いつの頃からか、猫の特徴を表す言葉として使われるようになったフレーズ「猫は液体」。その体のやわらかさでどんなところにも滑り込む姿はまさしく液体のようだが、文字通り「液体の猫」が存在したら――!?
林場琉賀
(@hayashiba8848)
さんの創作漫画「自販機で水を買ったら猫が出てきた話」は、女の子が自動販売機でペットボトルを買ったら、その中身が液体状の猫だったというところからはじまるシリーズ作品だ。やわらかいを通り越して不定形に体を変化させるその姿に、友人からは「絶対猫じゃないと思うんだけど」とツッコまれる謎だらけの「水猫」。けれど、主人公の女の子は「猫だよ~」と喜び、不思議な猫を飼い始めてからの日常を描いている。
ウォーカープラスでは作者の林場さんに、同作のアイデアや作品制作で意識しているポイントについて話を訊いた。
「本当に液体な猫がこの世に存在していたら」たとえから生まれた水猫
――自動販売機から出てきた水猫への驚きの一方、それでも馴染んでいく猫と取り巻く人々の姿に親しみを感じます。本作のアイデアが生まれたきっかけを教えてください。
【林場琉賀】液体猫の着想はもちろん、「猫は液体」という言葉です。この言葉はもちろん比喩表現の一種ですが、「じゃあ本当に液体な猫がこの世に存在していたらおもしろいのではないか?」ということで始まったのがこの水猫シリーズです。ちなみに、この作品での水猫ちゃんは猫なのか液体なのかわざと定めていません。
――「猫は液体」が元になったという言葉通り、なんともふにゃっとした水猫のキャラクターがユーモラスです。どんなイメージで作られていったのでしょうか?
【林場琉賀】元々顔がぷくぷくで毛玉みたいな、かつ足の短い猫が好きで……。マンチカンとか、気づいたらそんな猫ばっかり見たり追ったりしていたのが影響したのか、自分の描く猫は餅みたいなフォルムが多めです。その頃は「マスコットみたいだな」と思って、2021年頃に猫の登場する漫画として「恐怖?呪いのマスコット人形」という作品を制作しました。そのマスコット猫の雰囲気を、水猫ちゃんは受け継いでいる感じだと思います。
水猫自体も一応フォルムなどはマンチカンを参考にして描いていたので足が短めです。液体の一面も持っているので伸びますが。後は液体の一面も見せるために、表面張力といった水で見られる現象をあらためて調べたりして参考にもしています。
――本作の中で林場さん自身がお気に入りのシーンを挙げるならどこですか?
【林場琉賀】#3の1ページ目3コマのあり得ないくらい伸びているシーンでしょうか、「まあ液体だからこのくらい伸びるか」や「伸び過ぎ」とか「うちの猫はこのくらい伸びることがある」とかいろいろな感想を持たれそうだな、と思いながら描いていました。この作品の猫は液体でもあるためいくらでも誇張した表現ができますが、たまに誇張を超えている写真がSNSなどで流れてくると「やっぱ猫は液体なんだなぁ」と思ってしまいます。
――「魔女とオナベと○△□」など、pixivに掲載されている林場さんのほかの作品と比べると本作は作風が少し異なるような印象を受けました。本作を描く上で意識した点や、普段と違うアプローチや挑戦をしたということがあれば教えてください。
【林場琉賀】本作品は最初はSNS用に制作していたので、どのようにしたら見てもらえるか、入りやすいかをとにかく考えて組み立てていきました。やはり色が付けば華やかで目に留まるだろうかとコマ周りに水色を使ってみたり、4コマでサクサク読めるようかつゆるく連作になって一括りになるようにしたりと「何より気負わず軽く読めるように」を意識して制作しました。
特にキャラビジュアルに関しては、水猫がキュルキュルした猫の顔ではない分、飼い主の女の子をかわいく描いて差をつけてキャラクターを立たせることを意識しました。どちらも別々の違ったかわいさがあっていいコンビになったのではないかと思っています。
――林場さんのX上ではpixivにはまだ掲載されていないのお話も公開されています。今後も本作の続きは描かれていかれますか?
【林場琉賀】今現在はほかの漫画制作などがあってなかなか手を付けられていないのですが、続きはぜひ描きたいと思っています。たとえば、水猫ちゃんが自販機に至るまでの流れは実は冒頭の自販機のシーンまで長くなってしまったので丸々カットしていたりと、とにかく用意していた展開やまだまだ描けそうなネタはたくさんあります。どうか気長に待っていただけると嬉しいです。過去作品はpixivの水猫シリーズ、最新まではXで#日曜日の水猫で検索していただければ見ることができますので、ぜひ広げていただけるとうれしいです!
作品を見てくださっている人は感想などもお送りいただきいつもありがとうございます。また、この記事で知った方には、この作品の他にもpixivで公開している読み切り作品などももし興味があればぜひお読みいただければと思います。人と、人じゃないものたちの日常のドタバタが好きです。
取材協力:林場琉賀(@hayashiba8848)