夏のサウナで気を付けることは!?医学博士が解説!【関東のおすすめサウナ20施設も紹介】

2024年7月29日

近年、注目を浴びている「サウナ」。単なるブームを超えて、もはやカルチャーとして根付き始めている印象も。そんなサウナの健康効果や、夏ならではサウナの注意点などについて、日本サウナ学会の代表理事を務める、医師で医学博士の加藤容崇(やすたか)先生に話を伺った。また、後半では関東周辺のおすすめのサウナやサウナがある温浴施設を紹介する。

「日本サウナ学会」とは?
加藤先生が代表理事を務める「日本サウナ学会」は、サウナに関する研究を進め医学的効能を明らかにし、人々の健康増進に役立てることを目標に活動している。加藤先生自身も、サウナの高温下でも使える「サウナウォッチ」(Gakken「大人の科学」とのコラボ)をプロデュースするなど、精力的に活動している。

日本サウナ学会の代表理事である加藤容崇先生画像提供=日本サウナ学会


サウナには健康効果がたくさん!

医学博士に聞く、サウナの健康効果とは!?画像=PIXTA

――サウナにはどのような健康効果があるのでしょうか。

【加藤】いろいろありますが、重要だと思うポイントのひとつが、自律神経の機能が高まるということです。サウナで汗をかいたり、体温を調節したりすることに、自律神経の機能を使います。「自律神経」はその名の通り、自動的に働いてくれる、つまり勝手に動いてくれるのですが、逆に言えば意識して使えません。なので、自律神経がどのくらい働いてくれているかというのはわかりにくいんです。症状に現れるまで気づかない人が多く、たとえば、「ちょっと調子悪いけど、まあいいか」と思っているうちに、フラフラしたり冷え症になるなど、いつの間にかその機能が下がってきていることも。なので、自律神経については日々のメンテナンスが非常に大事となります。サウナのように短時間で自律神経を活性化させれば、自律神経自体の機能が強くなり、働きが高まるんです。

あとは、副交感神経が優位になってリラックスができるという効果もあります。自律神経は交感神経と副交感神経のバランスと活動量(絶対値)で成り立っています。ストレスにさらされている人は交感神経が優位になっているので、リラックスしようと思ってもできません。自分で切り替えられないので、サウナのような外的な環境をうまく使って自律神経のバランスを整えると、リラックス状態へ持っていけます。また、活動量自体も活性化できます。

時間は見るな!?正しいサウナの入り方

――一般的に、「サウナ→水風呂→休憩で1セット」という流れだと思いますが、それぞれだいたい何分ずつがいいという目安はありますか?

【加藤】まず大前提として、サウナでは時計は見ないでください。サウナは時間ではありません。施設によって、その方によって、体調によって全然違いますので一概に言えないというのもあります。たとえば、サウナ室に砂時計や12分計が置いてあるのですが、12分は長いんです。12分って設定されると、意地でも12分は超えないと!と我慢する人が出てしまいます。時間ではなく、「暑い」と感じたら出るようにしましょう。

身体の汗の量を見て出る、という人も多いのですが、サウナ室で皮膚の表面についている水は、実は汗ではないんです。あれは「結露」なんです。ドライサウナなら、汗は結露にならず蒸発していきます。なので、汗の量も見てはいけません。また、温度も見てはいけません。

出るタイミングがわからない…という方におすすめしているのが、心拍数を測ることです。心拍数は、自律神経の機能が一番細かく反映される指標です。手首の橈骨(とうこつ)動脈に触れると、何となくそのリズムがわかると思います。軽い運動したときの心拍数(息が切れずに話せるくらいの運動時の心拍数)を指標にして入るといいでしょう。

手首あたりにある橈骨動脈に触れると心拍数を測ることができる


――では、軽い運動をしたときに測っておくのがいいですね。

【加藤】試しに測ってみて「このリズム」とインプットしておくといいですね。1分間に何回くらいと測っておく…たとえば、10秒間測った回数を6倍したり、15秒間測って4倍するのもいいですね。それでもいまいちリズムがわからない…という方は、曲のBPM(1分間に打つ拍の回数を表した数値)を参考にするといいですよ。ちなみに僕が軽い運動をしたときの心拍数が120~130なのですが、フジファブリックの「若者のすべて」のBPMが127なので、僕はサウナでは脳内でこの曲を再生しています。曲をイメージするとリズムがわかりやすいので、おすすめです。

――ちなみに、水風呂も時間を見ないほうがいいのでしょうか?

【加藤】見なくてもいいですが、水風呂の場合は1分以内がいいでしょうね。人間は血液が身体を1周するのにかかるのが、若い方で20秒くらい、年配の方で30秒くらいなんです。表面が冷たくて身体の深部が温かい…というのが一番いいので、血液が1周または2周するくらい、つまり20秒~1分の間くらいで出るのがいいと思います。

――そのあとの休憩の時間はどうでしょうか?

【加藤】「たっぷりめ」がいいですが、これも感覚に従う形でいいと思います。外気温などによっても違いますしね。「身体が落ち着くまで、長め」で、もし何か指標をということであれば、心拍数が平常時に戻ったくらいを目安にするとよいでしょう。特に夏は外が暑く、身体が落ち着くのに時間がかかるので、長めに休憩するといいですよ。

水がベスト!?適切な水分補給とは?

【写真】サウナで飲むとよいものは…水!?画像=PIXTA

――サウナでは何を飲むとよいでしょうか。

【加藤】「水」がいいと思います。スポーツドリンクもいいのですが、糖分が多いので飲みすぎに注意してください。脱水気味でフラフラするようなときや、夏に電解質が失われてしまっているとき、たとえば日中にすごく汗をかいたあとにサウナに入る場合などは、スポーツドリンクがいいでしょう。

――サウナに入る前にも飲んでおいたほうがいいのでしょうか?

【加藤】はい、サウナ前に飲んでおくのがおすすめです。水分は飲んですぐ吸収はされないので、サウナに入る30分くらい前に飲むといいでしょう。量としては、一般的な体格の男性だと1時間サウナに入ると500cc~1リットルほど汗が出るといわれているので、500ミリリットルのペットボトルを事前に半分飲んで、残りを入りながら飲む、というのがいいかなと思います。

――汗をかくので、サウナ前に塩分を摂っておく必要はないのでしょうか?

【加藤】基本的に日本人は塩分を摂りすぎなので、積極的に摂っておく必要はないかなと思います。多くの方が、1日の目標が7グラムのところ、10グラムくらい摂ってしまっています。成人男性が1時間くらいサウナに入ると、3グラムくらい塩分が出るといわれているので、多くの方は補わなくていいかなと思います。ただ、日中に汗をかく仕事をされている方などは、補給しておいたほうがいいと思います。塩飴や、施設によっては給湯器の上に塩を置いてあったりしますので、そういうところで補給するといいと思います。

――ちなみに、サウナ後の飲食の注意点などはありますか?

【加藤】サウナ後は副交感神経が優位になり吸収率が上がるため、食事をすると太りやすくなります。脂っこい揚げ物と糖質たっぷりのご飯はおいしいですが、身体のことを考えたら避けたほうがいいですね。もしそういったものを食べたいときは、先に野菜や冷奴などから食べる、など工夫するとよいですよ。夏に食べたくなるかき氷も大量に食べてしまうと刺激になるので、ほどほどにしておきましょう。

またサウナ中は、ベータエンドルフィンなどのホルモンが分泌されて多幸感を得るのですが、そういうホルモンはアミノ酸を原料にできています。アミノ酸には必須アミノ酸と非必須アミノ酸があり、必須アミノ酸は身体で作られないので、食事で摂らないといけません。お肉、大豆、野菜などで構成されたバランスのいい食事だと、そういった必須アミノ酸を補えるので好ましいでしょう。

夏だからこそ!サウナの効果と注意点

――暑い夏だからこそ、サウナに期待できる効果もあるのでしょうか?

【加藤】熱中症予防ですね。熱中症予防には「暑熱順化(身体が暑さに慣れること)」が大事で、サウナは暑熱順化に効果的です。サウナに入ることによって、自律神経の活動が活発になって体温調整が上手に(効率的に汗をかけるように)なり、暑い環境に適応できるようになるんです。サウナに習慣的に入っている人は体温の上昇が0.4度くらい抑えられると言われていますし、実際、スポーツの前にサウナに入っている人は、スポーツ中の体温上昇が抑えられるという論文もあります。

ーーサウナ入浴で、夏に特に気をつけたほうがいいことはありますか?

【加藤】サウナ施設に来るときに、夏はだいたい(歩いたりして)暑いところからやってきますよね。それからいきなり、お風呂→サウナ、としてしまう人がいますが、外も暑い、風呂も暑い、サウナも暑い…とずっと暑い状態になってしまいます。それだと負荷が高いところから入ってしまうので、身体が最初から疲れてしまいます。これは、サウナに慣れている人もそうでない人も同じです。

なので、特に夏は、最初にクールダウンすることをおすすめします。施設内の涼しいところで水分補給をしながらゆっくりして、身体が落ち着くのを待ってから入ることが大事です。また、先に(サウナの)休憩場所に行くことから始めるのもいいでしょう。

ーー加藤先生、ありがとうございました!

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