猛暑がきっかけで約1000倍の売上に…『塩分チャージタブレッツ』ヒットの鍵は“タブレット”へのこだわり

2023年9月1日

スーパーやドラッグストアなどでよく目にする『塩分チャージタブレッツ』。近年の酷暑の影響で一時は在庫薄になったこともあるヒット商品だが、発売されたのは今から14年前の2009年だという。

当時はまだ前例のない商品がゆえに今ほど売れていたわけではなかったようだが、人々の熱中症への意識が高まるのと比例して年々売上を伸ばし、現在では「キャンディのカテゴリーにおける塩分味・塩味商品市場」の金額シェアトップになっている。

今回は、現代の夏の強い味方となった『塩分チャージタブレッツ』の開発秘話について、カバヤ食品株式会社(以下、カバヤ食品) 広報室の廣井良伸さんに聞いた。

岡山県を拠点にキャンディなどを開発・製造しているカバヤ食品株式会社のヒット商品『塩分チャージタブレッツ』


「飴」の欠点をクリアにする「タブレット」に着目

2009年頃、地球温暖化の影響から熱中症を意識する人が増加。そんな状況を受け、カバヤ食品では「手軽に塩分を摂取できるお菓子を作りたい」と、『塩分チャージタブレッツ』の開発に着手した。

夏場の塩分補給をする商品としては、古くからあるのが「塩飴」。しかし「飴」であることから、長時間なめ続けなければ塩分を補給しにくいことや、 暑さで溶けてしまって扱いにくいといった欠点もあった。その欠点をクリアさせながら、なおかつ塩分補給効果も見込めるものとして、カバヤ食品では「タブレット」に注目した。

子供でも食べやすい味や個包装にこだわるなど、扱いやすさも意識している


実は『塩分チャージタブレッツ』以前にも、カバヤ食品では『ジューC』というタブレット状の清涼菓子のロングセラー商品を販売しており、「そのノウハウを生かせば画期的な商品になるだろう」と見込んでいたという。

「『塩分チャージタブレッツ』の開発を行っていた際、熱中症予防の啓蒙活動が活発になっていました。このときに『塩入りキャンディ』が注目され、なかにはヒットに至ったものもあります。ただし、夏場の暑い時期に飴を服やカバンに入れるとベタベタになるうえ、長時間なめ続ける必要があるので、食べる状況が限られてしまいます。特にスポーツに打ち込む子供たち、炎天下で長時間働く人々に対して、より扱いやすく手軽に塩分を補給できる商品をご提供したいという思いがありました。そこで、飴ではなくタブレットタイプにして、2009年に発売しました」

『塩分チャージタブレッツ』は、「発汗で失われる塩分をおいしく手軽にチャージ(補給)できる」「タブレット一粒に食塩相当量で約0.1グラムのナトリウムを含有。発汗で失われるミネラルのカリウムも配合している」「キャンディチップを配合することで噛んで崩れやすく、口どけがよいため、素早く塩分をチャージ(補給)することができる」という3つの特長があるが、これらに加え、「子供が食べやすい味」「子供でも扱いやすい個包装」に仕上げ、塩分補給に対する最大限の配慮を反映させた。しかし、前例がない商品だったこともあり、2009年の発売当初の市場の反応は決してよいものではなかったそうだ。

『塩分チャージタブレッツ』の特長3つ


猛暑をきっかけに注目を浴び、今では夏の必需品に

当時はまだ見慣れぬ『塩分チャージタブレッツ』だったが、注目を浴びるきっかけが2つあった。1つは、2011年の東日本大震災に伴う計画停電。もう1つが、著しい猛暑が続いた2018年のこと。

2011年、東日本大震災に伴う計画停電により、時間帯によってエアコンが使えなくなった地域があり、熱中症への危機意識から水分・塩分補給の意識が高まっていた。これを受けて『塩分チャージタブレッツ』が注目を浴びることとなり、販売個数は前年比600%と急激な伸びを見せたという。また、2018年には、最高気温が35度以上の猛暑日を記録した地点が全国で6000カ所を超え、過去6年間で最高を記録。ここでもまた、『塩分チャージタブレッツ』の販売個数は前年比150%となった。

多くの人々の熱中症への意識が高まり、『塩分チャージタブレッツ』を手に取ったというわけだが、結果的に発売当初に想定していた売上の約1000倍に至ったのだとか。

「おかげさまでご支持をいただき、『キャンディのカテゴリーにおける塩分味・塩味商品市場』(※)ではNo.1ブランドになりました。2017年には公益財団法人日本学校保健会の推薦用品としての認定を受け、さらに同年から一般財団法人日本気象協会が推進する『熱中症ゼロへ』プロジェクトにも、オフィシャルパートナーとして参加するようにもなりました」
※(株)インテージSRI+ 塩分味・塩味市場(2021年9月~2022年8月)金額シェア

社会貢献にも取り組み、各団体からのお墨付きも!


「すべての汗かく人に!」がキャッチコピー。幅広い世代への訴求を

カバヤ食品では近年、社会貢献の一環として教育の現場にも『塩分チャージタブレッツ』の無償配布を行うようになり、2023年はすでに全国5000校に届けたという。

今後もさらに熱中症予防商品の代表格として広まっていくであろう『塩分チャージタブレッツ』だが、廣井さんは「商品の訴求だけでなく、塩分補給の大切さも伝えていきたい」と語る。

「塩分は体にとってとても大切な成分です。汗をかくと体から水分だけでなく塩分も失われるため、水分補給だけでなく適切な塩分補給が必要となります。『塩分チャージタブレッツ』はそんな塩分を、おいしく手軽にチャージできる商品です。2019年からはパッケージに『すべての汗かく人に!』と書いていますが、このキャッチコピーどおり、子供からシニア世代まで幅広い世代の方々に知っていただき、併せて塩分補給の大切さを伝える活動を続けていきたいと考えています」

2019年より加わったキャッチコピー「すべての汗かく人に!」


なお、現在の『塩分チャージタブレッツ』は、「スポーツドリンク味」「塩レモン味」の2種をラインナップしている。これから少しずつ涼しくなってくる時期だが、油断は禁物。熱中症予防の1つとして生活に取り入れて、残りの夏を楽しんでほしい。

取材・文=松田義人(deco)