大人気のあまり2作目『技』が登場!
この『キン肉マン「超人」』は出版社の垣根を越えた珍しい企画として、発売前からSNSや口コミで大きな話題となった。特にコアなキン肉マンファンからの待望はとても熱く、驚きと期待にあふれた声がたくさんあがった。
「発売前からファンの喜びの声が集まり、とてもうれしかったです。図鑑にはアンケートハガキが入っていたのですが、普通の図鑑に比べても圧倒的な枚数のハガキが届きました。ハガキいっぱいに感想をびっしり書いてくれる読者も多かったです。『こんな図鑑が実現するとは』『出版してくれてありがとう』という感謝の言葉が多く、とてもびっくりしました」
学習図鑑は一般的に年間を通して安定的に売れる書籍のため、爆発的に売れるということはあまりないそうだ。しかしこの図鑑は初版10万部が発売3カ月でほぼ売り切れ状態に。図鑑とは思えない瞬発力ですぐに在庫切れとなる人気作となった。
そんな本作の人気ぶりを受けて、2022年9月に発売したのが2作目の『キン肉マン「技」』だ。キン肉マンの醍醐味といえば、リング上での超人たちの技の掛け合い。しかし1作目では個体を網羅することで精一杯で超人たちの技に触れることができなかったため、2作目では技を中心に取り上げて図鑑にまとめることになった。
「1作目刊行の完成打ち上げの時に、嶋田先生に『今度は技の図鑑を作りませんか?』と提案すると、『いいですね!やりましょう』と返事をいただいて企画が実現しました。しかし企画が動き出した当初、技といえば動きが中心で紙面にどのように載せたらよいかわからずに苦戦し、制作に2年以上もかかってしまいました」
そんな折、1冊目の図鑑について作画担当の中井義則氏から「キン肉マンの教科書になるね!」とコメントをもらったことをヒントに、「教科書を参考にしてみたらどうだろうか」と思いついたという。体育の実技教科書を参考にし、技をかけて決まるまでの連続写真的なレイアウトに落とし込んだ。その結果、すべての技が躍動感のある動きの図鑑になった。
「超人たちの強さの象徴である技を打撃技、投げ技、打ち付け技、超人技など9項目に分類しています。体育の教科書を参考にしたおかげでとても動きのあるページになりました。2作目は『永遠に読んでいられる』『時間を持っていかれる』という意見を多くいただきました。2022年秋に発売して7万部が売れるなど、出だしも順調です。読み応えも抜群なのでぜひ手に取ってみてください」
大人も子供もワクワクできる図鑑作りを
芳賀さんの担当した学研の図鑑シリーズにはもう1作、『キン肉マン「超人」』と『キン肉マン「技」』の間に制作された『スーパー戦隊』がある。これは1作目が話題になっていた時期に他作品やシリーズのファンから「キン肉マンのファンはこんな図鑑を作ってもらえてうらやましい」といった声があがったことを受けて、「ほかの作品でも同じように図鑑を作ったらおもしろいのでは?」と企画をしたのが始まりだ。
「古くからの知人がスーパー戦隊の制作業務をしていたこともあり、スーパー戦隊で図鑑を作れないかという相談をしたところ、快く東映株式会社さんと繋げてもらえました。この図鑑は、放送順ではなく組織でまとめています。スーパー戦隊には世界組織や民間組織、侍・忍者などの伝統的な組織が出てくるため、このカテゴリで分類を行いました」
『スーパー戦隊』もSNSで話題となり、ファンの間で人気を博している。現段階では『学研の図鑑シリーズ』で制作が決定している続編企画はないそうだが、芳賀さんは「これからも昔ながらの学研の図鑑のテイストが合う、懐かしい作品の図鑑を作っていきたい」と話す。昭和や平成に活躍した懐かしのヒーローたちが図鑑になる日も近いかもしれない。
「図鑑とは、収集した情報を分類して掲載している書籍です。自分の好きなものを分類して追求していくというアプローチは、まさに科学そのもの。現実のものであれフィクションであれ、好奇心と探究心を持って追求をしていくのが子供にも大人にも大事だと考えています。これからもドキドキをワクワクを提供できる図鑑を作り続けたいです」
学研の図鑑といえば、6つの丸があしらわれた表紙デザインを思い出す人も多いのではないだろうか。『キン肉マン「超人」』や『キン肉マン「技」』、『スーパー戦隊』が昔の学研の図鑑をリバイバルしたデザインになってるのは、大人が懐かしい気持ちに浸り、童心に戻って好奇心や探究心を持ってほしいとう気持ちが込められている。
これからも大人も子供も楽しめる図鑑を作ってくれるだろう。次回作が今から楽しみだ。
取材・文=越前与