【万博国際交流プログラムレポート/中東編01】和歌山県有田市とアラブ首長国連邦の交流の様子

2025年3月19日

いよいよ2025年4月13日(日)に開幕が迫る「2025年日本国際博覧会」(通称:大阪・関西万博)。この大阪・関西万博の開催を前に、そこに参加する国や地域との相互理解や国際交流を通じて、地域の課題解決や活性化を図る取り組みを内閣官房が支援する「万博国際交流プログラム」が実施されている。

日本の参加自治体は、地域住民などと交流相手国の万博関係者や出身者との交流事業を通して、万博の理念や共通の課題等への理解を深めるための事前学習を行ってきた。そこで、この記事では「万博国際交流プログラム」を活用した自治体による、中東各国との交流事業をレポート。今回は、和歌山県有田市の取り組みを紹介する。

和歌山県有田市とアラブ首長国連邦交流のきっかけ

2022年に有田市長がドバイ万博へ訪問したことをきっかけに、有田市とドバイ間で交流が開始。これまで姉妹都市交流はなかったが、在ドバイ日本国総領事館を通じた鮮魚の輸出や市場拡大に向けた実証事業などを通じ、両地域の関係は急速に深まってきている。さらに2024年1月には、有田市立有和中学校(以下「有和中学校」)とドバイのGEMS Al Barsha National School(以下「GNS」)との学校間連携協定も締結している。

また、有田市は地域経済を支えたENEOS石油精製工場の閉鎖に伴い、同市は次世代エネルギーへの転換という大きな課題に直面。新たに廃食油を原料とする持続可能な航空燃料(SAF)の製造に着手するなど、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速させている。

そのような状況下で有田市は、ドバイとの交流を通じて世界を知り国際的に活躍できるだけでなく、環境に配慮したエネルギーや科学技術を活用できる人、さらには多様な価値観や文化の違いを受け入れることで他者への共感を育み、これまでに経験したことのない地球規模の課題にもさまざまな人々と協働しながら解決に向けて貢献できる人材育成を目指している。

そういった人材育成も視野に入れながら、万博国際交流プログラム事業を活用し、2024年から「ドバイプロジェクト」と称してドバイとのオンライン交流や勉強会などを実施してきた。今回はそれらの取り組みのなかから、12月に実施した「有和中学校生徒ドバイ現地派遣プログラム」について詳しくお伝えする。

有和中学校生徒ドバイ交流現地派遣プログラム

2024年12月2日~8日に、有和中学校生徒ドバイ交流現地派遣プログラムにて中学2年生20名が渡航し、ドバイ現地校(GNS校)の生徒と2日間にわたり共同のカリキュラムを受講した。カリキュラムは、大阪・関西万博のテーマでもある環境、持続可能な社会、グリーンエネルギーなどについての内容で、相互に学習してきた内容を紹介するとともに同じ授業を受け交流を図った。また、中東文化の体験に加え、廃棄物処理場などドバイの環境への取り組みを見学したり、前回のドバイ万博の跡地などにも訪れた。

GNS学校訪問 1日目

GNS学校は、盛大な歓迎セレモニーに加え、豪華な食事でお出迎え。その後は、GNSでは男子と女子は基本別々に授業を行っているため、有和中学校の生徒も男女にわかれて授業に参加。はじめは通訳の方や英語教諭を介してコミュニケーションをとりつつも、プログラムが進むにつれ生徒自らが直接コミュニケーションをとる姿が多く見られた。文化や生活習慣の違いを越えて生徒同士がつながることができたことは、有和中学校の生徒一人ひとりにとってかけがえのない経験となったようだ。

 

 


また、1日目にはGNSと有田市の打ち合わせも行った。午後の打ち合わせには両校の校長をはじめ、今西在ドバイ日本国総領事も参加。大阪・関西万博の開会期間中にGNSの生徒が日本(有田市)へ来てもらえるよう有田市の魅力や有和中学校の様子についてPRし、意見を交わすことができた。

 


GNS学校訪問 2日目

GNS訪問2日目は、1日目よりも生徒同士が自然につながることができ、身振り手振りを含めた英語のコミュニケーションが行えるように。サッカーやトランポリンなど体育の授業や、1日目から継続したガーデニングや鳥の巣箱作りなどの活動を行い、より親交を深めることができた。

 

 


在ドバイ総領事館と廃棄物処理施設の訪問

翌12月6日は、 午前に在ドバイ総領事館を、午後にはワルサン廃棄物処理施設を訪問。在ドバイ総領事館では、今西総領事が生徒1人ひとりにドバイ訪問で感じたことについて問いかけ、各生徒が答える形で懇談。今西総領事からは、英語が使えると世界が広がること、人前で自分の考えを伝えることは重要であること、新しく気づいたことに好奇心を持って気づきから生まれる問いを大事にしてほしいこと、今回できた友人と今後もつながってほしいこと、また今回の経験を次に生かすとともに、日本とUAE(ドバイ)の架け橋になってほしいということなどが語られた。

 


ワルサン廃棄物処理施設では、伊藤忠商事から出向で来ている田中さんより施設説明を受けた。処理場建設の目的は公衆衛生の維持・ごみの減量化による埋め立て地の延命・温室効果ガス発生量の削減・焼却時の熱を利用した発電の4つであること、発電でできた電気を国が買い取り民間企業と政府の連携で循環型のシステムを構築していることなどを学んだ。

 


12月7日には、前回のドバイ万博の跡地であるエキスポシティへ。分別する習慣が定着していないドバイで、分別を意識したゴミ箱が設置されるなど環境に配慮した取り組みもなされていたことがわかった。

 


今回の取り組み後、有和中学校2年生約150名に行ったアンケートで「万博を契機とするUAE(ドバイ)との国際交流についてどう思ったか?」という問いに対し「非常に良い取組/良い取組」と肯定的に回答した生徒の割合は91.3パーセントと高く、プロジェクトが生徒たちにとって意義のある取り組みであったと言えよう。また、ドバイ訪問へ参加した20名へのアンケートにおいても、UAE(ドバイ)へ行く前と行ったあとの国際的視野の変化について「大きく変わった/変わった」と回答した生徒はなんと95パーセントで、「海外に興味が湧いてきた」と回答した割合も90パーセントと高かったことから、現地訪問したことが生徒の国際感覚を養うきっかけになったと考えられる。


万博期間中には、市内全小中学校が大阪・関西万博への教育旅行を実施予定。有和中学校の教育旅行ではUAEナショナルデー(9月19日)に全校生徒約600名が万博会場を訪れることになっている。また、12月のドバイ訪問に参加した生徒20名についてはUAEパビリオンの会場で、当日パビリオンを訪れた一般の客やUAE関係者等に対し成果報告のプレゼンテーションも予定している。GNS生徒の来日については現在検討中とのことだが、もし実現することになれば9月19日に共同プロジェクトとしての発表も検討していくという。

万博閉会後も、有和中学校とGNSの交換留学プログラム(オンライン交流を含む)は続けていき、実際に2025年12月にも有和中学校生徒の現地派遣を予定しているという。また、さらなる市民への意識醸成とドバイとの親睦に向けて、他分野での交流についてもの検討中とのことだ。

さまざまな国について、さらに知りたいと思ったら万博へ!

ここで紹介した以外にも、「万博国際交流プログラム」を活用して、中東を含むさまざまな国との国際交流を実施した自治体は多数あり、各地でさまざまなイベントが行われた。「大阪・関西万博」は、2025年4月13日(日)〜10月13日(祝)の184日間で開催される。各国の多様な文化に興味を持ったならぜひ万博に足を運んで、さらなる理解を深めてみてはいかがだろうか?

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