キャンプ場徹底解剖!「千葉ウシノヒロバ」(千葉県千葉市若葉区)|牛と自然がお出迎え!千葉市の里山で地域再生を目指すキャンプ場

2022年3月9日

2021年4月、千葉市若葉区の自然豊かな里山にグランドオープンした「千葉ウシノヒロバ」は、その名のとおり、のんびりと牛たちが暮らす牧場を活用して造られたキャンプ場だ。オートキャンプやデイキャンプ、バーベキューをはじめ、地元野菜が集まるマルシェや、四季折々の花が楽しめる「富田さとにわ耕園」も隣接。ノープランでも、広い敷地内で思い思いの過ごし方ができる、施設の魅力と楽しみ方を紹介していこう。

千葉市若葉区の広大な牧場を利用してオープンした「千葉ウシノヒロバ」


【アクセス】ICから約10分で、のどかな里山にトリップ!

千葉市北東部、市内最大面積を誇る若葉区。その田園地帯に位置する「千葉ウシノヒロバ」は、最寄り駅の千葉都市モノレール・千城台駅から6キロほど離れたエアポケット的空間だ。

緑に包まれた敷地を背景に、シンプルモダンなデザインの看板が映える

電車ではやや不便な場所にあるが、オートキャンプ場ということもあり、車で訪れる人が圧倒的に多い。千葉東金道路・高田ICから約10分、または東関東自動車道・佐倉ICから約20分と、市内外からアクセスしやすいのが魅力だ。

【写真】エントランスからキャンプパークまで車の乗り入れができる

電車利用の場合は、千城台駅からコミュニティバスも出ているが、1~2時間に1本程度で、乗車時間も約30分かかるので、タクシーが便利(乗車時間目安10~15分)。帰りは、流しのタクシーがほとんどつかまらないので事前予約をするか、バスの時刻をチェックしておこう。

バス停「乳牛育成牧場」は、千葉ウシノヒロバの入口の目の前


【コンセプト】「牛と人と自然が、穏やかに交差する場所」を目指す

10ヘクタールもの広大な敷地を持つこちらの施設は、元は1968年に開業した市の乳牛育成牧場。酪農家から仔牛を預かり乳牛として育てる牧場としての役割を残しつつ、キャンプやバーベキュー、マルシェなど、地域の魅力を多彩なコンテンツで楽しめる観光施設「千葉ウシノヒロバ」として生まれ変わったのだ。

市営牧場時代に使われていたサイロ(牛の飼料の製造・貯蔵庫)が、施設のシンボルとして残る

「コンセプトは、“牛と人と自然が、穏やかに交差する場所”。地域の人が集ったり、都市部の人がスイッチを切り替えられる場所を作りたかったんです」と教えてくれたのは、市から運営を引き継いだ株式会社千葉牧場の代表取締役・川上鉄太郎さん。

母体がデザイン会社ということもあり、元々あった牛舎や倉庫、使われていない建物の廃材などはそのまま生かしつつ、おしゃれにリノベーション。環境を生かし持続させたデザインは高い評価を受け、日本最大級のデザインアワード「日本空間デザイン賞2021」のサステナブル空間賞を受賞している。「地域の魅力が伝わるようにすることを第一に目指しました。豊かな自然と寄り添うような空間作りや、地産地消が体験できるコンテンツの提供を心がけています」(川上さん)

「千葉ウシノヒロバ」を運営する川上鉄太郎さん

入口を入るとすぐに現われる「センターハウス」も、サステナブルな空間デザインを形成する一つだ。農機具倉庫だった建物を、案内所&ショップとして改修。倉庫時代の棚や廃材もテーブルなどに再利用し、味わいのある雰囲気を醸している。

総合案内所兼ショップの「センターハウス」。キャンプ場の受付や、不定期開催のイベントの申し込みはこちらへ

中央には、自由に利用できる憩いのスペースが。テーブルは、牛舎の扉を再利用している

ショップコーナーでは、施設内の菜園ほか地元農家が育てた野菜や、川上さんが別事業として運営する九十九里のローカルファクトリーで作られた食品などを販売。バーベキューの食材として利用するもよし、お土産選びを楽しむのもおすすめだ。

地場産だから、新鮮な採れたて野菜を安く提供

千葉の名産品や、施設コンセプトに合った全国の食材や調味料なども購入できる

農業体験用の長靴は、キュートな牛柄


【テントサイト】自由度の高い芝生のフリーサイトは開放感満点!

周りに高い山がない千葉ならではの、広い空を感じられる「キャンプパーク」

車でそのまま乗り入れられるキャンプサイトは、スコーンと抜けた青空と原っぱが広がる、開放的なエリア。4人以下は一区画分の利用となり、車2台&テント2張りまで。5~8人だと2区画分、9人は3区画分OK。とはいえ区画に仕切りはないので、空いている好きな場所にテントやタープを張って、滞在のベースを作ってOK。

車を横付けしてテントを張れば、自分たちだけの基地が完成!


サイト内はざっくりとエリア分けされ、利用イメージがわくような名前が付いている。入口に最も近い場所が「あなたらしくサイト」。トイレやシャワー、炊事棟などの施設に近い、便利でフラットなサイトだ。牛舎にも近いので、牛の遠景も見られる。その奥側が「じゆうにサイト」。落ち着いた雰囲気で開放感のあるキャンプを楽しめる。

日暮れと共に、美しい夕焼けに染まる空もキャンプの醍醐味


園路を挟んで少し離れた場所にあるのが「のんびりサイト」。ペット連れOK、11時チェックアウト(通常10時)など、より自由度が高いのが魅力。「富田さとにわ耕園」に隣接しているので、四季折々の花畑を眺められるのもうれしい。取材当日は平日だったこともあり、ソロキャンパーの姿を多く見かけた。内村大介さんもその一人で、ワンポールテントに煙突&薪ストーブを設置して、寒さ対策もバッチリ。

ソロキャンプ歴3~4年だという内村大介さん。愛用のギアが並ぶテント内は、まさに男の秘密基地!

「ここは家から最も近いキャンプ場で、利用するのは2回目。昨夜はテントの中でもつ鍋を作ってお酒を飲みながら、1人のんびり過ごしました」と満足気に話してくれた。

【ロッジ棟】テントがなくても、初心者でも、キャンプ気分を満喫

ソロキャンパーにも人気のキャンプサイトだが、初心者のグループやファミリーにおすすめのロッジ棟も完備。4人定員と8人定員のものが各2棟ずつあり、ソーラーパネルと蓄電池によって電気を自給自足する、環境に優しいつくりになっている。

「あなたらしくサイト」は、春には桜が咲き誇りお花見気分!ロッジの扉は大きく開くので、外との一体感を味わえる

テントを設営する必要がなく、コット(アウトドア用簡易ベッド)やシュラフ(寝袋)、ブランケットなど設備もひと通りそろっているので、アウトドアに慣れていない人でも安心だ。

ロッジの中は、ラグやクッションも設置された快適空間。バーベキューセット一式も用意されている

広めの8人定員ロッジ。平日4万480円~

さらに4棟のロッジにはそれぞれテーマ曲が設定され、それにちなんだアートも設置。「手紙」「合法的よそ者」「パリの自由人」など曲と関連した名前が付いているのもユニークだ。滞在しながら、ロッジごとの物語も楽しもう。

【ユーティリティ】快適さとデザイン性を兼ね備えた設備をチェック

次は場内の設備をご紹介。シャワー室、トイレ、炊事場など共同設備はひとつのエリアに集まり、センターハウスとテントサイトの中間地点に位置している。サステナブル空間賞を受賞しているだけあり、自然環境を生かした工夫や使い勝手のよさはお墨付き。

三角屋根の3つの建物のうち、右が炊事場、左が男女トイレ。道を挟んだ手前側にシャワー室がある


シャワー室は、市営牧場時代の職員のトイレだった建物をリノベーション。グレーのタイル×木の扉のシンプルモダンなデザインに仕上げている。

木の扉にシンプルなサインがおしゃれ

利用時間は平日16~20時、土日祝16~22時、20分300円。シャンプーやボディソープなどのアメニティの備え付けはなく、販売もしていないので、忘れずに持参しよう。ドライヤーはセンターハウスで無料貸し出しできる。

男女各4室あるシャワールーム。ハンガーはあるが棚などはないので、荷物は袋にまとめて使おう


トイレは、テントをイメージしたとんがり屋根のシンプルな建物が男女1棟ずつ。代表・川上さんの「日本一トイレがきれいなキャンプ場にしたい!」という思いから、靴を脱いで入る仕様になっている。自然の中で付いた泥を中に持ち込まないことで、清潔なサニタリー空間を保つことができるのだ。

テントをイメージしたデザインのトイレ。スロープ付きの多機能トイレ(ウォシュレット付き)には、乳児のオムツ台や子供用便座もあり

個室が4つと洗面台が2つ備わった女子トイレ。木の温もりあふれる清潔な空間

同じく明るく清潔な男子トイレ。空調設備に頼らず虫対策もできるよう、天井に蚊帳を取り入れる工夫がなされている


調理用の洗い場として水道を使える炊事棟は、利用者の使い勝手を追求したシンプルなデザイン。時間帯によって人が集中する場所だからこそ、通り抜けが出来る動線を確保したつくりがうれしい。

砂利敷きの通路が、靴の裏の泥をさりげなく落としてくれる

シンクの上は木材の台になっており、洗い物などを置ける

快適な施設利用をサポートする「おかえりステーション」。レンタル用品の返却やゴミの処分ができる。9:00~10:00


【おすすめポイント】何度も利用したくなる!魅力的なシステムやイベント

オープンしたばかりのこちらの施設では、すでにリピーターが多いというが、その理由の一つが、サブスク制度の導入だ。「週末、ふらっと息抜きしに」そんな気軽さでキャンプを楽しんで欲しいとの思いから、定額プランを用意。月々2970円で何回でも利用可能だから、月に一回来れば元が取れてしまうのだ。さらに会員登録をしてスタンプを集めれば、お得なクーポンもゲットできる。

定額制を利用すれば、公園感覚でフラリと立ち寄るといった楽しみ方が可能


また、こちらの施設の魅力を語る上で外せないのが育成牧場の存在。半世紀以上前からこの土地で営まれていた育成事業を引き継ぎ、酪農家さんから預かったメスの仔牛が、適齢期を迎えるまでのびのびと暮らしている。

牛舎を一新し、風通しのよい高台に配置

柵の外から仔牛たちの姿をのんびりと眺めれば、その愛らしさに癒やされること必至! 今後は仔牛とのふれあい体験なども予定しているというから楽しみだ。

広い牧草地で元気いっぱい!柵のそばに行くと近寄ってくる人懐っこい子も


楽しいイベントやオプションを定期的に行っているのも、リピート人気を支える秘密。代表的なものが、毎週土曜に開催される「とみだマルシェ」だ。施設のランドマーク的存在である「大屋根ガーデン YAHHO」を会場に、千葉の農家さんたちが育てた新鮮や野菜をはじめ、千葉の農産物を使って開発したオリジナル商品も販売。さらに3カ月に1度は「ヒロバビラキ」というイベントが開催され、地元の食だけではなく、アンティーク家具やハンドメイド雑貨も出店される。

牛舎を改修して作られた「大屋根ガーデン YAHHO」は、みんなが集える広場

マルシェでは、千葉近郊の農家が育てた地元野菜セット550円~を販売。購入したらバーベキューで味わうのもおすすめ


大屋根ガーデン YAHHO前には、土日祝限定でキッチンカー型のミルクバースタンド「26時の抱擁」もオープン。地元産の新鮮なミルクやコーヒー、カルーアミルクなどを楽しめるので、キャンプの合間にぜひ立ち寄りたい。

ミルクバースタンドは、土曜11:00~17:00、日祝9:00~15:00オープン。金曜は11:00~15:00不定期営業


そのほかオプションとして、毎週土曜を中心にLEDランタン製作のワークショップや、秋には収穫体験も開催しているので、ホームページをこまめにチェックしよう。

収穫体験では、自然の恵みや農業そのものを身近に感じられる


【楽しみ方】のんびり里山体験でリフレッシュ

自然豊かな里山にきたら、時間を忘れてゆるゆると過ごしたいもの。こちらの施設では、すてきな読書&お散歩体験が叶う。センターハウス横のスペースには、毎日9:30~16:00(雨天除く)に「あおぞら図書館」がオープン。廃材を利用して作られた本棚には、思い出の本や誰かにつなげたい本など、想いの込もった寄贈本がずらり。青空の下でベンチに腰掛けて、虫や鳥の声、土の匂いを感じながら本のページをめくるひと時は、いつもと違う特別な読書タイムになりそう。

懐かしい絵本も多く、自然に包まれながら物語の世界に浸れる


お散歩は、キャンプ場に隣接する「富田さとにわ耕園」へ。春にシバザクラやネモフィラ、秋にはコスモスが咲き、四季を通じて自然と触れ合うことができる。

「富田さとにわ耕園」は9:00~17:00(月曜休み、祝日の場合は翌日休み)。入園無料


子育てファミリーにうれしい施設にも注目。子供向けの遊べる屋内スペース「わかばのとまりぎ」は、約1歳から中学生までが対象だ。“子供主体の子供がつくる寄り合い場”をテーマに、未就学児向けのエリアと工作などができるエリアの2つの空間で構成されている。子供がキャンプで飽きてきたり、急に雨が降り出して外遊びができない時にも役立ちそうだ。利用の際はセンターハウスで受付をしよう。

施設内手前の未就学児向けエリアでは、創造力を刺激するさまざまなおもちゃで遊べる

色えんぴつやクレヨン、ボンドなどの文具類を自由に使える工作室。落ち葉や木の枝、松ぼっくりなど自然の素材を利用して、創造力豊かな作品作りにトライ


【日帰りプラン】買い出し不要!手ぶらで地元食材を楽しむ

芝生エリアでは、デイキャンプや日帰りバーベキューを楽しむこともできる。新鮮なお肉や野菜などの食材、グリルや炭などの道具まで用意されたプランを利用すれば、手ぶらで出発しても問題なし!

青空の下、焼きたてを味わえるバーベキューでアウトドアを満喫

提携牧場の高原黒牛や千葉県産ポークソーセージ、千葉ウシノヒロバオリジナルの福神漬けなどが味わえるコースは1人3410円~。BBQコンロ(1台)や焼き網、鉄板、炭(1.5キロ)、調理具、皿や箸などもセットで、入園料込みのお得なプランになっている。食材と機材の持ち込みももちろんOK。

スタンダードコースの食材イメージ。高原黒牛は肉質と脂の口どけが抜群!ネットで事前予約が必要


最後に、川上さんに今後の展望について伺うと、「使われていない牛舎を利用して、池を望みながら食事ができる地産地消のレストランを計画中なんです。あとまだアイデア段階ですが、お風呂があるといいなと思っていて。牧場だからミルク風呂とか!」と楽しそうに語ってくれた。

「千葉ウシノヒロバ」のスタッフのみなさん。魅力的な施設作りにチーム一丸となって取り組んでいるので、今後も楽しみだ

キャンプを楽しむ以外にも、自然環境や地域の魅力を取り入れた多彩な楽しみ方ができる「千葉ウシノヒロバ」。キャンプ場の枠を越えたワクワクするような展開が、さらに期待できそうだ。

【早見表】施設の基本情報

取材・文=田山容子、水島彩恵

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