チームとしてのSS熊本のバランスや強みについて教えてください。

【ひぐち】僕以外の3人はレジェンドなので、喋りたい内容を率直に話しても変に人間関係がこじれたりしないのは一番の強みだと感じています。チームとしてシーズンを戦うと、ちょっとした意見のズレなどで人間関係の難しさが出てくると思います。でもSS熊本にはまったくなくて。互いを補い合えるのもSS熊本チームの「らしさ」なのかなって感じです。

ネモ選手


レジェンドの背負う「歴史の長さ」を痛感


――2024シーズンはチーム内の“勝ち頭”のようなポジションだったと思います。その中でプレッシャーはありましたか?

【ひぐち】プレッシャーはもちろんありました。メンバー3人の命を背負って、ファンの方たちの期待も背負っていたので緊張もしました。ただ、チーム戦はどうしても(その時)勝っている人が頑張るっていうのが大事ですし、しかもその人もずっと勝ち続けられるわけじゃなくて。あくまで、他のみんなの調子が戻るまで(自分が)対応するみたいな気持ちだったので、役割に迷いはなかったです。

――“調子”という観点では、7月のファンミーティングでウメハラ選手が「11月まで待ってほしい」と話し、その宣言通り11月5日に行われた第9節の大将戦に逆転で勝利しました。ひぐち選手の感想をお聞きしたいです。

ウメハラ選手の「11月まで待ってほしい」が生まれた、7月7日のファンミューティング


【ひぐち】有言実行はもちろん凄いですし、僕が負けてしまった節で逆転してくれたことにも感動しました。でも僕がもっとも感銘を受けたのは、数々の大会で優勝し、もう20年以上も格ゲープレイヤーのトップにいる人が、もう一回モチベーションを燃やして戦っている姿なんです。

それってなかなかできることじゃないと思っていて。9節の奇跡的な逆転劇も一つひとつ細かな積み重ねが生んだものだと思いますし、僕が生まれる前から活躍している人が、その努力を結実させる姿を目の当たりにして心にきました。

――ウメハラ選手は、今回のプレイオフを楽しむポイントとして「ストーリー」を挙げていました。ひぐち選手にとってのストーリーはありますか?

ウメハラ選手


【ひぐち】自分もそれなりに長くこの業界にいるので、プレイオフのMatch1で対戦するIBUSHIGINには前回組んでいたメンバーがいますし、Match2のGood8Squadにも餅さんがいる。仮にCrazy Raccoonがグランドファイナルに上がってきたら「Shutoさんがくるな」という思いもあります。でもやっぱり、目の前の敵を倒し続けるのが一番大事だなと思っていて、ストーリーの部分は結果として、のちのち振り返った時に見出せるようになればいいなと思います。

――ありがとうございます。それでは、ひぐち選手のプレイ面での注目ポイントは?

【ひぐち】僕の場合、近距離の読み合いの部分はふ~どさんからも「オカルトじみているくらい勘が鋭い」って言われます。自分しかやらないコンボなんかも見どころだと思いますが、一番のポイントを挙げるなら“読みの鋭さ”になると思います。

「はっきりと伝える重要性」プロの語るコミュニケーション論

4人の目標は「優勝」ただひとつ


――プレイオフに向けて練習面での変化はありますか?

【ひぐち】オフで集まっての練習をやるようになったことと、まちゃぼー選手がコーチとして加わったことですね。コーチの意見を聞いてみんなかなり強くなってきているな、というのがプレイオフに向けての変化です。

――ひぐち選手はその変化をどう感じていますか?

【ひぐち】オンラインでも喋ったりはできますが、オフだとすぐに実践するとか、他の人の話にちょっと重ねて喋ったり、意見を出し合ったりが気楽にできます。会話って部分だけでもオンとオフでは全然違うなと感じています。

スト6はリリースからまだ2年も経っていないので攻略はまだ煮詰まっていなくて、“大きな見落とし”もあったりして意外な発見も多いです。そういう“ちょっとした発見”がオフの会話の中から生まれているなと思います。

――まだまだ伸びしろがあるような状況だと。

【ひぐち】前作のストVは6~7年目もやっていたので、最後の方は細部を詰める感じでしたけど、今(スト6)は新しい攻略が見つかればそれができるだけで勝てるようになるし、逆もしかりです。相手にそれをやられたらものすごくキツくなったりもするので、今はオフの価値が高いんだなと感じました。

――コミュニケーションの部分で特に大事にしているのは?

【ひぐち】自分の考えをはっきりと言うところです。勝負はどうしても勝ち負けがついてしまうものなので、結果として負けてしまうこともあります。結果がどうあれ、その勝負への道中で後悔しないやり取りというか、「本当はこう思っていたけど、まあ、言いにくいし……」みたいなことはなくしたいです。

――YouTube動画でも、ひぐち選手がふ~ど選手に臆さず発言する姿が印象的です。

【ひぐち】格闘ゲーム界隈の大人たちってすごく懐が深いというか、ゲームに対する考え方や自分の気持ちを伝えることにちゃんと向き合ってくれます。ふ~どさんとは配信以外でもかなり喋ったりしていて、みなさんが思っている以上に関係値があるので。

ふ~ど選手


ゲームには実践する能力と考える能力があって、僕はどちらかといえば前者が高い方なんですけど、ふ~どさんは両方の能力が高くて、本当に理想的なプレイヤーだなって尊敬しています。今はかわいがってもらっていますし、話を聞いてもらえて本当にありがたいです。

――プレイオフ直前ではありますが、SFL以外でも個人的な目標や挑戦したいことはありますか?

【ひぐち】SFLを除いての話であれば、CAPCOM CUPやEWC(Esports World Cup)といった個人戦の世界大会での優勝は大きな目標です。また、スト6はストリーマーやYouTuberの方に受け入れてもらえているので、そういった盛り上がりを、自分も何らかの形でお手伝いしたいです。そして一番大事だなと思っているのは、一年でも長くプロゲーマーをやることです。

――ありがとうございます。それでは最後に、ファンに向けてのメッセージをお願いします。

【ひぐち】今、スト6はとても目まぐるしい界隈なので、みなさん楽しんでもらえていると思いますが、その分(プレイヤーの)競争も激しくなってきたので、負けないように気を引き締めて、来年も再来年もみなさんの前でプレイができるように頑張りたいと思います。応援よろしくお願いします!