「お金のことをもっと勉強しなきゃ」「お金の使い方を見直したい」と思いながら、何から手をつければよいかわからない――。そんな“お金超初心者”に、ファイナンシャルプランナーの坂本綾子さんが “お金の基本のキ”を教える連載がスタート。アベナオミさんのマンガとともに、これからの時代に知っておきたい「お金の知識」をわかりやすく楽しくガイドします!今回は第5回です。
お金が貯まる人と貯まらない人の違いは一つだけ
お金が貯まる人と貯まらない人、何が違うのでしょうか?その違いは単純です。お金を使うか、使わないか、の差です。と言ってしまうと身もフタもないのですが、自分の過去を振り返っても、FPとして行う家計相談からもそう思います。
若い頃の私は、欲しいものがあると我慢できずに買ってしまい、入ってきたお金をすぐに使い果たしていました。欲望のコントロールができない上に、先を見通すとこともできませんでした。
そんなふうだった私が紆余曲折を経てFPとして独立し、仕事で家計相談を受けるようになってみると、「気持ちはよーくわかるんだけど…」と、あの頃の私と似た相談者にときどき出会います。
お金の使い方は性格や育った環境で決まる?
一方で、収入から考えて貯蓄額がとても多く、よくそれだけ貯めたられましたねという相談者にも出会います。だいだいは「お金、使えないんです。どうしても欲しいものもないし」と、ガマンして貯めたというよりも、使わなかったから貯まったパターンです。貯めている人の中には、収入が多い人ももちろんいます。「それだけの収入があるのなら、もう少し楽しみのためにお金を使ってもいいのでは?」と客観的には思いますが、本人は「使えないんですよね。高いものは買えない」と言います。
お金を使いたいタイプか、使えないタイプか、お金との関係は性格に左右されるところがかなりあると感じます。育った環境にも影響されるかもしれません。
しかし、いつまでも貯まらないままでは、大人としてちゃんと生きていけません。貯まっている人も、せっかく貯めたお金を活かしてこそ、貯めた甲斐があります。
性格や環境任せでは、お金を使いたい人はいつまでも貯まらないし、使えない人は使わないお金がただただ貯まっていく寂しい結果に。
「お金が貯まる人」になるために必要なこととは?
そこで大事なのが知識です。
例えば、結婚して子どもを持ったら、いつどんなお金が必要になるのか、家を買うにはどれくらいの頭金を用意すればいいか、貯めるための金融商品にはどんなものがあるのか、そういった知識を身に付けると、先を見通して、今どうすればいいかを考えるようになるでしょう。貯めたお金を使う場面を思い描くことで、貯めるモチベーションも上がることでしょう。知性で性格をコントロールする感覚です。少し長めの時間軸で考えることで、買い物をするときも、ほんとに必要なのか、今すぐ買うべきかを冷静に判断するようになります。
次は実践として、貯め癖をつけること。
貯め癖をつけるとは、わざわざ意識して貯めるのではなく、貯まることが習慣になっている、つまり貯まるシステムを生活に組み込むことです。それには、銀行の自動積立定期預金を使うのが一番。勤務先に財形貯蓄がある人は財形貯蓄でもかまいません。手取り収入の1割を給与天引きや、給与振り込み直後に自動積立で定期預金にしてしまいます。しばらく続けてみて、1割貯蓄は大変か、余裕かなどを元に金額の調整を行います。
この貯め癖は、お金を使えないこととは違います。毎月必ず一定額を貯めているので、残りのお金は気持ちよく使ってよいのです。貯めることと使うことがセットになって、使う欲求もある程度満たされるので長続きします。つまり、お金を使うと使わないの真ん中、第3の道とでも言えばいいでしょうか。このバランスを自分で試行錯誤して探っていくことで、マイペースな貯蓄が成り立つようになります。
目標を決めるのは最後でいい理由
目標の設定は最後でかまいません。子どもがいれば否応なく教育費を貯めなければと目標を立てやすいけれど、若いときは目標を見つけづらい人もいます。いやでも貯まってしまう仕組みを作るのが先決です。
目標は、今の自分の生活や、これから3年後、5年後、10年後にどうありたいかを考えて、○○までに△△のために□□円を貯めよう!と設定します。目標は3本ぐらい並行して立てることもできます。教育費と住宅の頭金、旅行のお金と老後資金など。ただし、欲張りすぎないことです。目標を決めたら、必ず1回あたりの積立金額を計算します。
目標の例
・5年後までに150万円貯める!
150万円÷5年÷12か月=2万5000円 … 毎月2万5000円を現実に貯蓄に回せる?
お金を貯めるコツは○○をしないこと
せっかく貯め始めたのに、途中で挫折する原因として多いのは、目標金額が高すぎる、無理をしてしまうことです。結局、生活費が足りなくなって、貯めたお金を引き出して使い、なし崩しに貯蓄を失くし、あきらめてしまうことに。
貯めたお金を使うのは、目標のため。あるいは、失業、病気・ケガ、災害など突発的なことが起きたときだけです。回り道に思えても、無理をしない方が、時間とともに確実に貯まります。最短距離を求めて挫折するよりもずっといいですね。
お金を貯めること使うことは、張り切って行う特別なことではなく、生活習慣のひとつ、そして、この習慣の積み重ねが今と将来の充実した生活を実現します。
【著者 プロフィール】
坂本綾子/ファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所代表。 20年を超える取材記者経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナーを行っている。 著書に「年収200万円の私でも心おだやかに毎日暮らせるお金の貯め方を教えてください!」(SBクリエイティブ)など。
【イラストレーター プロフィール】
アベナオミ/宮城県生まれ、宮城県在住。地元情報誌のデザイナーをしながらイラストレーターとしても活動。2016年にフリーランスに。著書に「マンガでわかる!妊娠・出産はじめてBOOK」(KADOKAWA)など。