日本独自の小売システムを確立したコンビニエンスストア(以下、コンビニ)。その構想が本格的に始まったのは今から50年前、1973年のことだったという。
当時の日本は高度経済成長期だったこともあり、スーパーマーケットが定番化された時代。そんななか、“あえての小型店”で勝負をかけたのが、今では大手コンビニチェーンとして名高い「セブン-イレブン」だ。以来、大型スーパーマーケットを凌駕する支持を得て、日本における画期的なビジネスモデルになったことは誰もが知るところだろう。
そんな「セブン-イレブン」は、2024年で日本1号店の開業から50周年を迎える。この記事では、「セブン-イレブン」の50年の歩みについてご紹介!
「既存中小小売店の近代化と活性化」を掲げ、東京・豊洲に誕生
冒頭でも触れたとおり、「セブン-イレブン」が日本に誕生することになった1970年代前半は、“大きいことは良いことだ”“大きな資本を背景にしたスーパーマーケットなどの大型小売店に、中小の小売店が勝てるはずがない”という風潮があった。
そんななか、流通の先進国・アメリカで約4000店の小規模店を展開していたサウスランド社(現:7-Eleven,inc)と提携する形で、1973年に「セブン-イレブン」を運営する会社・ヨークセブン(現:セブン-イレブン・ジャパン)が設立された。
「セブン-イレブン」があえての小型店で小売業界に勝負をかけたのには、理由があった。同時期に登場したスーパーマーケットのような大型小売店は、ときに、それまで地域に根付いていた小型小売店を食い潰すことも少なくなかったそうだ。こういった現象に対し、「セブン-イレブン」は「既存中小小売店の近代化と活性化」を掲げ、それまでに地域に根付いていた小型小売店を、フランチャイズなどによって近代化させる取り組みを目指した。
1974年、東京・豊洲に開店した「セブン-イレブン」第1号店もフランチャイズ店だったが、当時は不安が大きかったという。コンビニエンスストアのフランチャイズ展開は前例がなく、反対意見もあったのだとか。
しかし、創業の理念である「既存中小小売店の近代化と活性化」を貫き、江東区・豊洲にフランチャイズによる1号店をオープン。果たして人が来るのか、不安を抱えながらの開店だったが、朝から雨という悪天候にも関わらず多くの人が来店したという。オープンにあたって配布したチラシには「便利で重宝なお店」という謳い文句と、「いつでもすぐ買える」「なんでも揃っている」「お手軽な食べ物をお好きな時に」といった特長を記載し、コンビニというものが知られていない当時ならではの告知で、「セブン-イレブン」の存在とその便利さを伝えた。
ちなみに、1号店で初めて売れた商品はサングラス。開店当日、朝6時半過ぎに「セブン-イレブン」1号店を訪れた男性客は、レジカウンターの近くにあったサングラスを購入。アメリカの「セブン-イレブン」の売れ筋商品の1つだったサングラスが、日本の「セブン-イレブン」でも初めて売れた記念すべき商品となった。
実はコンビニおにぎりの「ツナマヨネーズ」や「おでん」の先駆け
「セブン-イレブン」1号店オープンから2年後の1976年には、東京・神奈川・埼玉・千葉・福島・長野といった関東エリアを中心に100店舗を出店。瞬く間にその名が広まっていった。オープン当初、「セブン-イレブン」で人気だったのは、アメリカ式のサンドイッチやハンバーガーといったファストフード。一般流通商品と合わせて販売し、支持を得たという。
さらに1978年には、食べる直前に自分で海苔を巻く「手巻きおにぎり」を考案。1979年には、後のコンビニ惣菜の代表格となる「おでん」の販売もスタートした。
1970年代当時、家庭のおにぎりはご飯を握った後に海苔を巻く「直巻き」がほとんどで、海苔がしっとりとしたものが主流だった。そこで、「セブン-イレブン」では食べる直前に自分で海苔を巻く手巻きおにぎり「パリッコフィルム」を考案。発売当初の販売数は1日2~3個ほどだったが、パリパリとした食感が話題となり、家庭のおにぎりとは違うコンビニならではのおにぎりとして徐々に定着した。その後、1984年にはパラシュート式手巻きおにぎりを開発し、おいしさを追求した末の工夫によって、おにぎりは“作るもの”から“買うもの”へと変化していったという。
そして、“家庭の味”として親しまれていたおでんを手軽に食べられるファストフードとして販売したのは、実は「セブン-イレブン」が初めて。創業して間もなく、関東エリアの一部でテスト販売を開始し、1979年におでんウォーマーの開発と合わせて、レジカウンターで販売をスタートさせた。1982年にはボトル入りのおでんつゆを開発し、全店共通の味付けのおでんが提供できるように。大根や卵はもちろんのこと、2000年発売の「屋台のおでん串」、2001年発売の「ロールキャベツ」「白滝」など、さまざまなおでん種がヒット。「セブン-イレブン」を代表する商品として長きにわたり多くの人に愛されている。
ところで、今ではおにぎりの定番として知られる「ツナマヨネーズ」も、実は「セブン-イレブン」がコンビニで初めて販売したそうだ。
当時、取引先の商品開発担当者の子供が、ご飯にマヨネーズをかけて食べていたことから「マヨネーズ×ご飯」のアイデアが生まれたのだとか。この意外な組み合わせは世間に衝撃を与えるとともに徐々に人気となり、全国のコンビニの定番おにぎりにまで成長。今日まで続く、“おにぎりにユニークな具材を採用する”という取り組みのきっかけにもなった。
「セブンプレミアム」や「セブン銀行ATM」など、その勢いはさらに加速
流通商品だけでなく、「セブン-イレブン」独自の開発力は、2000年代に入りさらに加速。2007年には「セブンプレミアム」というプライベートブランドの展開をスタートさせた。
「セブンプレミアム」は、セブン&アイグループの共通プライベートブランドとして、49アイテムから販売を開始。コンビニではニーズが低いと思われていた調味料や加工食品などを販売し、そのラインナップは住居関連商品や生鮮食品にまで拡大している。このことから、「遠くに行かなくても近くのセブン-イレブンで買えばいい」という、便利な買い物スタイルが定着した。
さらに、「セブン-イレブン」は商品販売だけでなく、オペレーションやインフラ面での画期的な取り組みを広めたことでもよく知られている。代表的なものは以下のとおり。
・POSシステム開始(1982年)
・公共料金の収納代行サービス開始(1987年)
・インターネット代金収納代行サービス開始(1999年)
・アイワイバンク銀行(現:セブン銀行)の店内ATM(現金自動預け払い機)設置開始(2001年)
・マルチコピー機による「住民票の写し」「印鑑登録証明書」の発行サービス開始※一部自治体より(2010年)
・セブンカフェ販売開始(2013年)
・7NOWの本格的な導入開始(2020年)
このように、商品を進化させ続ける一方でコンビニならではの「利便性」を追求し続け、スタートから約50年もの間、市場を切り開き続けた。そしていつしか、人々の生活になくてはならないものになった。
さらなる50年にかける「セブン-イレブン」の思い
今から50年前、東京・豊洲の1号店からスタートした「セブン-イレブン」は、2023年6月末時点で全国2万1407店舗を展開している。
「セブン-イレブン」は次なる50年に向け、「便利さ」の追求に加え社会課題の解決にチャレンジし、ユーザーや加盟店、取引先、株主、社員、地域社会の人々といった、あらゆるステークホルダーが笑顔になることを目指していくようだ。今となっては当たり前の、さまざまなサービスの先駆者となった「セブン-イレブン」。これからの展開に期待が止まらない!
取材・文=松田義人