日本酒の飲み比べに特化したサブスク「SAKEPOST」をご存知だろうか。株式会社FARM8が提供するポストに届く日本酒定期便で、地域の蔵人と全国の飲み手をつなぐプラットフォームになっている。2021年11月のサービス開始から1年半で多様な地酒をユーザーに届け続け、2023年3月末時点で累計100銘柄を超える日本酒を届けた。
同サービスは、届いた日本酒にスマホをかざして銘柄を確認したり感想グラフを作ったりする機能を備える。なかでもユーザーから人気が高い「酒蔵へPOST」機能は、飲んだユーザーが酒蔵の蔵人にダイレクトにメッセージを送れる機能で、2023年4月時点で累計5000件を超えるメッセージを各酒蔵へ届けている。
地方で地元に愛され続ける個性的で多様な日本酒、いわゆる「地酒」を全国の人に知ってもらうきっかけとして始めた同サービスだったが、知るだけでなく酒蔵との交流を通じて、「推し蔵」と出会えるプラットフォームとしても一役買い、今後もさらに多様性を追求したサービスとして展開を広げていくという。
「SAKEPOST」ってどんなサービス?
小容量の飲みきりサイズ100mlのオリジナルパウチに「地酒」と呼ばれる地域で愛され全国流通の少ないお酒が入り、飲み比べできるよう3銘柄(プランによっては6銘柄)の日本酒が毎月ポストに届く。パウチには日本酒自体の基本情報のみが記載されており、銘柄や酒蔵の情報は一切記載がない。先入観なくお酒を味わってもらい、パウチ裏面にあるQRコードから銘柄や酒蔵の情報が記載されたページにアクセスすることができる。
さらに、お酒を飲んで質問に答えるだけで飲んだお酒の感想を「みんなの感想」としてデータ化。自分の感想はこうだけど、他のみんなはどう思っている?など、お酒のイメージがグラフになって感想が見えるので初心者の人も安心してお酒の知識を向上していくことができる。そして、特に人気の高いコンテンツが、飲んだユーザーの声が直接酒蔵の蔵人に届く「酒蔵へPOST」機能だ。飲んだ感想を文章として酒蔵へ伝え、どんなおつまみと相性が良かったか、これまで飲んだことがない味わいだったなど、さまざまな声を届けられる。さらに、言葉としてコメントしづらい場合はスタンプ機能を使って酒蔵に想いを伝えることも可能。酒蔵は受け取ったメッセージに対して1往復だけコメントを返すことができ、ユーザーと蔵人が日本酒を通じてつながるプラットフォームになっている。
ユーザーコメントは集計して紙のレポートとして酒蔵へ
ユーザーから集まった感想グラフやメッセージは、集計して紙に印刷して酒蔵にフィードバックとして届けている。メーカーである酒蔵が消費者の声を直接聞く機会は少ないため、日々の仕事の励みや酒造りのヒントになれば、ユーザーと酒蔵をつなぐプラットフォームの役割が果たせるのではないかと思い、サービス当初からすべての酒蔵にフィードバックすることを続けている(2023年4月時点)。
【アンケート集計】
毎回ユーザーに4、5問の質問に回答してもらい、お酒の味や香りの感じ方、相性の良い料理、温度帯など、さまざまな回答を集計して、ユーザーがもつ銘柄のイメージをグラフ化したものを酒蔵に届けている。
【ユーザーからのコメント】
「酒蔵へPOST」機能を使って届いたユーザーのコメントを、居住地と年齢、性別などわかる範囲で集計。どんな人がどのような感情で楽しんでくれたか、お酒を飲むシーンまで蔵人に想像してもらえるようなコメントが多数で、パソコンやメールに慣れていない蔵人でも回覧して見ることができる紙媒体として酒蔵に届けている。
※以下は、酒蔵にフィードバックしているユーザーコメントレポートの一部抜粋したもの。
・おでんで飲みました(東京都・39歳)
・飲みやすく、おいしい(千葉県・50歳男性)
・初めていただきましたがすごく好きな味でした。ありがとうございます!(埼玉県・36歳)
・おいしかったです。ハムやプロシュートと一緒に飲みましたがとてもよかったです(北海道・43歳)
・飲みやすく、美味しかったです(愛知県・43歳女性)
・変な角が無く、スルスル飲め、常飲酒にしたい味。寿司、刺身は勿論、和食の様な繊細な料理と共に飲みたいお酒(東京都・33歳男性)
・いつでも飲める(東京都・56歳男性)
日本酒の多様性と出会いを楽しむプラットフォーム
30年前に比べて日本酒を楽しむ人が減っていると言われている昨今。たしかに大量にお酒を飲む人は減ったかもしれないが、少量飲み比べを通じて酒蔵の個性や地元で愛される理由、酒蔵の立地と環境による味わいの変化、蔵人等の個性など、さまざまな多様性と出会いを楽しむ人が増えているようにも感じる。ブランド化した人気銘柄だけが求められるのではなく、名もなき小さな酒蔵の地元で愛される地酒にもファンがつくような仕組みをつくるため、「SAKEPOST」は銘柄の先入観ではなく、ランダムに出会った酒と自分の感性にピントが合ったときに、少し酒蔵に近づけるようなプラットフォームとしてさらに発展していくことを誓っている。