清水寺や高台寺など京都を代表する観光名所が密集している東山。繁華街の河原町からもアクセス良好なこのエリアは、春になるとあちらこちらで桜が咲き乱れ、古都ならではの風情ある絶景が広がる。そんな東山エリアで、花見と合わせて歴史好きなら一度は訪れて欲しいスポットが霊山歴史館である。
1970(昭和45)年に開館した、幕末・明治維新期の歴史を研究する専門博物館で、坂本龍馬、中岡慎太郎、西郷隆盛ら倒幕派志士、そして近藤勇や土方歳三ら新選組・幕府側それぞれの遺品や書状など、ここでしか見ることができない貴重な所蔵品5000点以上から約100点を常時展示している。さらに、体験型コーナーやフォトスポットも充実。ひとりでじっくり研究してみたり、家族や友人と探訪してみるなど、色々な楽しみ方ができる同館の魅力をウォーカープラスが紹介!
幕末・明治維新の時代を生きた偉人たちの貴重な史料を間近で
常設展は、倒幕側と幕府側・新選組が対面するようなレイアウトになっている。入口すぐのところに展示されている、坂本龍馬を斬ったとされる刀のほか、近藤勇、土方歳三の所用刀は必見だ。
坂本龍馬を斬ったと伝わる刀(脇差)の持ち主は、京都見廻組隊士・桂早之助。1867(慶応3)年11月15日に、京都の醤油商・近江屋の2階に突入した1人だった。あらかじめ天井の低い室内での戦闘を予想し、小太刀の名手として起用された。刀身には無数の傷があり、龍馬と切り結んだ際の壮絶な様が伝わってくる。
近藤の首級が京都の三条河原でさらされた際、下僕がその首と一緒に会津に持ち去ったとされる近藤勇の所用刀(銘「阿州吉川六郎 源祐芳」)。鞘には会津若松市長・松江豊寿が記した覚書があり、近藤の首は会津に埋葬されたとある。会津埋葬説を裏付ける歴史史料としても重要な逸品として注目されている。
新選組・副長の土方歳三の愛刀といえば会津11代和泉守兼定が有名であるが、戦闘の多い新選組隊士にとって刀は消耗品であったとされ、土方も複数の刀を所有していた。表銘には「大和守源秀國」とあり、「秋月君譲請高橋忠守帯之」と後に刻まれている。この刀は、宇都宮か会津で、土方が尊敬していた秋月に贈られたものではないかと思われる。
また、当時にしては大柄だったという身長172cm、約80kgの等身大の坂本龍馬像も迫力あり。映画の特殊メイクや医療現場で使用されるシリコン製の特殊な造りで、体毛や血管、顔の日焼け跡まで精密に再現されていて、息遣いが聞こえてきそうなほどリアル。
さらに、最近加えられた展示の中には、ドラマでも話題となっている大奥を描いた錦絵も。大奥は、徳川将軍が出入りした男子禁制の場所で、当時の人々にとって秘密のベールに包まれていた。そのため、絵師が思い浮かべて描いた作品を見て、中の様子を想像して楽しんでいたのではないかとされる。
そのほかにも歴史史料としても重要な逸品ばかりで、じっくりと観賞していくとあっという間に時間が過ぎていく。丁寧かつ分かりやすいキャプションもついているので要チェック。歴史に残る偉人たち、そして名もなき人々が当時をどのようにして暮らしていたのか、その背景や想いを知ることができる。また、気になったことなど質問があれば受付のスタッフさんに声をかけてみよう。学芸員が在館していれば回答してくれるので、知識が深まりより展示を楽しめるはず。
常設展のフロアには、フォトスポット「偉人の写真館」もあるのでぜひ記念撮影を。プロジェクションマッピングの映像を背景に記念撮影できるコーナーで、土方と隊旗、坂本龍馬と嵐山、五重塔と京都の町並み、公式キャラクター・りょうたんの4種があり、新選組の隊服を着て撮影することができる。
ちなみに、霊山歴史館の初代館長は、パナソニック創業者の松下幸之助である。戦前は国費で志士たちの墓前祭や墓地の修繕が行われていたが、太平洋戦争後は政教分離によって国費で賄えなくなり、また台風などの被害で荒廃してしまっていたところ、地元の有志から相談された松下幸之助が関西の財界人に協力を求めて復興を図るため霊山顕彰会を発足。2年後に歴史館が開館した。
「霊山歴史館」の向かいの山にある霊山聖域(京都霊山護国神社境内)には、維新の志士約3100柱が合祀されている。確認されている墓碑386柱のなかには、木戸孝允・松子夫妻をはじめ、坂本龍馬、中岡慎太郎らの墓もあり、龍馬の墓前では毎年11月15日に墓前祭がとり行われ、多くの人が集まる。霊山歴史館で展示を見に行く前後に、ぜひ立ち寄ってお参りしよう。
稽古で使っていた木刀、銃など実際の重さを体験しよう!
大人から子供まで大人気の体験コーナーもあり。近藤勇ら新選組が使っていたとされる、天然理心流の木刀と一般の木刀を比べて触れることができる。新選組がいかに重い木刀で、実践的な稽古をしていたのか、強さの秘訣を感じられるはず。
幕末の「鳥羽伏見の戦い」で薩長軍と旧幕府軍が戦果を交えたが、勝敗は銃の性能が左右したといっても過言ではない。展示されている、戦国時代から使われている「火縄銃」と、旧幕府軍が装備していた洋式の「ゲベール銃」。幕末史を変えた近代的な鉄砲や砲弾など、なかなか触れる機会のない史料に触れられるのも貴重だ。