「お金のことをもっと勉強しなきゃ」「お金の使い方を見直したい」と思いながら、何から手をつければよいかわからない――。そんな“お金超初心者”に、ファイナンシャルプランナーの坂本綾子さんが “お金の基本のキ”を教える連載がスタート。アベナオミさんのマンガとともに、これからの時代に知っておきたい「お金の知識」をわかりやすく楽しくガイドします!今回は第8回です。
タンス貯金にはない、銀行にお金を預けるメリット3つ
大人なら、日本ではほぼ全員もっているのが銀行口座です。給料や仕事の報酬、年金などが振り込まれます。給料日にホッとしながらATMから生活費を引き出した経験はありませんか?銀行口座を持つことのメリットは、主に次の3つです。
●現金の手渡しではなく、お金のやり取りができる
受け取りや支払いをすべて現金で手渡しで行うためには、相手と対面できる時間に、対面できる場所までいちいち出かけて行かなければなりません。これはなかなか大変です。銀行口座を仲介させ、銀行口座で受け取る、銀行口座から引き落とす・振り込むことで、対面する手間を省くことができます。これを銀行の決済機能といいます。
●安全に保管して、利子をもらうことができる
現金は落としたり失くしたりしたら、ほぼ戻ってくる可能性はありません。自宅が火事になったら「タンス預金」にしていた現金が燃えてしまうリスクもあります。銀行口座は名義人が決まっていて、口座のお金は名義人の資産です。お金にちゃんと名前がついているようなものですね。そして、預金には利子が付きます。銀行では、預かったお金を、お金を必要とする人や企業などに貸し出します。貸した人からもらう利子は銀行の利益になり、その一部をお金を預けてくれたお礼として預金者に利子として支払うからです。
普通預金なら使いたいときはいつでも引き出せますし、定期預金も満期が来たら引き出すことができます。つまり、お金を使いたくなるまで安全に保管(※)することができ、預けている間は利子ももらうことができるのです。お金に余裕がある人と、お金を必要とする人を仲介することから、これを銀行の金融仲介機能と言います。
※インターネットバンキングの契約をしている人は、不正送金により口座のお金を盗まれることがないように、セキュリティ対策をしっかり行いましょう。
●お金を借りることができる
自分のお金を預けるだけではなく、借りることができます。個人がお金を借りるといえば住宅ローンが代表的ですね。企業では運転資金などを借入れます。銀行では、預かったお金の一部は預金者からの引き出しに備えて手元に残しますが、他は貸し出しに回します。例えば、Aさんから100万円を預かり、10万円を残して90万円をBさんに貸し付けると、最初に預けられたお金が、預金者と借りた人の両方に活用され、計算上は合計190万円になります。銀行が預かったお金を貸し出すことを繰り返すと、合計額はもとのお金の何倍かに増えていきます。みんなが銀行を信用してお金を預けるから可能になることで、銀行による「信用創造」といいます。
以上が銀行の主な機能です。銀行は、預金や貸し出しを通して社会にお金を循環させる金融機関の代表といえます。そのため、銀行の業務については法律で厳しく規制されてきました。この規制が少しずつ緩和され、かつて横並びだった金利は銀行ごとに自由に決められるようになり、現在では投資信託や保険の販売もできます。銀行は金融商品の小売店のような役割も果たすようになってきました。さらにインターネット専業銀行が誕生したり、大手スーパー・コンビニなどの流通系企業が銀行業務に参入したりと銀行は大きく変化してきています。
目的やお金の使い道にあわせて銀行を使い分けよう
銀行には、従来から存在し、都市部を中心に全国に店舗を展開する都市銀行、県庁所在地などを拠点とし周辺に店舗を展開する地方銀行があります。さらに新しいタイプの銀行として、インターネット取引を原則とするインターネット銀行、コンビニなどにATMを設置する流通系の銀行などがあります。厳密には銀行ではありませんが、信用金庫や信用組合なども、銀行とほぼ同様に利用することができます。消費者にとっては選択肢が増えているのです。
なぜお金を銀行に預けるか?それは、その方が安全で便利だからです。その上で、選択肢が増えた銀行を、お金の使い道や貯める目的に応じて上手に使い分ければさらにメリットを享受できます。例えば、毎月の公共料金の引き落としは都市銀行や地方銀行が幅広く対応していて便利です。お金を増やしたいなら金利が高めのネット銀行がおすすめです。投資信託を利用したいなら、使いたい投資信託がある銀行を選ぶ方法もあります。多くの銀行では、投資の利益が非課税になるNISA口座や、老後資金を準備できるiDeCo口座(個人型確定拠出年金)も提供しています。
次回は銀行の上手な使い分け方法につい詳しく解説します。
【著者 プロフィール】
坂本綾子/ファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所代表。 20年を超える取材記者経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナーを行っている。 著書に「年収200万円の私でも心おだやかに毎日暮らせるお金の貯め方を教えてください!」(SBクリエイティブ)など。
【イラストレーター プロフィール】
アベナオミ/宮城県生まれ、宮城県在住。地元情報誌のデザイナーをしながらイラストレーターとしても活動。2016年にフリーランスに。著書に「マンガでわかる!妊娠・出産はじめてBOOK」(KADOKAWA)など。