こんにちは、Kentaro.です。連載12回目の今回は「投資よりもまずは節約・貯金が大事な理由」についてお話します。
SNSが発達した近年では、貯蓄に対して厳しい世の中になっています。「銀行預金ではお金は増えないから、投資をしない人はバカだ」とか、「貯金しているのはもったいない」などとよく言われます。昨今はこのような意見が日本を覆っているので、やっぱり貯金は無駄なのか、早く投資しないと不安だ、という人も多いはずです。
そこで、今回は貯金不要論に対する僕の意見を述べたいと思います。結論を言いますと、貯金不要論はかなり的を射ていると感じます。しかし、貯金を軽視するとほぼ確実に人生詰むと思います。
前提として「貯金不要論」は正しい
まず前提として、貯金・銀行預金不要論も非常にいい視点の考えだと思います。どんなことでも、いろいろな観点からの意見を聞くのはすごく大事なことです。
というのも、某アニメのセリフにあったのですが、正義の反対は悪じゃなくて「また別の正義」です。つまりあらゆるものにおいて、どっちが正しい、間違っているというわけではありません。そして自分の意見と反対の意見を聞くことで、自分の考え方もよりブラッシュアップされるものです。
僕は貯金について発信しているくらいですから、貯金は大事ですべての土台だと思っています。だからこそ、自分と真逆の貯金不要論の意見もすごく参考になります(逆に、貯金・銀行預金否定派の方も、僕の反論を聞くことで新しい視点を得られると思います)。
これから「貯金は不要」という意見に反論はしていきますが、別に貯金は不要という考えを全否定する意図はまったくありません。あくまでも僕個人の意見に過ぎませんし、僕の考えが100%正しいと言うつもりもないです。その点だけご了承ください。
それでは、最近巷であふれている貯金不要論への反論へ移っていきます。僕のYouTubeチャンネルのコメントを見る限り、貯金・銀行預金不要論の中身は大きく2つに分かれます。それぞれについて、意見の概要とそれに対する僕の反論という形で進めていきます。
論点(1) 「貯金よりも投資をしろ」という意見
「貯金よりも投資をしろ」とは、本当によく言われることですね。意見の概要としては、銀行預金の金利なんてほとんどないし、インフレによってお金の実質的な価値は目減りしていく。つまり銀行で貯金するほどに貧乏になるんだから、株式などに投資しないとダメだ。もはや投資しない人は”情弱”だ。これは本当にその通りだと思います。
今の時代、銀行預金の金利は0.001%くらいです。つまり100万円を預けても1年後に100万10円にしかなりません。でも金融投資をして、年利5%で運用できた仮定すると100万円は1年後には105万円になります。しかも複利を考えると、貯金と投資ではどんどん差がついていきます。
そう考えると「貯金より投資」という意見は非常に理にかなっています。特に最近は、円安や物価上昇が続いていますから、なおさら「貯金していると貧乏になる」という意見がより優勢になっていると感じます。ただ、この考えを鵜呑みにして「貯金を軽視する」のは非常に危険だと思います。理由は2点ほどあります。
まず1点目が「投資とは、余裕資金でやるものだから」です。
この「貯金より投資」の主張は、さも投資をすれば絶対に儲かるかのような印象を与えます。毎月5万円米国株のインデックス投資を買って年利5%で運用すれば30年後には4000万円になる、といったものです。
でもちょっと考えてほしいのですが、年利5%で増え続ける保証はどこにもないですよね。あくまで「過去は伸びていた」というだけですし、毎年確実に増えるわけではありません。
数十年のスパンで見れば、個人的には全米株・全世界株は上がっていると思いますが、相場は常に上下するものです。貯金をせずに投資にお金を全ベットするということは、自分の全財産が常に市場にさらされ続けるということです。
暴落が来たら1日数十万・数百万のお金が減ることもあります。そう考えると現金を厚めに持って投資に依存しない状態を作らないと、何十年も投資を続けられないと思います(数十年の間に、自分のライフステージや家庭の状況などが変わることも考えられます)。
事実、大半の人が相場の上下に耐えられず投資をやめてしまいますし、投資で成功した人の多くは、投資をしていたことを忘れていた人か亡くなった人だと言われています。だからこそ基本的に投資は、しばらく使う予定がない余裕資金の範囲で行うべきだと思います。
理由の2つ目は「貯金がないと買い増しチャンスを逃すから」です。
投資をやっている人の中には、「余裕資金がないと続けられない」という意見に反論がある人もいるはずです。暴落は自分にとって買い増しのチャンスでしかないから大丈夫、という感じです。相当メンタルがバキバキに仕上がっていて、すごいなと思います。
ただそういう方であっても、手元に貯金があるのは大きいです。相場が下がっていく中で、「今ならいっぱい買える投資のチャンスだ」という瞬間に、思い切って資金を追加できるからです。株価が低い時に資金を入れてたくさん買えれば、相場が上がった時に利益が大きくなりますからね。
個人的にどこが底値かは分からないので、正直買い増しはやらない、というより小心者の僕にはできないと思います。ただ、貯金があることで投資の可能性、チャンスが広がるのは事実。その意味で投資家にとっても、厚めの貯金は否定するものではないと思います。銀行預金はすぐに引き出せますし、良くも悪くも金額は変わりません。投資と違って「いつ売るか」という出口を考える必要もありません。
この銀行預金メリットを考えると、「近い将来に使う予定があるお金+α」くらいの現金はあった方がいいと思います。
論点(2)「節約よりも自己投資して稼げ」という意見
節約したところで、決まった収入の中で貯められるお金はたかがしれています。それなら自己投資するなどして、収入を上げたほうがいいという意見です。これは本当にその通りですよね。
収入を上げるほど貯金しやすくなるのは、紛れもない事実だと思います。例えば、手取り20万円の場合、支出が月15万円→貯金額は月5万円。でも手取り30万円の場合は、支出が月15万円→貯金額は月15万円になります。
支出を固定で考えた場合、手取り20万円→30万円は1.5倍アップ。貯金額だけ見たら3倍に増えています。自己投資などにお金を使ったとしても、アップした分の方がプラスにはなるでしょう。
そう考えると、「稼いだ方が貯金できる」という意見は至極真っ当だと思います。ただ、だからといって節約を否定するのは違うと思います。節約習慣がないと、収入が増えたところで貯金できないからです。
「パーキンソンの法則」という、支出の金額は収入の額に達するまで膨張するという心理学・行動経済学の法則があります。つまり収入が上がると、普通はそれに合わせるように支出もどんどん増えます。
マルクス経済学によると、基本的に給料とは「労働の再生産コスト」、つまり「明日も同じように働くための必要経費」です。給料が上がるということは、責任やストレスが増えることに伴って必要経費=支出が増えるということでもあります。その意味でも、節約習慣がないままだと、収入が上がったところで支出も増えるので、貯金につながらない可能性が高いです。
そして注意すべきなのが、「節約より自己投資で稼げ」と言っている人が誰なのかという点です。かなり成功している起業家やビジネスパーソンが多い印象があります。
人間は良くも悪くも自分の経験からしか話ができません。彼らは優秀だからこそ自己投資をしてそれを元に成功した。そしてその成功体験から自己投資の素晴らしさを話していると思います。そこを否定するつもりはまったくありませんが、みんながみんな正しい自己投資をして収入を上げられるわけではないと思います。自己投資と思って実は浪費をしてしまっている人も、結構多いはずです。
抜群に優秀な人ほど優秀でない人の気持ちはあまり分からないと思うので、再現性としてはさほど高くないのかなと思います。もちろんインフルエンサーなどの言葉通りに自己投資をして成功した人もいると思いますが、その陰にはたくさんの屍が転がっているはずです。
また、自己投資をしろと強く主張している人が、実は怪しい情報商材を売っているケースもないとは限りません。自己投資をして収入を上げよう、この商品を買えばもっと稼げるようになる、のようなイメージです。それに安易にのせられてしまうと、彼らの単なる養分になってしまうので要注意です。
今の時代、情報なんて無料または格安で手に入ります。YouTubeにも良質な動画がありますし、本も1冊1000円ちょっとでしっかりとした知識が身につきます。そう考えると「節約」と「自己投資で収入アップ」は、問題なく両立できるんです。そんな理由から、自己投資という名目でお金をたくさん使うのは少し違うと思います。
投資もするけど、貯金もする。投資全振りは危険
最近は貯金を否定する意見も強くなっていますが、それを鵜呑みにして貯金をまったくしないのは危険です。むしろ節約・貯金の土台があるからこそ、投資を続けたり、収入アップと貯蓄を両立したりできると思います。
また、ネット上では「貯金するな」と言っている方も多いですが、おそらく「貯金なんてまったく不要」と思っている方はほぼいないはずです。注目を集めるには意見を尖らせる必要があるので、さも貯金を完全否定するような言い方をしているだけだと思います。
どんなことであれ「0か100か」で物事を考えるのはやめた方がいいでしょう。そもそも貯金・金融投資・自己投資はすべて同時進行できるので、「あちらを立てればこちらが立たず」的なものではありません。
僕自身は、貯金も投資も自己投資もしています。経験にもお金を使っています。みなさんには、いろいろな意見を聞きながらご自身の価値観に合ったバランスを考えて、お金と向き合ってほしいと思います。
取材・文=斉藤育世(エディターズ・キャンプ)