こんにちは。40代前半、3児の父にして2021年にFIREを達成した、みもじ(
@mimojinojinsei
)と申します。私は、貯金ゼロの浪費家から節約家へと転身し資産形成に専念しました。過去に働き過ぎて体と心を壊した経験から、自分の人生を見つめ直しFIREを決断。現在は資産形成のコツや自己の人生観について、Twitterを中心に情報を発信中です。
ここでは「お金を使わずに幸せな暮らしをする」をテーマに、日常的に大切な節約について、あるいは資産運用と節約の大切さ、FIRE後の生活の楽しさなどをお話ししていきます。第5回となる今回は、資産運用の際に効果的な「マネーリテラシー」や「ライフマネープランシート」についてお伝えします。
資産形成に必要なのは、学歴ではなくマネーリテラシー
マネーリテラシーとは、金融や経済に関する知識や判断力のことで、資産運用はもちろん、経済的に自立し、生きていくために欠かせないものです。ところが、その重要性の割にしっかり身につけている人は意外に少ないのです。
私の周りを見てみると、学歴が高い人が必ずしも資産形成を上手に行っているわけではありません。それは、マネーリテラシーを今まで誰からも学ぶ機会がなかったからだと思います。日本では昔から「お金の話をしてはいけない」ような風潮があることも影響しているでしょう。実際に私は誰からも教えてもらったことはなく、すべて独学で知識を得てきました。
一言でマネーリテラシーと言っても広いですが、ここでは簡単に、絶対に知っておいた方がいいジャンルを挙げてみます。
・税金
サラリーマンの方は給料から源泉徴収されているので、税金のことを考える必要性があまりありません。でも、調べていくと意外と払い過ぎている税金があったりします。払い過ぎている税金は自ら申告しないと取り返すことができません。自分に合った節税対策をしていってもらいたいです。
・社会保障制度
保険を検討する際、国の社会保障制度を理解してからにしましょう。日本の社会保障は充実していると思います。それを知らずに保険を契約すると、必要以上の保障を付けてしまい余分なお金を払うことになります。
・NISA
株式投資や投資信託で、運用益の非課税枠を利用できる制度です。通常、株式投資や投資信託の利益には20.315%の税金がかかります。投資をしていて運用益に課税されないというのはとてもありがたい制度なので、使わない手はないと思います。
・複利の効果
運用で得た利益を上乗せして再び投資することです。長期になればなるほどこの効果は大きくなります。投資の分野で投資信託に人気があるのは、この理由が大きいと思います。
・リスク
投資におけるリターンの「振れ幅」のことです。基本的にリスクの大きい投資はリターンの振れ幅が大きくなり、リスクの小さい投資はその振れ幅が小さくなります。一般的に使われる「危険」という言葉と同じ意味でとらえてしまうと、「投資=危険」という構図ができてしまうので注意しましょう。
マネーリテラシーが身につくことで「お金の流れのイメージ」を持つことができるようになります。どうやって商品が売られているのか?どのように購買意欲がかき立てられているのか?誰が利益を得ているのか?最終的に得をしているのは誰か?社会の構造が分かるようになっていきます。
それでは、リテラシーをさらに向上させるためにはどうしたらよいか。具体的なポイントを2つお伝えします。
1…日々情報収集する意識を持つ
定期的に書店に行き、「自分の知らない情報はないか」と常に発見しようとすることが大事です。私は週に1回は書店に通っています。たくさんの本を読むことで知識が増えますし、広い視野を手に入れることができます。ジャンルは節約、投資、副業、税金、ポイ活など幅広い方がいいと思います。ちなみに、昔読んで感動した本は、超ベストセラーとなっているロバート・キヨサキさんの「金持ち父さん 貧乏父さん」です。この本はお金を学ぶ1つのきっかけとなりました。お金持ちはどういう発想をしているのかが分かります。まだ読んでいない方はぜひ読んでいただきたいと思います。
また、SNSで気になる人をフォローしてその人の発信内容を吸収し、参考にすることもいいと思います。そうすることで自分の考え方の軸が生まれ、関心のあるジャンルや方向性が見えてきます。情報収集に終わりはありません。
2…ファイナンシャルプランナー3級程度の知識を身につける
3級程度の幅広い知識があれば、必要なときにその都度関連する項目を奥深く調べていくことができます。幅広い知識がなければ、関係する項目を「調べる」という発想にすらたどり着くことができません。知らないだけで損している場合もありますので、まずは幅広い知識を身につけるべきです。
お金に関する知識を教えてくれる人は、周りにあまりいないと思います。ですが、学べるツールはたくさんあります。それらを上手く活用するためには、自分から積極的に情報を集める必要があります。
また、お金の常識は時代とともに変わります。昭和時代の常識や価値観は令和の時代では通用しません。時代の変化に敏感になり、それがお金に対してどのような影響を与えるのかを注視していく必要があります。特に子供がいる方は、子供の将来のためにもお金の知識を身につけるべきです。「お金のことなら親に相談できる」という環境だと、子供もお金のことで悩むことが少なくなると思います。
最後に、重要なことをお伝えします。マネーリテラシーを高めていくと、遠回りすることなく可能な限り近道で資産形成していくことができます。
マネーリテラシーを向上させることは、「攻め」と「守り」の知識を身に見つけていくことだと思っています。「攻め」は資産を増やすためにはどうしたらよいか、「守り」は資産を減らさないためにはどうしたらよいか。マネーリテラシーを身に付けずに資産形成をしようとすると、不必要にお金を使ったり、もっと増やせるチャンスがあっても気づかなかったりして、同じ利益を得るにしてもものすごく遠回りになります。「攻め」と「守り」の2つの知識を向上させることで、効率的に資産を増やすことができるはずです。
手取り年収200万円台時代を生きる方法とは
これからの雇用形態の主流や、人の価値観を考えると、世帯手取り200万円台時代がやってくると思っています。この時代を生き抜くために、どうすべきかを考えないといけません。
厚生労働省の「2019年 国民生活基礎調査の概況」(※)を見ると、世帯所得の中央値は437万円、400万円未満の世帯は全体の45.4%、300万円未満の世帯は32.6%になります。
ここで問題です。手取り年収200万円台の場合「その年収の中で暮らす方法を考える」「増やす努力をする」のどちらがよいと思いますか?
その答えですが、どちらか一方というよりは、両方しなければなりません。ただ、収入を増やすことに比べ、必要最低限のお金の中で暮らすことはすぐに始められるので、優先的に始めるとすればまず節約になります。
もう一方の「収入を増やす」ですが、日本の経済状況を鑑みると将来的に給料が大幅に上がることは期待できません。どちらかというと増税傾向にあるので、手取り収入は減っていくと思われます。それを踏まえると、収入源を1つだけにしておくのではなく、副業をしたり投資をしたりして「増やす努力をする」必要性がでてくると思います。
それでは、実際にどのように暮らしていけばいいのでしょうか。そこで、“30歳夫、妻と子供1人の3人暮らしのサラリーマン”が年間約250万の支出(貯金・投資分を含む)で資産形成するモデルを考えてみました。
家賃 7万円
食費 3万円(すべて自炊)
光熱費 1万円
通信費 6000円
医療費 3000円
雑費・日用品 3000円
交際費 2万円
衣服費 2万円
貯金又は投資資金 5万円
合計 21万2000円
「浪費」を削ってシンプルライフを心がければ十分生活できますし、貯金や投資に充てる資金も確保することができます。不必要なモノ(コト)は持たない・買わない・やらないが鉄則です。自己投資は必要ですが、お金をかけなくてもできる方法を考えるといいでしょう。
「現役時代はシンプルライフでやりくりできても、老後はどうなのか」と心配をされる方も多いと思いますが、その場合は次のようなポイントに気をつけてみてください。
・長期の資産運用を行う
貯金だけでなく運用し、増やすことで、老後の心配を少なめに。
・資産形成は早ければ早いほど有利に
上記の例のように毎月5万円を貯金できると10年で600万円、20年で1200万円、30年で1800万円になります。一方、毎月5万円を運用益5%の投資信託で運用できたと仮定すると10年で約770万円、20年で約2000万円、30年後には約4100万円になります。
・最低限の生活費を知る
最低限どれくらいのお金があれば生活できるか(ミニマルライフコスト)を知っておくとよいです。その額を確保できれば生活できるという目安が自覚できるので、老後のお金の心配は減ってくると思います。
・自分の幸せの軸を持つ
「お金を使うことだけが幸せではない」と私は思っています。
何かをすることに常にお金が必要と考えがちですが、工夫次第でお金をかけずにその目的を達成することは可能です。例えば、体を鍛えたいと思っている人はすぐにジムに通うのではなく、まずは自分だけでできるトレーニング法をネットなどで検索して、取り入れてやってみましょう。いくらでもやり方はあると思います。なんでも自分でできるようになると、お金は驚くほどかからないものです。
「ライフマネープランシート」でお金にまつわる不安を可視化
もう一つ、将来のお金の不安を軽減してくれるものに「ライフマネープランシート」があります。今後の人生にどんなライフイベントが起こり、将来どれだけのお金が必要になってくるのかを分かりやすくするものです。
シートを作る際に入れる要素は以下のとおりです。
・収入=給与、保険満期金、各種手当など
・支出=家、教育費、車費、生活費、旅行費など
・ライフイベント=出産、進学、就職・退職など
シートを作ることのメリットは、「いつ、いくら、何のためにお金が必要か」を可視化することで、将来の家計を客観的に把握できることです。
例えば、収入よりも支出が多い時(=資産を切り崩したり借金をしたりしなければならない時)のタイミングがいつ訪れるかが分かり、それまでの準備期間を知ることができます。事前にお金の必要な時期がわかれば、お金と気持ちの両方の準備ができますから。
子供の教育費や出産から進学、社会人になるまでの間の人生設計の想定にも役立ちました。学費や習い事・塾にいくらお金をかけられるかを自分の中で理解できます。家庭の考え方にもよりますが、場合によっては奨学金を利用したり、お金をかけなくてもできる子育てについて学んだりすることも必要になるかと思います。
家を購入するならいくらまでなら払えるか、ローンは何歳までに返済可能か。また新築か中古かなどの選択肢が出てきます。必要な金額を知ることで、実家を受け継いだり、一生涯賃貸を選ぶなど選択肢も増えるかもしれません。
そして定年退職後。引退後の資金についてもおおよそ見通しはつくと思います。シートを作ってみて資産が足りなそうだと感じた場合は、現役中から副業を始めたり、株などの配当金がもらえるように準備していくといいでしょう。
まだライフマネープランシートを作っていない人は、今すぐ作ってみてください。周囲に聞いてみると、意外と作ったことがない人が多く驚きです。お金の不安は「将来を見通せない」という状態が作り出すものです。簡単な物でも良いのでまずは作ってみて、将来必要なお金を把握することをおすすめします。作らないと一生お金の不安はつきまとうと思います。
ちなみに、私は結婚したタイミングで作成しました。独身時代は貯金ゼロの浪費家だったので、生涯のお金は足りるのかを漠然と知りたかったからです。作る際は、将来にわたって「どの時期にいくらお金が必要となるか」を調べる必要があります。調べていくに連れてお金の知識も積み上げられていくので、早い時期から着手する方が望ましいですね。
なお、理想を求めるあまり、現実離れした計画は意味がありませんので注意が必要です。また、もしお金が足りなくなりそうだとわかった場合、ほったらかしにしないで必ず何らかのアクションを起こしましょう。時間が経てば経つほど準備期間が減っていき、状態は悪化するばかりです。
また、シートを作ったことで満足してしまい、存在を忘れてしまっていては意味がありません。年に1度は必ず見直してください。私は毎年お正月に確認することにしています。「ライフマネープランシート」はあくまで計画にすぎません。計画と現実がまったく同じになることは少ないと思います。毎年修正しつつ、計画そのものに無理がないかを常にチェックし、現状を自覚することが大事です。
※参考資料:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況 Ⅱ各種世帯の所得等の状況 『2所得の分布状況 図9』」から
取材・文=澤田佳代