小3の描いた絵がNFTで160万円になりアニメ化も!作品の原点やネットとの付き合い方を聞いてみた

2022年1月31日

小学校3年生の男の子・Zombie Zoo Keeper(@ZombieZooArt)くんが描いた絵が、NFT(非代替性トークン)で高額取引され話題となっている。ドット絵でゾンビを描いた作品は、ピクセルアートのレトロな雰囲気と自由な発想がおもしろく魅力的。なかにはなんと、160万円相当(当時のレート)で二次流通したものもある。

母親でアーティストの草野絵美(@emikusano)さんに、NFTアートを始めたきっかけや、子供の興味関心を尊重しながらデジタルとどう付き合うかなどについて話を聞いた。

母親の草野絵美さんとZombie Zoo Keeperさん


自分でお金を稼いでみたい!夏休みの自由研究として挑戦

NFTアートとは、デジタルアートと仮装通貨のブロックチェーン技術を組み合わせた作品のことで、これまで簡単にコピーを作り出せていたデジタルデータに、唯一無二の価値を証明できるとされている。Zombie Zoo Keeperくんは、夏休みの自由研究としてNFTで絵を売ることに挑戦。そのきっかけとは、何だったのだろうか。

「ミュージシャンをしている私自身、コロナ禍で発表の場を失ってしまっていたときにNFTの存在を知り、昨年の4月に作品を売りました。自分がやっていたこともあって、食卓で話したり、NFTのニュースを見たりしているうちに、息子にも『自分で稼いで、ポケモンカードを買いたい』という動機と、『作品を人に見てもらいたい』という気持ちが生まれたのが、始めたきっかけです」

Zombie Zoo Keeperさんの作品達。絵はiPadを使って描いているそうだ


Zombie Zoo Keeperくんは、ピクセルアートのゲーム「マインクラフト」や、アイロンビーズ、レゴなどが大好き。マス目にそってドットで描くことに親しみを持っていたことから、NFTではドット絵を描いて売ることに。作品のコンセプトは「ゾンビの動物園」。アーティスト名のZombie Zoo Keeperも、そこから名付けられている。

「マインクラフトにゾンビが出てくるので、ゾンビ化した動物にしたいという思いはありました。また、NFTは海外、特に北米の購入者が多いので『外国の人も分かるテーマがいいね』と話していたんです。息子は普段からいろいろな国のアニメを見ているので、『ゾンビはアメリカでも人気だから、ゾンビでいいんじゃない』ということで、テーマが決まりました」

「Zombie Spider」二次流通でなんと160万円相当の値が付いた作品


動物園という設定だが、作品は動物に限らずハンガーやダイナマイトのゾンビまでさまざま。何のゾンビなのか、想像しながら眺めるのも楽しい。もともと絵が得意という訳ではなかったZombie Zoo Keeperくんだが描くことは大好きで、毎日のように作品を制作しているそう。

初めて売れたお金でポケモンカードをゲット!将来の教育資金にも

初めて絵が売れたのは、NFTを始めて1週間ほど経ったとき。金額は約2000円だったそう。その後、作品の人気は上がり、一気に買い占められるほどに。価格も高騰し、世界的に有名なDJ・スティーヴ・アオキさんが購入するなど大きな注目を集めた。ちなみに取引の金額は全て得られるわけではなく、コミッションが入るそう。

DJのスティーヴ・アオキさんに「Zombie Leopard」と2作品合わせて約160万円で購入された「Zombie Turtle」


Zombie Zoo Keeperくんが初めて絵が売れたお金で買ったのは、念願のポケモンカード。その他の使い道を聞いてみると、「お金としては全然使っていないですね。全て、教育資金にしていこうと考えています」と、将来のために蓄えていると教えてくれた。

独特の感性が光る「Zombie Leopard」。草野さんは「スティーヴ・アオキさんが作品を褒めてくれたのが一番印象的だった」と話している


絵が高額で取引されている状況を、Zombie Zoo Keeperくん自身はどのように捉えているのだろうか。

「金額は少なくても『最初に絵が売れたときが一番うれしかった』と話していました。絵が高額で売れていることに関しては、絵の面白さや持ち味が良かったと思うと同時に、タイミングや運もあるし、感謝でしかないというか、ありがたい限りです。息子にもそう話しています。本人もすごくラッキーだったと繰り返し言っていましたね」

好奇心を尊重しつつ、ネット上の正しい情報と知識を身に着けることが大切

NFTは今とても注目されている一方で、未知な部分も多い世界だ。草野さんに子供の興味関心と、デジタルな世界との付き合い方について心掛けていることはあるのか聞いてみた。

ドット絵制作の原点ともなっているアイロンビーズ


「重要だと考えているのは、知的好奇心を伸ばしてあげることと、正しい情報・リテラシーを身に着けること。今はまだネットで自由に検索をさせず、何か気になる時は一緒に調べるなど、情報の整理を親が行っています。また、YouTubeは無限に観られて親がコントロールできない部分があるので、NetflixやAmazonプライムなど、安全で良質なコンテンツが見られるものを使っています」

また、SNSとの関わり方についても教えてくれた。

「NFTを始めて、ソーシャルメディアでの発信を本人がやりたいと言ったときは、危ない目にあった人の話をケーススタディとして見せるなど、いろいろな話をしました。SNSに関しては、友達と付き合うものというよりは、自分の知名度を上げるために活用するものだと教えています。知的好奇心を大切にしながら、うまく導いてあげられたらと試行錯誤の日々です」

「お金を稼ぐ」経験が、税金や社会への興味に発展

わずか9歳にして、自らお金を稼ぐという経験をしたZombie Zoo Keeperくん。この経験は現在、本人の自信になると同時に、お金の勉強や社会への興味関心へと繋がっているという。

「全てに参加したいという気持ちがあるみたいです。『確定申告って何?』とか、税金について関心を持つようになりました。関連する絵本などを読んで、一つ一つ教えています。確定申告で税金がどれくらいかかるかを理解したら、今度はそれが何に使われているのかに興味を持つようになって。最近は散歩をしながら、街の中にある何が税金でできているのかというクイズを出して遊んでいますね」

作品制作の様子


草野さんは、今回のような経験は誰しもができることではないが、例えば使わなくなったものを売ってみて、発生する手数料や税金を知ることでも同じような経験ができるのではと話している。

最後に、今後の活動や将来の夢について聞いてみた。

「今後の展望としては、作品の公共性を上げていくことを考えています。実は今年の春にアニメ作品化することが決定しました。さらにキャラクターグッズなども目指してやっていきたいです。将来の夢はまだ決められないみたいですが、聞かれたときは学校の先生と言っています。大学の先生のように、研究や好きなことに集中するのがすごくいいなと思っているようで。でも『これからも絵を描くことは続けるよ』と話していました」

Zombie Zoo Keeperくんのさらなる活躍に期待したい。

取材・文=松原明子

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