初期作の武田信玄はアゴ髭がなく、貫禄十分の三重アゴとモミアゲが魅力?「信長の野望」シリーズに見る“武田信玄”グラフィックの変遷

2023年5月16日

現在放送中のNHK大河ドラマ「どうする家康」。5月7日放送の第17回、5月14日放送の第18回では“三方ヶ原の戦い”が展開され、2週に渡って徳川家康と武田信玄の激戦が描かれた。そんな本作の主演は徳川家康を演じる松本潤だが、織田信長役は岡田准一、武田信玄役は阿部寛と、著名な武将を演じる俳優陣の顔ぶれも豪華で、こちらも見どころのひとつとなっている。

変化は一目瞭然!ドット絵で描かれた『信長の野望・全国版』(写真右)と、『信長の野望・新生』(写真左)の武田信玄(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.


そこで本記事では、3月30日に制定された“信長の野望の日”に、同シリーズ最新作 『信長の野望 出陣』 を発表したコーエーテクモゲームスの協力を得て、武将グラフィックの変遷をフィーチャー!


2022年7月21日に発売されたシブサワ・コウ40周年記念作品『信長の野望・新生』の武将グラフィックと、1980年代に発売された初期作(PC版)のドット絵を見比べれば、40年の変化は一目瞭然。気になった方は大河ドラマと「信長の野望」シリーズを同時に楽しみ、武将たちの魅力を存分に堪能してみてはいかがだろう。

連載第4回で特集するのは「どうする家康」でも圧倒的な存在感を放ち、その風貌や、演じる阿部寛の過去の出演作と紐づけて、「ローマ人に見える」と話題になった武田信玄。他の武将の場合、歴史の研究が進むにつれてそれまでの定説がひっくり返り、ゲーム内のグラフィックも大きく変化する(今川義元の場合、マロ眉&公家風のルックスから、甲冑を着こなした凛々しいビジュアルに変化)ことがよくあるが、信玄に関してはほぼ一貫して、前立に金色の獅子を配した諏訪法性兜(すわほっしょうのかぶと)を被った姿で描かれている。

『信長の野望・大志』武田信玄(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.


そうしたなか、特徴的なのが第2作『信長の野望・全国版』(86年)の信玄で、本作のみ甲冑を脱いだビジュアルになっている。肖像画を参考にしたと思われるこちらのバージョンでは、以降のタイトルではお馴染みのアゴ髭が描かれておらず、ややマイルドな印象に。その分、ボリュームのある‟もみあげ”がインパクト抜群で、歴代のイラストを並べた際は、ひときわ目立つ1枚となっている。

『信長の野望・全国版』武田信玄(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.


また、兜に注目すると、ほとんどの作品では白色の毛(インドなどの高地に生息するウシ科の動物・ヤクの毛)があしらわれているのに対し、第4作『信長の野望・武将風雲録』(90年)と第6作『信長の野望・天翔記』(94年)では、赤い毛があしらわれている。「どうする家康」では、息子の武田勝頼が赤毛の兜を被っており、父子が並び立つシーンでは、それぞれの兜の色味がコントラストになっていておもしろい。

『信長の野望・武将風雲録』武田信玄(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.


それともう1点、信玄といえば、“川中島の戦い”で上杉謙信と対峙した際、謙信の太刀を軍配で受け止めたエピソードが有名だが、それを反映してか第15作『信長の野望・大志』(17年)、第16作『信長の野望・新生』(22年)では、イラストにも軍配を手にした姿が描かれている。これにより、信玄の‟軍略家としての側面”が強調され、初期のイラストとは趣の異なる雰囲気になった…というところも、注目してほしいポイントだ。

『信長の野望・新生』武田信玄(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.


「どうする家康」においても、絶対的な強者として家康の前に立ちはだかり、視聴者に強烈な印象を残した武田信玄。それに応じて「信長の野望」でも、信玄にクローズアップしたエピソードや、新たなグラフィックが追加されるかも(!?)しれないので、そうした点にも注目しながらドラマを視聴するのもおもしろそうだ。


取材・文/ソムタム田井