2015年9月に国連サミットで採択されて以降、SDGs(エス・ディー・ジーズ/持続可能な開発目標)への関心は日に日に高まりを見せ、国や地方自治体をはじめ、大小の企業から個人まで、多くの人がSDGsへの取り組みを行っている。一方で、「SDGsってなに?」「サステナブルの意味は?」という声もまだまだ多く、日本国内の認知度は低いと言える。そこで今回、SDGsを実践している滋賀県の印刷会社「アインズ」の広報担当者にインタビューを実施。取り組みをはじめた経緯や、ハローキティと一緒に学べるSDGs絵本を出版した理由について聞いた。
SDGsってなに?
SDGsは、国連に加盟する全ての国が、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すための国際目標。持続可能な世界を実現するため、「貧困」「飢餓」「健康と福祉」などをテーマにした17の目標と169のターゲットで構成。アジェンダでは、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。
SDGsの推進運動は、地方の印刷会社でも進んでいる
――なぜSDGsの取り組みを始めたのでしょうか?
【広報担当者】親と子供が簡単に取り入れられる知育といえば、絵本です。親や先生がそばにいてくれて、自分のために声を響かせてくれる絵本は、実は子供にとって五感で楽しめるメディア。小さい頃、図書館の絵本コーナーで触れた絵本の手触り、紙の匂いは今でも忘れません。
絵本でSDGsの取り組みを始めたのは、紙媒体を扱う印刷会社だからこそ。将来にわたって、子供たちが人や環境に対する優しさを持つことを忘れないでほしい、という思いを込めています。SDGs宣言企業として活動していますが、印刷会社としての技術面での貢献に加え、未来の子供たちのためにソフト面で貢献することはできないかと考えています。
――サンリオと共に“ハローキティと一緒に学べるSDGs絵本”『Hello Kitty ぼくとわたしのSDGs ~世界のみんなと2030年を考えよう~』(2200円/送料別)を出版されましたが、現在、SDGsにおいてどのような目標を持ち、どのようなゴールを目指しているのか教えてください。
【広報担当者】目指すべきゴールは「4. 質の高い教育をみんなに」「12. つくる責任つかう責任」です。2021年4月より取り組みを始め、印刷会社として出来るアウトプットとして、「絵本」を出版しました。
――SDGsをどのように実践していますか?
【広報担当者】絵本の製法において、脱プラ印刷を使用することで目標12の「つくる責任つかう責任」を実践しています。また、中身のシナリオは、子供たちに分かりやすくSDGsを啓発する内容となっており、目標4の「質の高い教育をみんなに」を実践しています。
国際的なSDGs気運の高まりを背景に、アインズでも“人と環境に優しい印刷”をはじめとした、さまざまな社会貢献活動をSDGs活動として取り組んできました。こうしたSDGsの推進運動は、全国の地方の印刷会社でも進んでいます。
SDGsを子供たちに伝えたい!この想いが「SDGs絵本」の企画に
【広報担当者】そんななか、「SDGsを子供たちに分かりやすく伝えるツールが市場に少ない」という課題に応える形で、多くの子供に愛されながら、SDGs応援活動を行うハローキティと一緒に学べるSDGs絵本の企画が生まれました。SDGsで一つの区切りとして考えられている2030年は、現在の子供たちが社会で活躍する時代です。この絵本は、2030年をもっと良くするための方法を、子供たちが考えるきっかけとしての役割を果たすと考えています。
――SDGs絵本『Hello Kitty ぼくとわたしのSDGs ~世界のみんなと2030年を考えよう~』の注目ポイントを教えてください。
【広報担当者】1つ目は、ハローキティと一緒にSDGsを学べるところ。6種類のポーズのハローキティの絵柄はこの絵本のための描き下ろしです。世界で困っている人々の暮らしと、私たちの暮らしを比べながら、SDGsの17個の目標を分かりやすく紹介しており、ハローキティは数値やデータを用いて子供たちのSDGsに対する理解をサポートします。こちらは、SDGsの目標4におけるターゲット4.7に対する実践となっています。
2つ目は、太陽光によって絵が浮き出る「ソーラーインキ」の仕掛け付きであるところ。絵本のページを太陽光に当てることで、無地の部分にソーラーインキで印刷されたカラーイラストが現れます。ソーラーインキによる新体験は、将来にわたって子供の心に残り、人に伝えたくなる仕掛けになっています。ソーラーインキによる印刷は、国内でも数社しか生産できず、市場への販売としては全国的に初めての試み。子供向けのSDGs啓発のアプローチ方法として新規性があると考えています。
3つ目は、人と環境に優しい「脱プラ印刷」であること。世界的な脱プラスチックの動きを背景にして、絵本の紙の表面を傷から守るための加工に、アインズの独自技術「脱プラ印刷」を使用しています。従来のPP加工と比較してプラスチック原料の使用量を減らしながら(体積量15分の1削減/同社調べ)、繰り返し読んでもらえる耐久性を実現しました。SDGsの目標12におけるターゲット12.2に対する実践となっています。
その他、抗菌印刷で仕上げたり、絵本の制作にあたり、用紙費用の一部を「世界の子どもにワクチンを日本委員会(JCV)」に寄付したりと、印刷会社としてできることを網羅しています。
――SDGsが社内に与えた変化はありますか?
【広報担当者】絵本作りの過程では、20代の若手制作メンバーが中心となり、外部のブレーン(一般社団法人エシカル協会、子ども環境情報誌「エコチル」)とシナリオやイラストについて話し合いを進めるなかで、SDGsに対する深く理解することができました。
また、できあがった絵本は社員に配布しました。実際に社員の子供と一緒に読んだという家庭では、「SDGsって、この前テレビでやってたよ」「なんで世界の人は困っているの」といった子供の生の声や疑問を聞くことができました。
――SDGsを実践してどのような反響がありましたか?
【広報担当者】日々、ECサイトから注文があります。地域の幼稚園や企業にも100冊程度配布を行いました。また、企業からも取り組みに賛同いただき、コラボレーション依頼やSDGsスタートアップ支援の引き合いをいただいています。
SDGsは子供たちが生き方を考えるきっかけになるツール
――SDGsの取り組みの先に目指す社会はどんなものでしょうか?
【広報担当者】2030年には今の子供が進路を考え、社会で活躍する時代がやってきます。子供たちがより良い人生を送るにあたって、いま私たちが支えになる何かをしてあげられるとすれば、それは子供たちに多様な生き方を伝え、豊かな価値観を育てることではないでしょうか。
子供たちに多様な生き方を伝えるヒントを与える方法はなんだろうか。そう考えたとき、SDGsこそ、子供たちが生き方を考えるきっかけになるツールとして有効だと考えました。SDGsには1〜17の目標を通じて今の世界の困りごとが網羅されているからです。世界の今や、世界の動きを知ることは、子供が多様な生き方を知るヒントになると考えられます。
市場では、個別の目標を取り上げた絵本はありますが、目標を全て横断する内容のものはありません。そこで今回はハローキティが1~17の目標を案内する絵本を制作することにしました。是非、ハローキティと一緒に、親子でSDGsの世界に足を踏み⼊れていただければと思います。
※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。