温泉だけじゃない!アートからグルメまで、見どころ満載の大分県を体験してきた

2024年1月25日

体験に、グルメに。大分でしか出会えないものがいっぱい!

湯布院以外にも訪れたいスポットの多い大分県。国宝からグルメ、工芸体験などここでしか出会えないものがいっぱいある。

江戸時代の焼物をモダンに復興「臼杵焼(うすきやき)」(臼杵市)

キリシタン大名・大友宗麟が築城した丹生島城(臼杵城)の城下町・臼杵。城下町とともに名高いのが国宝の磨崖仏・臼杵石仏だ。全61体が国宝という大規模な石仏群で、現地に行かなければ観られない貴重なものだ。

石仏拝観ルートの入り口近くにあるのが、今回訪れた「うすき皿山」。臼杵焼の見学や体験ができるアトリエと臼杵焼を展示販売するギャラリー、喫茶室、焼き菓子工房が併設されている。

臼杵焼は約200年前の江戸時代後期、今の臼杵市末広地区にあった臼杵藩の御用窯で焼かれていた末広(皿山)焼がルーツ。この窯はわずか十数年栄えたのち、衰退してしまった。

うすき皿山の豆皿の型打ち体験に使用する道具類


それから時を経た2015年、わずかに残った資料を基にUSUKIYAKI研究所代表の宇佐美裕之さんが大分で作陶をしていた薬師寺和夫さんとともに再興プロジェクトを立ち上げた。現在作られている臼杵焼は末広(皿山)焼をアレンジし、現代の生活に合わせた器。かつて栄えた窯業文化を現代に伝える取り組みだ。

伸ばした粘土を型にのせて器の形に整える


アトリエでは型打ちや金継ぎ体験ができる。型打ちは、あらかじめ用意された型を使って器を作るもので、筆者のように陶芸未経験者でも簡単にトライできる。金継ぎは割れてしまった器を漆で継いでまた使えるようにする技術。

形ができ上った。あとは焼き上げて自宅に送ってくれる


今回は豆皿の型打ちを体験。いくつかの型から好きなものを選び、粘土を伸ばして型に合わせて形を整える。文章にすれば簡単だが、粘土の厚みを均一に延ばしたり、模様のメリハリがはっきり出るようにたたきつけるなど、ちょっとしたコツで出来が左右される。同じ型を選んでも作る人によって器の雰囲気が変わるのも興味深い。1カ月後、作品が届くのが楽しみだ。

うすき皿山のギャラリーに並ぶ臼杵焼の商品。無地の焼肌が美しい


隣接するギャラリーでは器や作品の購入も可能。白や黒など、無地の焼き肌が美しい臼杵焼は静謐さを感じさせる。箸置きなどの小物はお土産にもおすすめ。

「くにさき七島藺」を使った工芸品づくりに挑戦!「七島藺工房 ななつむぎ」(国東市)

七島藺の工房「七島藺工房 ななつむぎ」

もうひとつ、大分でしか体験できないのが「くにさき七島藺(しちとうい)」を使った工芸品づくり。「七島藺工房 ななつむぎ」は七島藺工芸作家の岩切千佳さんが営む七島藺の工房で、円座や鍋敷きなど工芸品の制作やワークショップ開催の活動をしている。

七島藺のミサンガづくりのワークショップ。岩切さんの鮮やかな手さばきに見惚れてしまう

七島藺は畳に使うイグサの仲間で、日本では国東市安岐町でのみ栽培されている。耐久性に優れているのが特徴で、柔道の畳にも使用される。断面もイグサが丸くスポンジ状なのに対し、七島藺は三角。それゆえ実際に使う場合は裂いて使わなければいけない。

七島藺を作る農家は現在国東半島に6軒のみ。密集して生えるため、手植え・手刈りでしか栽培できない。農家では七島藺の畳表も作っていて、岩切さんはその選別の時点ではじかれた材料を使って工芸品を作っている。もちろん、一つひとつ手作業だ。

無事ミサンガができ上った

今回筆者たちが参加したのは、七島藺のミサンガづくりのワークショップ。赤や緑などに染められた七島藺を三つ編みにしていく。簡単そうだが、七島藺は意外に硬く、きっちりと力を入れて編まなければゆるんでしまう。岩切さんの鮮やかな手つきに見惚れながら、たどたどしいものの編み上げることができた。

生産農家が減少する一方の七島藺の将来を危惧し、岩切さんは自分でも七島藺の栽培をはじめたそう。貴重な七島藺に触れ、その香りと強さを実感できるのもこの体験ならではだ。

温泉の恵みをいただく!地獄蒸し体験(別府市)

湯布院と並ぶ温泉地の別府。鉄輪温泉にある「地熱観光ラボ 縁間(えんま)」では「地獄蒸し体験」ができる。「地獄蒸し」とは、温泉熱を使って海鮮や野菜を蒸す料理のこと。シンプルだけど、素材本来のおいしさを感じられる調理法だ。

地獄蒸しのセット。これを釜の中に入れて地熱で蒸す


もうもうと湯気が立ち上る釜に食材の入った籠を入れ、釜下のコックをひねると蒸気で食材が蒸される。蒸しあがりまで待つことしばし。エビやヒオウギガイ、サザエ、ニンジンやキャベツなどの野菜が湯気を立てる。ただ蒸しただけなのに、いろんな食材の香りが混然一体となって複雑な味わいを醸し出す。テーブル下には足湯があり、温まりながら食事ができるのも温泉地ならではだ。縁間地獄蒸しコース2200円~。

地獄蒸し体験ができる「地熱観光ラボ 縁間(えんま)」


昔ながらの手作り焼酎とブリュワリー「藤居醸造(豊後大野市)」

九州のお酒と言えば焼酎。豊後大野市にある藤居醸造は1929年(昭和4年)創業。今も変わらず伝統的な手法で焼酎を作り続けている。麦を蒸し、室で麹を作り、もろみを育てる。もろみの状態を見ながら蒸留のタイミングを決める。自家製蒸留器を使用して蒸留し、熟成させる。この一連の作業を経て作られるのが同社の看板商品・麦焼酎の「泰明(たいめい)」だ。麦の香ばしさを感じる焼酎には職人の技が生きている。

藤居醸造の麦焼酎「泰明(たいめい)」がビン詰めにされ、ずらりと並ぶ

焼酎の製造過程のひとつ、発酵中のもろみ。炭酸ガスが盛んに発生している


2022年には麦つながりでクラフトビールの醸造も開始。IDA ラガー、IDAペールエール、IDA IPAの3種のクラフトビールを造っている。「日本酒や焼酎が苦手な人も飲みやすいお酒を」と、クラフトビールを造り始めたそう。ブリュワリーはガラス張りなので、タイミングが合えば醸造の様子を見学することもできる。

藤居醸造のブリュワリーの向かいにあるビアホールでは、クラフトビールや地元産食材を使ったおつまみなどを提供


ブリュワリーの向かいにはできたてのビールが味わえるビアホールも。大分県産のブランド豚を使用したハムやソーセージなど、ビールに合うフードも提供される。そのほか、クラフトビール工房のロゴ入りグッズや地元の雑貨なども購入できる。

10代280年続く茶舗 「お茶のとまや」(杵築市)

600年以上の歴史ある杵築城の城下に広がる杵築市。白壁の建物で統一された街は城下町の風情豊か。杵築市役所のすぐ近くにある「お茶のとまや」は、280余年10代続く歴史ある茶舗だ。

1875年(明治8年)の築の店舗は杵築の商家の代表的な建物で、大切に守られてきた。2018年(平成30年)には杵築市初の国の登録有形文化財に指定されている。店内には代々使用されてきた茶壷や茶臼、天秤などが展示されていて、歴史を感じられる。

杵築市にあるお茶のとまや。建物は国の登録有形文化財


店内の喫茶席では玉露やほうじ茶、抹茶などを菓子とともに味わえる。お茶菓子として提供される落雁豊生(ほうせい)は、口に入れるとほろりと崩れるはかなさだ。薄紅色は杵築市花の豊後梅を表し、薄緑色は良質の抹茶の色。最中もお茶と好相性で、皮の香ばしさが際立つ。冬には干支の最中が登場し、人気を博している。

「お茶のとまや」の干支の最中。2024年は辰


新旧の名所が街の魅力を引き立て合う大分。温泉ももちろんすてきだけど、それ以外の見どころもいっぱいの大分に出かけてはいかが?

取材・文=鳴川和代

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