大好評の「謎肉祭」。ユニークな名づけの裏側
カップヌードルで忘れてはならないのが具材だ。なかでも印象的なのは旨みがギュッと詰まったサイコロ状の具材「謎肉」ではないだろうか。発売当初から入っている具材で、長らく原材料は明かされていなかったが、2017年にその全貌が突如発表された。
「謎肉は、肉と大豆由来の原料に、野菜などを混ぜて味付けしたものです。正式名称は『味付豚ミンチ』といいますが、いわゆる『大豆ミート』の一種ですので、今話題の“代替肉”のはしりと言えますね。2016年には、カップヌードルの発売45周年を記念して、謎肉をたっぷり入れた『カップヌードル ビッグ 謎肉祭』という商品を発売しました。実はこの商品、開発段階では『ミートショック』というネーミングで売り出そうとしていたんですが、若い世代にはSNSを中心に“謎肉”の愛称で親しまれていたこともあり、日清食品の社長から『思い切って“謎肉祭”にしよう』と提案があったことで、この名前になりました。2016年以降、発売するたびに好評をいただいているので、『謎肉祭』という名前にして良かったと思います(笑)」
また、神奈川県横浜市のみなとみらいにある「カップヌードルミュージアム 横浜」では、通常サイズのカップヌードル約35個分の謎肉が入っている「謎肉丼」が数量限定で販売されているので、謎肉祭でも足りないという人はぜひ一度食べてみてほしい。
「ちなみに『カップヌードル シーフードヌードル』に入っているタコのような具材がありますが、あれはイカなんですよ」と白澤さん。ただ、その色合いから「あれはタコ」と認識している人がとても多いという。2020年のリニューアルでは、イカのような味わいと食感が楽しめるかまぼこ具材「ほぼイカ」が加わるなど、謎肉以外にもユニークな具材がたくさん登場している。
「カップヌードルであふれる世界に」日清食品の挑戦
昔ながらの味を大切にしている一方で思わず目を引く奇抜なプロモーションを実施したり、一見すると振れ幅が大きいと感じるカップヌードルだが、その理由はロングセラーブランドならではの戦略であるという。
「直近では5年連続過去最高の売り上げを記録しています。慣れ親しんだ麺やスープなど、お客様にとっての“安心感”を大事にしながらも、ブランドとして鮮度を保つために革新的なプロモーションを展開していきたいと考えています」
2021年には「即席麺だけでない世界観を作る」というコンセプトのもと、ファッションブランドや雑貨ブランドとのコラボレーションを実現させるなど、インスタント食品というジャンルの枠を大きく飛び越えたプロモーションを実施している。
「現在、即席麺のユーザーは約7割が男性です。カップヌードルのユーザーには女性も多いものの、即席麺には未だ『手抜き』というイメージが残っていたり、『周りの目が気になり、なんとなく食べづらい』と感じていらっしゃる方も多いんです。それらを払拭するために、ファッションアイテムや雑貨などお客様の身の回りにある商品と積極的にコラボレーションすることで、カップヌードルをもっと身近に感じていただきたいと考えています」
最後に「商品はもちろん、CMやその他のコラボグッズまで、カップヌードルがみなさんの回りにあふれるような世界を作っていきたいです」と語ってくれた白澤さん。誕生から50年以上経った今もなお、変わらない味とチャレンジ精神を提示し続けてくれるカップヌードル。今後の挑戦からますます目が離せない。
取材=越前与
文=西脇章太(にげば企画)