映画「忌怪島/きかいじま」苦しみと恐怖の連鎖“9のキーワード”!より深く、世界観に没入できる⁉︎

2023年7月5日

公開中の映画「忌怪島/きかいじま」を徹底解剖。この作品を深く味わうために知っておきたい9のキーワードを紹介する。これまでにはなかった、現代らしい恐怖のメカニズムや伝統の“怨念”による恐怖など、新しいホラー映画を堪能できるはずだ。
※本記事は、2023年5月1日発売のムック 「異界Walker」 の転載記事です。

【(1)都市伝説×メタバース】新旧の融合によって新しい恐怖が誕生!

都市伝説といえば、これまで幾度となくホラー映画で描かれてきた題材。話の種類は違っても、ある種、ホラー映画の定番と言えるだろう。「忌怪島」では、そこに最新技術のメタバース要素をプラス。最近ではより身近な存在となってきたメタバースやVRを物語に取り込むことで、誰もが安心して楽しめると思っていたコンテンツの裏に潜む恐怖を浮き彫りに。新旧を融合させることによって、新しいタイプのホラー映画を誕生させた。

島全体をスキャンし、その場のにおいまで感じられる完璧なメタバース空間を目指すシンセカイのメンバー。しかし、それが恐怖を呼び寄せることに…(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会


もっと楽しめる!? もっと恐怖に怯える!?深掘り!用語集
【メタバース】「メタ(超越した・高次の)」と「ユニバース(宇宙・世界)」を組み合わせた造語。インターネット上で作られた仮想空間のことを指し、自分の分身となるアバターを介して行動することができる。
【ボディシェアリング】視覚や聴覚、重さや位置といった固有感覚までもデジタル化。それらを仮想空間のアバターなどを通して共有し、個人の体験を他者も同じものとして味わうことができるシステムのこと。
【VR】バーチャル・リアリティの略で、仮想空間を体験するための手段や技術のことを意味する。体験者の視覚や聴覚に訴えることで、現実で起こっているかのように錯覚させることができる。
【ブレインシンクロニシティ】本作内の造語。脳に蓄積された記憶や志向、感情まで共有できるシステム。他者が主観的に感じた喜怒哀楽や恐れまでシンクロすることができ、仮想空間では完全に相手と同化できる。

【(2)ミラーニューロン】鏡のように同じ行動を!?脳が秘める未知なる可能性

“ミラーニューロン”とは、脳にある神経細胞の働きによって、他者の行動を見ているうちに、鏡に映っている自分を見ているかのように同じ行動を取ってしまう反応のこと。脳科学の中でも未知の可能性を秘めた分野であり、島で行われている“ブレインシンクロニシティ”の研究でもその効果が期待されていたが、それが最悪の事態を招くことになり…。

【写真】脳科学と最新デジタル技術を融合させ、完璧な仮想空間を作るはずだったが…(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会


【(3)恐怖に翻弄される男女】天才脳科学者による研究が恐怖を呼び寄せることに!?

若き天才脳科学者として、その名を知られた片岡友彦。島でVR研究を行う“シンセカイ”に参加することになった彼は“ブレインシンクロニシティ”の研究を進めるが、そこで作り上げた仮想空間に異変が!その研究の被験者であった父親の死を受けて島に来た環を巻き込んで、思いも寄らぬ恐怖に立ち向かうことに。

天才脳科学者 片岡友彦(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

チーフ脳科学者 井出文子。片岡を島へ招く(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

園田環。片岡に父の捜査を依頼。園田哲夫とは親子(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

園田哲夫。園田環とは親子(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会


もっと楽しめる!?不思議な友達関係
同世代とはなじめずにいる島の中学生・リン。そんな彼女だが、孫と祖父ほどに年の離れたシゲルに対しては、親の目を盗んで自宅から食事を運ぶほど親切。島民から毛嫌いされているシゲルと、彼を案じるリンがこの先にたどる運命とは!?

金城リン(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

新納シゲル(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会


【(4)赤い鳥居】神域と人間の俗界を区画する鳥居の存在

島の海岸線から少し離れた海の中に建てられた赤い鳥居。しかも、そこから程近い場所にも同じ鳥居がある。そもそも鳥居とは、神域と人間の俗界を区画するためのもの。さらに鳥居に使われている赤(=朱色)は魔よけの効果もあるとされている。それほど広くない島に、複数の赤い鳥居が近距離で存在する理由とは?そこには過去の深い因縁が隠されていた。

年末年始の初詣で、神社を訪れる人も多いと思うが、ここで描かれる鳥居は全く別の雰囲気。そこから醸し出される異様な空気感だけで、鳥肌が立つほど怖い(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会


【(5)赤い女】メタバースに突如現れるナゾの女

昔から都市伝説的にその存在を語られてきた“赤い女”。各地域、年代において、日本全国に出没するその恐怖の対象は、令和となった現代においても健在。本作でも、島に拠点を置く“シンセカイ”チームが作り上げた現実世界とそっくりのメタバース(=仮想空間)に突如、“赤い女”が出現し、島で起きる関係者の不審死にもつながっていく。

順調に思われていたシンセカイチームの研究だったが、突然パソコンからエラー音が鳴り響き…。そのバグを起こした“赤い女”とは、いったい何者なのか(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会


【(6)イマジョ】島の“奴隷”となってしまった女の呪い

その美しさゆえ、島民から嫉妬や差別をうけ、なぶり殺された女性が怨霊となり、島中の人を呪い殺したという“イマジョ”伝説。実際、本作の撮影が行われた奄美大島でもこれに似た“ヤンチュの呪い”なるものがあり、その話を外部にもらした人が突然の事故で亡くなってしまったという話も…。

島の秩序を乱したとして、罰を受けさせられるも、そこでの苦悩、苦痛は想像を絶するもの。島民や世の中への怒りが、彼女を“イマジョ”として甦らせる力に(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会


【(7)あっちの世界、こっちの世界】島での不審死事件が導く不思議な運命

“シンセカイ”のメンバーとして呼んでくれたチーフの不審死に疑問を抱く友彦と、疎遠だったからこそ父の死の真相を知りたいと願う環。偶然知り合った2人は、通じるものがあった。島で現実世界と仮想空間を行き来するなかで、“こっちの世界”とも“あっちの世界”ともわからない世界で恐怖が襲いかかる。その経験が2人を次なる運命へ導く。

船で行くしかない小さな島で、ほぼ同時刻に起きた不可解な連続死。そのナゾが解かれるばかりか、島民たちにも怪現象が襲いかかり、なかには死にいたる者も(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会


【(8)シャーマンの存在】あの世とつながる相手と脳をシンクロ⁉︎

現世とあの世の魂をつなぐ呪術者であるシャーマン。今は霊媒師と呼ばれる老婆が、不可解な死をとげた環の父の真相を解き明かすきっかけに。そこに使われるのが、シンセカイチームで友彦を中心として開発されている“ブレインシンクロニシティ”の技術。シャーマンの脳とシンクロすることで真実を解明しようとするが、その行為がさらなる混迷を招く結果となってしまう…。

現実世界では説明のつかない不可思議な現象を、自分たちが研究する“ブレインシンクロニシティ”の技術を使って解明しようと試みる友彦たちだったが…(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会


【(9)風習】怒りと悲しみがもたらす悲劇の連鎖

海に隔てられた小さな島という土地柄ゆえか、島に伝わる風習を絶対と信じる島民たち。“風習”という題材はホラーの定番ではあるが、ここで描かれるのは、そういった風習によって、自分のせいでもないのに“村八分”にされてしまった男の怒りと悲しみ。理不尽な差別を受けながら大人になった彼の思いと、それゆえにもたらされる新たな悲劇の連鎖に胸が痛くなる。

残された写真からも伝わる母と息子のむつまじい関係。しかし、その地に伝わる“イマジョの呪い”が原因で、彼女ら親子は悲しい道をたどることになってしまう(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会