新生活が始まった人も多い季節、暮らしの中でSNSを活用する機会も増えているのではないだろうか。欲しい情報がすぐに手に入るインターネット生活はとても快適だが、過去に検索したことに関連する情報がSNSの広告として出てくる体験をした人も多いはず。「私の検索ワード、知られてる…?」と驚く反面、「こんなブランドや商品があったのか」と、新しいものとの出合いやお得な情報を手に入れることもできる。だからこそ、一概に「不安なもの」とは言えないのがSNS広告だ。
では、驚くことなく安心して自分の欲しい情報を得るための方法はあるのだろうか。今回はSNS広告の謎と、上手な活用方法について、FacebookやInstagramなどを運営するMeta社の日本法人・Facebook Japanに話を聞いた。
どうしてSNSに自分好みの広告が出てくるの?
話を聞いたのは、Facebook Japan 公共政策部長の小俣栄一郎さん。まず、FacebookやInstagram上に自分好みの情報が広告として流れてくるのはどういう仕組みなのだろうか。
「広告が表示される理由については、基本的な利用者層データ、趣味・関心、ウェブサイトの訪問履歴といったさまざまな要因があります。ただし、利用者とビジネスをする側の双方にとって、より良い体験を提供することが大前提です。皆さんの好みに合わせて表示される『パーソナライズ広告』では、企業側はリーズナブルなコストで事業に関心を持ってもらえる可能性の高い顧客にリーチすることができますし、利用者はご自身の興味・関心に合わせて新しい情報の発見ができるんです」
では、FacebookやInstagramで表示される「パーソナライズ広告」とはどんなシステムで表示されているのだろうか。
「Meta社が提供するパーソナライズ広告は、利用者がフォローしている人や『いいね!』をした投稿などのアクティビティのほか、登録情報をもとに、それぞれの興味や関心に沿った広告をFacebookやInstagramで表示しています。そうすることで、利用者が自身の力では出合うことができなかった、好みに合った新しい商品やサービスを発見することができるので、パーソナライズ広告は利用者にとってより良い体験を提供するものだと考えております」
特に、手軽に写真とコメントが投稿できるInstagramはビジュアルが重要なだけに、目に飛び込んでくる広告のインパクトも大きい。
「Instagramは特に、友人や家族をフォローするだけではなく、“利用者の90%が何らかのビジネスアカウントをフォローしている”というデータがあります。例えば、料理が好きな人は料理研究家やレストラン、食品会社のアカウントをフォローするなど、興味や関心にまつわる情報であれば、さまざまなアカウントを見ていらっしゃるんですね。逆に言うと、興味さえあれば情報を発信しているのがビジネス系のものであっても、分け隔てなくオープンに受け取っているということになります」と、小俣さんは利用者の傾向を分析。
ということは、自分の好きなものや興味のある分野に対してのパーソナライズ広告は、日々、特に違和感を持たずに見てしまっているということだ。それなら、もっと自分から欲しい情報を取りに行くことはできないのだろうか?
パーソナライズ広告を「本探し」で疑似体験!
Facebook Japanは、2023年1月に代官山 蔦屋書店(代官山T-SITE)の協力のもと、「Meta Bookstore」というパーソナル広告の仕組みを疑似体験できるポップアップイベントを開催した。
「このイベントは書店のコンシェルジュに自分の好みを伝え、新たな本に出合う体験になぞらえて、一人ひとりの興味や関心に合わせたパーソナライズ広告を通じて新しい商品やサービスを見つける仕組みを疑似体験していただくというものです。私たちはプライバシーを保護しながら、利用者の興味・関心に合わせてパーソナライズされた広告を提供することで、利用者が新しい商品やサービスと出合うサポートをしたいと考えています。パーソナライズ広告のこうしたよいところや、利用者がご自身のプライバシーや広告を管理していただくための機能について、より親しみやすく楽しく学んでいただけるよう、利用者への啓発活動の一環として今回のポップアップイベントを開催しました」
イベント当日は、会場で広告の管理機能について説明したガイドブックを配布。来場者はスタッフのレクチャーなどを受けながら、自分にぴったりの情報を発見するためのSNS活用法を身につける体験をした。
まず、自分のスマートフォンで「特設サイト」にアクセスすると、「お気に入りの一冊に出会うために、まずは読みたい本についてあなたの好みを教えてください」と問われる。スクロールしていくと、アート、車、音楽、スポーツ、料理、ファッション、建築・デザイン、旅行の8つのカテゴリーが登場。その中から好きなものを選ぶと、続いて「注目の一冊」、「不屈の名作」、「生き方のヒントになる一冊」という3つの項目が表示される。どれか1つを選択すれば、蔦屋書店のブックコンシェルジュが選んだ、今の自分にぴったりな本が紹介されるという楽しい仕組みだ。
この一連の流れでポイントになるのが、「自分の好きなものを選ぶ」という作業。つまり、“こんな本を読みたい”とコンシェルジュに伝えることが「いいね!」を押す作業であり、コンシェルジュが探してくれた“その人に合う本”がSNS上に表れるパーソナライズ広告というわけだ。
「Metaが提供するパーソナライズ広告は、利用者一人ひとりの興味や関心に合わせてFacebookやInstagramで広告を表示する仕組みとなっています。これは、コンシェルジュに伝えた情報をもとに自分にぴったりの本と出合う体験を、パーソナライズ広告を通じて新しい商品やサービスと出合う仕組みになぞらえているんです」
イベント開催期間の3日間で、オンライン含め約1200名が広告体験コンテンツを体験。そのうち700名以上が実際に現地に足を運んだそうだ。小俣さんは「これは予想を上回る結果でした。ご来場いただいた方々からは、『なぜその広告が表示されるかを考えるきっかけになった』や『知らない機能を教えてもらえて、新しい発見があった』などの感想をお寄せいただいたんです。このイベントを通して、広告が配信される仕組みや、自身のプライバシーや広告を管理するための機能について利用者の皆さまに学んでいただきたい、という本来の企画意図を伝えられたと感じています」と振り返る。
「広告設定」の見直しで自分に合った広告を表示させよう
当日、会場では、本を探すだけではなく「ご自身のFacebookやInstagramのアカウントの広告設定を見直していただきました」と小俣さん。広告設定の見直しとは、どんな広告トピックが自分のアカウントに紐付けられているかを確認し、自分にフィットしていない広告トピックの表示を減らす作業だ。
まずは、各SNSの「設定」から「広告」、「広告トピック」へと進んでいくと、「いいね!」などのアクティビティに基づいた広告トピックが紐付けられていることがわかる。自分に合わないものは「表示を減らす」にチェックを入れると、その後の表示が減っていく。逆に、欲しい情報にまつわるワードで検索すれば、広告トピックを探すことさえできるのだ。これこそが、自分で広告を選び、欲しい情報を積極的に取りに行く秘訣だと言える。
最後に小俣さんは、パーソナライズ広告を活用し、よりよいSNSライフを送ることについて言及。
「私たちは、プライバシーや広告表示について透明性高くお伝えし、ご自身で管理していただくための機能の提供や啓発に注力しています。もし必要ない広告が表示されても、サイトの右上にある『…』をタップして『この広告が表示されている理由』を確認することができますし、利用者がご自身の興味関心に合っていないと感じる広告の表示頻度を減らせるよう『広告トピック』の設定を利用者自身でしていただけるシステムになっています。また、表示された広告に興味がない場合には、広告を非表示にすることもできるんです。Metaのミッションは『コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する』こと。人々が親しい友人や家族とつながり、コミュニティに参加し、好きになる可能性のある新しいものやことと出合い、ビジネスを成長させるための製品やサービスを提供しています。パーソナライズ広告は、受け取る人によって表示される広告がまったく違います。利用者の皆さんには、ご自身のプライバシーや広告設定について、定期的に確認していただくとともに、ご自身に合った広告体験を通して、新しい発見を楽しんでいただきたいと思っています。今回のようなポップアップイベントをはじめ、利用者に私たちの取り組みや機能について知っていただく機会を、今後も設けていきたいと思います」
なお、「Meta Bookstore」は2023年12月末までオンラインサイトで体験可能。次に読む本に悩んでいる人は、ぜひ「Meta Bookstore」で検索し、自分好みの情報を積極的に取りに行ってみてはどうだろう。流れてきたSNS広告をただ受け身で眺めるのではなく、広告とうまく付き合う方法を知って、新しいモノや情報との出合いを楽しんでみては?
取材・文=田村のりこ