「お金のことをもっと勉強しなきゃ」「お金の使い方を見直したい」と思いながら、何から手をつければよいかわからない――。そんな“お金超初心者”に、ファイナンシャルプランナーの坂本綾子さんが “お金の基本のキ”を教える連載がスタート。アベナオミさんのマンガとともに、これからの時代に知っておきたい「お金の知識」をわかりやすく楽しくガイドします!
アフターコロナ時代に予想される「お金事情」の変化
明日も今日と同じような生活ができる、そんな前提があっけなく崩れることを2020年の初めに私たちは経験しました。その余波は今も続いています。ワクチン接種が進めば、以前のような生活が戻ってくるのでしょうか。
今ほどには外出を控えなくてもよくなるでしょうし、友達との食事や飲み会、旅行も、再開できるでしょう。けれど、コロナ禍での変化の一部は、今後も続いていくことが予想されます。例えば、リモートワーク、支払いのキャッシュレス化…。そして、今はまだ形になっていないけれど、コロナ禍での意識の変化がきっかけとなり、将来、様々な変化が起きることも考えられます。
そのような時代を生きていくうえで、自分の生活を支える「お金」とどう向き合ったいいのか、それがこの連載のテーマです。
コロナ禍で家計の資産残高が130兆円も増えたふたつの理由
まずは、世の中のお金がどう変化したかを確認してみましょう。
家計の金融資産については国が統計をとっています。預貯金に株式などの投資商品、貯蓄性のある保険などまで含めた日本の家計が持つ金融資産の総残高は1946兆円あります。たくさん持っている人から、平均的な人、なかなかお金が貯まらない人まで合わせた総額です。そしてなんと、2020年度の1年間で130兆円も増えています。理由は、ふたつあると考えられます。
ひとつ目は、コロナ禍の家計を支えるために定額給付金が支給されたこと、またみんなが外出を自粛したことで旅行や飲食など例年なら使っていた支出が控えられ、その分、お金が残ったこと。ふたつ目は株価の上昇により、投資をしている人の資産の評価額が上がったこと。
日本を代表する企業の株価の水準を表す「日経平均株価」は、1年で1万円ほど値上がりしました。コロナ禍が始まったばかりの頃は、先行きが見通せないことが不安材料となり株価は大きく値下がりしましたが、その後は持ち直して、最近は3万円を少し下回る水準で推移しています。投資をしていると、値下がりというリスクはあるものの、値上がり益を享受できる可能性もあるということです。
変化に合わせた取捨選択でキャッシュレス決済を制する
コンビニやスーパーのレジでは、スマホ決済用のバーコードをかざすことが普通になった人もいるかもしれません。感染予防のためになるべく現金を触りたくないという心理や、財布の小銭を気にしなくていい便利さから、電子マネーなどを利用するキャッシュレス決済が増えています。コロナ以前から、国を挙げてキャッシュレス決済の普及が推進されてきました。現金を安全に運んだり保管したりするには経費がかかるので、この経費を削減できるし、キャッシュレス決済ではデータの収集が可能で、収集したデータを様々に活用できるメリットがあるからです。
もちろんキャッシュレス決済は、使う側の消費者にとっても便利ではあるのですが、財布の中の現金が減るという実態が伴わないため、現金よりも使いすぎになり易いと言われています。ポイント目当てなどで複数のキャッシュレス支払いを併用するうちに、いくら使ったのか自分で把握できなくなっている人もいるようです。これからますます進むであろうキャッシュレス決済を制するには、自分に合うものを取捨選択し、なおかつ、財布の中の現金ではなく、スマホやパソコン上の数字(=お金の残高)に脳が敏感に反応する訓練をした方がいいのかもしれません。
世の中の状況は、大まかにこんな感じですが、みなさんのお財布の状況はいかがでしょうか。2020年、日本全体では金融資産が大きく増えましたが、あなたの資産は増えましたか?
様々な変化が予想されるこれからの時代に、自分のお金は自分でコントロールしながら、楽しく暮らしていくために必要なお金の知識を毎回、紹介していきます。
【著者 プロフィール】
坂本綾子/ファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所代表。 20年を超える取材記者経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナーを行っている。 著書に「年収200万円の私でも心おだやかに毎日暮らせるお金の貯め方を教えてください!」(SBクリエイティブ)など。
【イラストレーター プロフィール】
アベナオミ/宮城県生まれ、宮城県在住。地元情報誌のデザイナーをしながらイラストレーターとしても活動。2016年にフリーランスに。著書に「マンガでわかる!妊娠・出産はじめてBOOK」(KADOKAWA)など。