「ウメハラがぁ!画面端ぃ!」伝説の“電波実況”をWEB CMでオマージュ 日清食品が仕掛ける「よくわからないけど、なんか面白い」CMの狙い

2025年3月28日

日清食品のCM制作の根底には、「面白くなければCMじゃない!」という考えがある

「ウメハラがぁ!…チーズ2枚ぃ!ウメハラがのせたぁぁーっ!」異様なテンションの実況の下、プロゲーマー・ウメハラ(梅原大吾)選手が日清食品の「カップヌードル チリトマトヌードル」と戦うWEB CM「ウメハラがぁっ 篇」が2025年2月に公開され、SNS上で大きな反響を呼んだ。

本CMは、「チリトマトヌードル」にチーズ2枚を乗せて食べるアレンジを、『GUILTY GEAR XX』のゲーム画面を模して、ウメハラ(梅原大吾)選手が操作するキャラクター・ソル=バッドガイ(以下、ソル)が「チリトマトヌードル」を相手に戦い、画面端に追い込んで勝利するという演出でコミカルに紹介。これは20年以上にわたって格ゲーコミュニティで語り継がれる名シーン(※)を現代に蘇らせたもので、プレイヤーのウメハラ選手はもちろん、ゲーム実況を当時担当したガマの油さんを起用し、プレイ画面のエフェクトや色彩に至るまでオリジナルを緻密に再現するこだわりようだ。
(※)2003年に開催された格ゲー大会『闘劇』の“電波実況”

格ゲーファンにお馴染み、20年前の『闘劇』の実況をオマージュ


語り継がれる格ゲー界の伝説を、なぜ「カップヌードル」のCMでオマージュしたのか。ウメハラ選手を起用した背景や、CM制作の舞台裏について、日清食品の担当者に聞いた。

表情や言い淀みまで!当時の光景を極限まで再現


――「カップヌードル」のWEB CM「ウメハラがぁっ 篇」を制作したきっかけを教えてください。

「チリトマトヌードル」がリニューアルしたことを広くアピールするために、TVとWEBを活用したプロモーション施策を展開することにしました。TVCMは、「チリトマトヌードル」という商品の良さを再認識していただきたいとの思いから、幅広い層のお客さまに向けて商品の特長を訴求する内容にしたので、WEB CMは「チリトマトヌードル」をより多くのお客さまに食べていただきたいとの思いから、実際に試してみたくなるような食べ方を提案する内容にしました。

――ウメハラ選手の伝説の場面を再現した理由は?

「チリトマトヌードルにチーズを2枚乗せて食べてほしい」というメッセージを印象的に伝えるため、さまざまな手法を検討しました。最終的に、「ウメハラがぁ!」というフレーズが印象的な20年前の『闘劇』の実況をオマージュすれば、“チーズを乗せる”というアクションを、映像と実況で印象的に伝えることができると考えました。そして、ウメハラ選手ご本人にご出演いただければ、大きな話題になるのではないかと思い至りました。

――ウメハラ選手をはじめ、CMを制作するにあたって“オリジナル”の関係者はどんな形で携わったのでしょうか。

ウメハラ選手、実況のがまの油さん、『GUILTY GEAR』シリーズを制作されたアークシステムワークスさまには、多大なるご協力をいただきました。ウメハラ選手は、直前の食事を抜いて撮影に臨んでくださったそうです。「チリトマトヌードル」を何度も食べていただきましたが、そのおかげで「おいしそうに食べている表情」を撮ることができました。

がまの油さんは実況だけでなく、繰り出される技にもっとも適した効果音や色彩などのエフェクト、HPゲージが減る正しいタイミングなど、ゲームに関するプロならではのアドバイスをしてくださいました。また、アークシステムワークスさんには、ゲームで使用している素材や楽曲の提供、監修をしていただきました。

――当時の光景を忠実に再現するために工夫した点を教えてください。

ゲーム画面の背景や、会場の観客の配置、さらには観客の表情に至るまで、可能な限り当時の映像に近づけられるように作り込みました。ウメハラ選手には、当時使った技をそのまま再現していただきました。また、がまの油さんには、実際の大会と同様、椅子に座らず立ったまま実況してもらうことで、当時の声音に近づけました。ゲーム画面については、格闘ゲーム『GUILTY GEAR』シリーズの人気キャラクター・ソルの動きを参考にしながら、やかんでお湯をかけたり、チーズでフタをするというアクションが“格闘ゲーム”らしく見えるように工夫を重ねました。

――CM制作でその他にもこだわったポイントは?

CM冒頭の「バシュン」という効果音や、がまの油さんの一瞬の“言い淀み”といった細かい部分まで、当時の映像をできる限り忠実に再現しています。元ネタを知っている方なら思わず笑ってしまうようなポイントを散りばめました。

このCMを見て、チーズ2枚で「チリトマトヌードル」にフタをして食べる方法を試す人が続出


「よくわからないけど、なんか面白い」でリーチする


――CMは公開早々、大きな反響を呼びました。

「カップヌードル」ブランドが2024年度に展開した広告の中でも特に反響が大きく、とてもうれしく思います。CMが話題になり、「チリトマト」という言葉がXの“日本のトレンド”に入ったほか、SNSでは実際にチーズ2枚で「チリトマトヌードル」にフタをして食べる方法を試してくださる方が多く見受けられました。さらに、「チリトマトヌードル」の店頭在庫が少なくなった店舗の写真を添えて、『チリトマトヌードルが売れているということは、近くに格ゲーマーがいるのでは?』といった内容をSNSに投稿されている方もいらっしゃいました。弊社がお伝えしたかったメッセージがしっかりとお客さまに届き、それが商品の話題化や商品の購入、そして実際に商品を食べてみることにまで繋げられたと感じています。

――格ゲーファンなら知らぬものはいない、けれどそうでない層は「なんだろう」と思うようなパロディCMです。どんな反応を想定されていたのでしょうか?

元ネタを知っている方には「あのシーンが完璧に再現されている!」と盛り上がっていただけると考えていましたが、元ネタをまったく知らない方も「なにこれ?」と関心を持ち、最終的には「なんか面白い!」と感じていただける内容を目指しました。

観客の配置や表情、照明の角度に至るまで、可能な限り当時の映像に近づけている


――今回のCMのように、日清食品のCMは他社と一線を画すユニークさでたびたび注目を集めています。こうしたCMを制作する狙いは?

「面白くなければCMじゃない!」という考えが基本にありますので、見ている人たちを楽しませよう、驚かせようと思いながら作っています。日清食品では「UNIQUE (ユニーク)」「HAPPY (ハッピー)」「CREATIVE (クリエイティブ)」「GLOBAL (グローバル)」の4つを大切にしていて、CM制作でも常に意識しています。また、「ただ単に面白い動画を作るのではなく、商品の広告を作っている」ことを絶対に忘れないようにしています。スーパーやコンビニなどの店頭で、弊社の商品のことをふと思い出してもらえるような仕掛けを盛り込めるよう、徹底的に考え抜いています。

ターゲットには深く刺さり、ターゲット以外の方も置き去りにしない


――一方、「日清のどん兵衛」の「どんぎつね」シリーズのように、ブランドごとにCMのカラーが異なるようにも感じます。「カップヌードル」のCMはどんな点をコアにして制作されているのでしょうか?

「カップヌードル」ブランドについては、常に“新しさ”を大切にしつつ、「面白い」と思っていただけるようなCM作りを心掛けています。その上で、見る人が誰でも理解できるような内容であることも重視しています。

実況を当時担当したがまの油さんを起用。異様なテンションや言い淀みを再現


――趣味や価値観、メディアの多様化が進む中でのCM作りで難しさやポイントだと考える部分は?

お客さまの趣味や価値観、さらにはメディアも多様化が進む中で、弊社ではターゲットを細分化し、ターゲットごとにもっともメッセージが伝わりやすい手法を選んでコミュニケーションを展開しています。TVCMは、幅広い層の方々にメッセージを届けることができますが、今回のように、ニッチな層に喜んでいただけるようなWEB CMを制作することもあります。

ただ、そんなWEB CMであっても、元ネタを知らない方にも今回のように「よくわからないけど、なんか面白い」と思っていただけるのがベストです。どのような手法であっても、ターゲットには深く刺さり、ターゲット以外の方も置き去りにしないようにすることが重要で、非常に難しいところだと考えています。

――最後にずばり、ヒットするCMを生み出す秘訣を教えてください。

伝えたいメッセージを印象的に伝えることができるかどうかが、ヒットするCMを生み出す上でのポイントだと思います。

【動画】カップヌードル「ウメハラがぁっ 篇」/ 梅原大吾