にぎり寿司よりも歴史が長い!再ブレイクを狙う高知県の郷土料理「こけら寿司」ってどんなもの?

2022年10月21日

「寿司」と言えば、一般的に「江戸前寿司(にぎり寿司)」をイメージする人が大半だと思うが、世間に浸透したのは明治30年代以降と言われている。

それより前に誕生していたのが、高知県の郷土料理「こけら寿司」だ。江戸時代の1860年以上前にはあったというこけら寿司は、高知県ではしばらくの間、祝い事や神事、冠婚葬祭、出産祝い、還暦祝いといったハレの日に口にする慣習があったそう。

しかし近年では、高知県でこけら寿司を作る家庭が激減。そんななか、この食文化を消滅させないためにと、高知県にある「こけら寿司のこけら屋総本店」が立ち上がり、当時の味を完全復活させて2022年8月より店頭・通販での販売をスタート。そのかわいらしい見た目から、静かに再注目を浴び始めている。

今回は「こけら寿司」の歴史と特徴について、「こけら寿司のこけら屋総本店」の担当者に話を聞いた。

高知県では「江戸前寿司(にぎり寿司)」よりも親しまれた歴史を持つ「こけら寿司」


こけら寿司の米の硬さは「投げても壊れんくらい」

「こけら寿司」とは柚子を使った酢飯に焼きサバのほぐし身を混ぜ込み、シイタケ、ニンジン、錦糸卵などの具材を乗せて、四角い木枠に酢飯と具材を何層にも重ねていく押し寿司。3升の米に対して30キロ以上の重しで押さえ、「投げても壊れんくらい」に硬く仕上げ、酢飯の食感・味を楽しむものだ。

「現在のお寿司の原型となる、お酢と塩で味付けをした『早ずし』は、江戸時代中期の1700年代前半頃に誕生しました。続く1860年代に、高知県で『こけら寿司』が誕生しました」

こけら寿司を小皿にのせて各個人に配る際、2段重ねにして皿にのせることに“喜びを重ねる”という意味が込められており、それがめでたい日にこけら寿司を食べる理由なんだそう。

「しかし明治30年以降に製氷産業が盛んになり、漁法や流通の発展と相まって、これまで生の刺し身が扱えなかった寿司屋もネタを氷で冷やして保存できるようになりました。煮切り醤油をネタに塗って出す、今では一般的な『江戸前寿司(にぎり寿司)』は、この時代に確立されたスタイルです。つまり、高知県では江戸前寿司よりもこけら寿司のほうが長く親しまれていたのですが、江戸前寿司がメジャーとなり、残念なことに近年ではこけら寿司を口にする機会が激減。しかし“郷土料理”として引き継いでいくために、こけら寿司を復活させ、販売をスタートさせることにしました」

柚子酢を混ぜたご飯とシイタケ、ニンジン、錦糸卵などを重ねていく

硬めに炊いたお米をベースに、30キロ以上の重しで押さえつけて作る

「投げても壊れんくらい」の固さが特徴


復活のきっかけは他府県から訪れた友人の言葉

担当者によれば、販売をスタートすることにしたきっかけは、他府県から訪れた友人の言葉だったという。

「友人が他府県から高知に遊びに来た際、高知駅の観光案内所で見つけた観光案内のパンフレットに載っているこけら寿司の写真を見て『これが食べたい!』と言い、食べられるところを探してみましたが、見つからずじまい。それ以来、こけら寿司の歴史を調べ、地元のお年寄りからいろいろと教わるなどして勉強を重ねたうえで、こけら寿司の復活と高知県の伝統文化の継承するための意義が芽生えました。こけら寿司を製造・販売できるようになるまでの時間と苦労、労力は並ではなかったですが、こうして高知県の伝統が失われず、継承していけることに誇りを持って進めていきたいと考えています」

「こけら寿司のこけら屋総本店」が販売するこけら寿司


復活を遂げたこけら寿司を筆者も実際に食べてみたが、まずニンジン、シイタケ、錦糸卵の色合いがかわいらしく、ほんのり香る柚子酢のスキッとした香りに食欲がそそられる。ひと口食べると硬いシャリの食感にまず驚いたが、強く噛み締めると、焼サバの旨味、出汁のきいたシイタケ、柚子酢の風合いが口いっぱいに広がり、クセになるような味わいだ。

柚子酢の爽やかな香りに食欲をそそられる

見た目のかわいさに反してかなりシャリが固いが、そのギャップがいい!

焼いて食べるのもおいしい食べ方なんだそう


特別な日でも日常でも食べてほしいこけら寿司

実際にこけら寿司を食べてみると、このかわいい寿司を囲んで賑やかにハレの日を過ごす古き良き高知県の人たちの風景が目に浮かんでくるように感じた。その一方で、筆者個人的にはその親しみやすく優しい味わいから、むしろ日常的に食べたくなる味でもあった。

最後に、まだこけら寿司を口にしたことがない人へのメッセージをもらった。

「高知県では、昔から冠婚葬祭には『皿鉢』(さわち)という大皿においしいおかずをたくさん盛り付けたものを食べる習慣がありますが、その際に食べるご飯はやはりこけら寿司でした。高知県以外の全国の方にも、冠婚葬祭など大勢の人が集まる際にこけら寿司を食べていただきたいと思っていますが、まずはぜひ一度ご賞味いただければうれしいです」

こけら寿司は今も高知県・東洋町の郷土料理として引き継がれ、毎年1月には地元でこけら寿司を振る舞う「こけらまつり」が開催されている。華やかなビジュアルに爽やかなおいしさのこけら寿司。ぜひ全国への進出も期待したい。

高知県民はもちろん、全国の人に食べてほしいおいしさだ


取材・文=松田義人(deco)

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