「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」という形で国民体育大会(国体)の競技としての採用が発表され、現在、多方面から注目されつつあるeスポーツ。第18回アジア競技大会における日本代表の優勝も話題になるなど、その名を耳にする機会は増えてきたが、具体的にどのような競技なのか?と聞かれると、答えられる人はまだまだ少ないはず。
そこでウォーカープラスでは、日本eスポーツ連合(JeSU)会長の岡村秀樹氏に直撃インタビューを敢行。「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」に対する思いや、eスポーツの展望について語ってもらった。
“競技性”と“公共性”の両立というeスポーツの特徴が国体の目的と合致した
――「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」は、「第74回国民体育大会」および、「第19回全国障害者スポーツ大会」の一環としての実施になりますが、通常のeスポーツ大会と比べて、どのような違いが生まれるのでしょうか?
eスポーツには、主軸となるふたつのベクトルがあります。まずひとつは、アスリートがチャンピオンシップを競い合う、きわめて“競技性”に特化したリアルスポーツに通じるベクトル。
そしてもうひとつが、年齢や性別を問わず、誰でも自由に参加でき、楽しむことができる“公共性”のベクトルです。
こうした2軸の両立こそ、eスポーツならではの特徴だと考えています。
――そうしたeスポーツの、特に公共性を示すうえで、国体は絶好の場だったと?
国体は、身体能力を競うだけでなく、“老若男女関係なく、皆でスポーツを楽しみ、体育に対する意識を向上させよう”という目的もある大会なので、そこがeスポーツの理念にも合致していると思います。このような伝統あるスポーツの祭典に参加できることは、JeSUとしても非常にありがたい話ですね。
我々の調査では、いま現在、日本において「eスポーツ」という言葉の認知度は40パーセント程度。具体的に、どのような競技なのか知っている人となると、その割合はさらに少なくなってしまいます。
競技性があり、皆で一緒に楽しめる国体に競技として採用されることで、eスポーツの認知度がさらに高まればと期待しています。
運動部と文化部の生徒が垣根を越えて競える画期的な大会に
――競技性の面でも、従来のスポーツとは異なる展開が見られそうですね。
例えば高校生なら、運動部と文化部の生徒が垣根を越えて競えるようになります。大会の開催を発表した際は、文化部に所属する女子高生から「これでやっと、運動部と同じフィールドで戦えます!」というメッセージもいただきました。
ほかにも、小学生と大学生が同じフィールドで競技に挑戦できたりするので、これらは長年、スポーツに携わってきた方たちにとっても画期的な要素だと思いますよ。
今後はゲームタイトルの多様性がカギに
――eスポーツが、誰もが楽しめる国民的イベントへと成長するには、何が必要だとお考えですか?
「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」では、サッカーゲームの「ウイニングイレブン2019」が競技種目になっていますが、他のジャンルのゲームを楽しみたい…という方も大勢いらっしゃいます。今後はゲームの多様性を通して、今までスポーツに関心のなかった方たちも惹きつけられるようにしていきたいですね。それが国体のさらなる活性化にも繫がり、共同で展開していく意味もより明確になるものと考えています。
――どのようなジャンルのゲームが競技種目として選出されるのでしょう?
現在検討中ですので、あまり詳しくは話せませんが、特殊な環境じゃないと遊べないタイトルやポピュラリティに反するタイトルは、ちょっと選びにくいですね。どのようなタイトルが競技種目としてふさわしいか、あらゆる面から検証しつつ、選定していきたいと考えています。
胸を張って「これぞeスポーツ」と言い切れる状態でオリンピックへ
――国体に続き、今後の展望には“オリンピック競技としての採用”も含まれていると思いますが、どのような形での採用が理想だとお考えですか?
またタイトル選びの話になりますが、やはり“オリンピックの精神に反しないタイトル”であること。そして“競技性のあるタイトル”であることが、オリンピック競技に採用されるうえでの必須条件になってきます。
そのうえで、胸を張って「これぞeスポーツ」と言いきれるタイトルを選出し、より多くの方に興味を持っていただけるよう、万全の状態で臨めれば最高ですね。
そしてJeSUとしては、世界各国の強豪と渡り合える、強いアスリートの育成にも全力で取り組んでいきますので、応援していただけますと幸いです。
――最後に、9月15日(土)に前哨戦として開催されます「茨城プレ大会」について、皆さんにひと言メッセージをお願いします。
eスポーツは名前しか聞いたことがない…という方でも十分楽しめますので、気軽に足を運んでいただきたいですね。eスポーツに間近で触れて、その魅力を直に体験していただいて。少しでも興味を持っていただけたら、是非、今後のeスポーツの大会にエントリーしていただいて。いっしょに盛り上げていってもらえると嬉しいですね。
ソムタム田井