本物のカツを再現するコツは?PRの方法にもポイントが
今や全国展開を果たし、老若男女問わず愛されているビッグカツ。まるで本物のカツのようなサクサク食感だが、実はこの味わいを出すためにさまざまな企業努力が行われている。そのうちのひとつが、油の品質だ。食感を長期間維持するために、できるだけ新鮮で傷んでいない油を使用すること、そして油の品質を一定に保つために製造レイアウトを工夫していることがポイントだという。
もうひとつの大きなこだわりが、揚げたあとに油を濾す工程だ。製造途中にこれを挟むことにより、十分に脱油された衣になってサクサクとした食感になるのだとか。そのため、立て続けに食べても胃もたれせず、つい何枚も口に運んでしまうおいしさに。このような連食性もビッグカツの大きな特徴であり、「お腹いっぱい食べてほしい」というスグル食品の願いが込められている。
そして、商品を展開するうえでのこだわりも。ビッグカツはもともとトンカツをイメージして開発されたお菓子だが、ほかの揚げ物をモデルにした商品も展開している。「ハムカツ屋さんプレミアム」は魚肉シートからハムの味がするように作り、「みそカツ」には本場・名古屋の八丁味噌を使用し、本物のみそカツの味わいに近づける努力をしている。
また、ビッグカツの主な消費者は30〜40代の男性だそうで、この世代の人々がおつまみとしてビッグカツを買い、そうすると彼らの子供たちの手にも届くので、親子2世代への訴求が可能だという。そのため、ビッグカツを「懐かしい」と感じる世代に向けての情報発信を積極的に実施している。
「消費者の層に合わせて、お酒を取り扱っている飲食店とのコラボ商品を展開しています。2022年にはスシローさんとのコラボで、『まぐろビッグカツ』という、ビッグカツをマグロのカツで再現したメニューを開発していただきました。ちょうどビール半額フェアも同時開催していた影響から大盛り上がりで、たくさんの人に味わっていただけました」
広島では本家よりもメジャー?球団愛あふれる「カープかつ」
大塩さんによると、ビッグカツの売上や知名度については「特に地域差はない」とのこと。しかし、1カ所だけビッグカツの知名度が低い地域がある。それがスグル食品のお膝元・広島県だ。地元発のお菓子は地元民に人気なのが一般的だが、なぜビッグカツは広島県であまり知られていないのだろうか。
「実は、ビッグカツの派生商品に『カープかつ』という商品があります。これは『カープ』と『勝つ』をかけた広島東洋カープ応援商品なのですが、広島ではカープかつのほうが一般的になってしまったので、ビッグカツを知らない人も多いのです。名物の広島焼きに使用されるソースがかかっているので、甘めの味付けになっています。主要駅近郊のスーパーや空港、新幹線の駅構内、道の駅などで多く取り扱っていただいております」
カープかつの誕生は2004年。熱心なカープファンだった営業担当者の思いつきで生まれたそうだ。当時は「球界再編」により大阪近鉄バファローズの消滅・合併が起こった時期で、カープも球団消滅や合併が噂されていた。営業担当者は不安を感じ、「どうにかしてカープを盛り上げたい!」と思っていたときに、あることがきっかけでカープかつを発案したという。
「2004年のある日、営業担当者は大のカープファンとして知られる奥田民生のライブに参戦しました。その際に奥田さんとそのファンたちのカープ愛を受け、“カープには広島県民の心を動かす強いパワーがある”と感じたようです。それから『広島とカープを全国にPRしたい』と、カープかつを思いついたと聞いています」
今後は、広島県内でさらにカープかつを広めていく予定だという。そのために、カープの選手や広島県内の企業などとのコラボを行っていくことが、スグル食品の今後の目標だ。広島とカープへの愛にあふれたエピソードが詰まったカープかつ。大塩さんは「カープかつを食べて育ちました!」という選手が現れることを楽しみにしているそう。
最後に、これからのビッグカツの展望を聞いた。
「ビッグカツは駄菓子でもおつまみでも食べられるので、“大人には大人の楽しみ方ができて、子供には子供の楽しみ方ができる”という2軸は絶対に外さずに、さまざまな企画を考えていきたいですね。最近は大人も子供もゲームを楽しむようになってきたので、例えば“回復アイテムとしてビッグカツが登場する”といった、ゲーム作品とのコラボができたらうれしいです!」
会社の倒産や原料不足といった多くの苦難を、斬新なアイデアとブレないこだわりで乗り越えてきたスグル食品。定番のビッグカツはもちろん、カープかつをはじめとした派生商品の今後の展開にも期待したい。
取材・文=越前与