「今でもキミを探している…」人懐っこい黒猫との出会いと別れを描いた実話「あの日を一生忘れない」【作者に聞く】

2024年1月25日

この話は20年前に出会った黒猫のクロちゃんとの出会いから別れまでの2年間の物語である。その猫との出会いは、引っ越し翌日に突然やってきた。玄関から猫の鳴き声が聞こえ、 ドアを開けるとそこにはチョコンと座ったかわいい黒猫がいた

赤い首輪をしたクロちゃんは誰に飼われているのか…?


赤い首輪をしたちょっぴり太めの黒猫は、翌日もその翌日も、そしてさらに翌日も…食べ物を与えていないのに毎日ドアの前にやってきた。人慣れしており毛並みはツヤツヤ、うれしいことにモフモフし放題の黒猫の名前は“クロちゃん”というらしい。クロちゃんは現在2軒のお宅で世話をしてもらっている元野良猫だった。驚くほどの人懐っこさで、主人公を含め近隣の住民や訪れる営業マンたちを骨抜きにしていく。

突然のかわいい訪問者に戸惑うteruteQ(@teruteQ)


そんなクロちゃんがいる日々が続くと疑わなかった2年後、別れの日は突然やってくる…!!この実話をベースとした漫画を描いたのは、teruteQ(@teruteQ)さん。今回紹介する本作は漫画作品だが、普段はげっ歯類のチンチラ(ねずみ)をモチーフとした“チンチライラストレーター”として活動中だ。「クロちゃん」について詳しく話を伺うと同時に、“チンチライラストレーター”の活動内容についても聞いてみた。

クロちゃんのおうちは間違いなく、ここだ!teruteQ(@teruteQ)


――本作「クロちゃん」はteruteQさんが実際に体験した実話なんですよね?

はい。漫画なので楽しく読んでもらうための脚色はしていますが、ベースは実話です。引っ越し翌朝の出会いから別れまでを描きました。おばあちゃんの「クロをお願いね」と言った姿は今でも鮮明に覚えています。

――クロちゃんは人懐っこい猫ですね。

そうなんです。当時住んでいた地域は、野良猫が多くて世話をしているご家庭が何軒かありました。なので人間に慣れてる猫はほかにもいたんですが、するりと人の懐に入り込んでくる猫はクロだけでした。

――teruteQさんは猫ではなく、チンチラを飼われていたんですよね。お名前や出会いについて教えてください。

げっ歯類のチンチラで、名前は「Q」と言います。パイドという白毛にうっすら灰色が入っているチンチラです。自転車で道に迷った先のペットショップで出会いました。店員さんに“人に懐かない子”と言われましたが、かわいい顔に相反する凛としたその姿は孤高の存在に思えて一目惚れしてしまいました。それまで動物を飼ったことがなかったのですが、今決めないと私は一生動物を飼うことはないだろうとまで思えて、その場で即決しました。

こちらが壁を作ろうがクロちゃんはお構いなし!人が大好きで自らスキンシップを求めてくるteruteQ(@teruteQ)



――Qちゃんの性格は?

Qはお嬢様気質で気に入らないと私にオシッコをかけて抗議してきます。でもすごくいい奴なんですよ。好き嫌いが激しくて好奇心旺盛。飼っているというより手のかかる同居人みたいな位置付けでした。このままずっと一緒に暮らせればと思っていましたが、当初から身体に問題があり、願いは叶わず2歳を待たずして虹の橋を渡ってしまいました。作家名のteruteQは、これからもともにQと歩むと決めて改名しました。私の決意です。

――現在はチンチラのイラストレーターとして活動されているんですよね。

はい。4年前にある事情から創作活動を始め、30年ぶりに漫画を描きました。そのことを機にSNSも始めました。iPadで絵を描くことも初めてで、クロちゃんの漫画はその頃に描きました。現在は「チンチライラストレーター」として活動しています。活動内容は主に不定期でSNSへのイラスト投稿と、そのイラストを用いたグッズの販売です。ウチの子(チンチラ)のイラスト依頼の仕事もしているのですが、2025年まで埋まってしまっているため現在は受注を停止しています。あとは年に一度のチンチラ最大のイベントに出展するためのハンドメイドグッズの制作などもしています。漫画投稿は年いちぐらいかな。たくさん描きたいけれど、歳のせいか気力と体力が追いつかないのが現状です。

現在teruteQさんが描いているチンチラのイラストteruteQ(@teruteQ)


――今後の漫画の新作の予定やイラスト活動について教えてください。

現在、3月から4月にかけて予定している漫画があって、それは絶対に描きたいと思っています。この先どれぐらい描き残せるか定かではないのですが、描き続けていたいですね。クロとQが繋いでくれた私の創作活動を応援してくれるフォロワーさんたちへの感謝の気持ちとともに。

クロちゃんとの最後の日の出来事を作者はいつまでも忘れることができないteruteQ(@teruteQ)

幼い頃の家庭環境のせいで動物と距離を取っていた作者。その凝り固まった心を、やさしく溶かしてくれたのはクロちゃんだった。クロちゃんと作者との別れが突然だったように、犬や猫をはじめとする動物との別れは突然やってくることが多い。それまで普通に抱きしめて感じることのできていた小さなぬくもりを失った日の喪失感や悲しみは、何年経っても消えることはないが、同じ分だけ一緒に過ごした日々の思い出もやさしく色あせないことだろう。

取材協力:teruteQ(@teruteQ)