「ガンダム」という共通言語で社会課題を解決?来るべき“現実の宇宙世紀“に向けて動き出した『ガンダムプロジェクト』の担当者を直撃

2021年10月1日

バンダイナムコグループは4月、機動戦士ガンダムシリーズのIP(キャラクターなどの知的財産)軸戦略※を進化させるべく『ガンダムプロジェクト』を発足した。そこで、ウォーカープラスでは当プロジェクトの全貌に迫るべく、主宰のチーフガンダムオフィサー(CGO)・藤原孝史氏のインタビュー連載をスタート。第1回目となる今回は、来るべき“現実の宇宙世紀”に向けて動き出した「GUNDAM UNIVERSAL CENTURY DEVELOPMENT ACTION(以下、GUDA)」について話を聞いた。

「ガンダム」を活用したサステナブルプロジェクト「GUNDAM UNIVERSAL CENTURY DEVELOPMENT ACTION(GUDA)」


※IP軸戦略…IPが持つ世界観や特性を活かし、最適な商品・サービスを、最適なタイミング、地域に向けて提供することで、IP価値の最大化をはかるバンダイナムコグループが掲げる戦略

強みであるIPをフルに生かしたサステナブルな取り組み


――「GUNDAM UNIVERSAL CENTURY DEVELOPMENT ACTION」とはどんな取り組みなのでしょうか。

【藤原孝史】ガンダムというキャラクターを使って、環境問題や人口問題といったさまざまな社会の課題に取り組んでいくプロジェクトになります。

今後、加速するであろう“人類の宇宙への進出”において、ガンダムシリーズの作品で描かれてきた宇宙におけるさまざまな問題(人口問題・地球環境問題)やメッセージは、これからの人類にとってきっと価値あるものだと思います。

リアルな宇宙世紀の幕開けに向けて、フィクションであるガンダム世界の宇宙世紀を教訓として、ファン・外部パートナーである『G-PARTNER』の皆様と手を組み、未来の子供たちのためにさまざまなアクションを行っていきます。

チーフガンダムオフィサー(CGO)・藤原孝史氏


――アニメ・ゲーム・ガンプラなどを通じて、ガンダムというIPは多くの人が語り合える“共通言語”になっています。「ガンダムで描かれていたあの問題」というテーマなら、“人口問題や環境問題”といった硬い話題もイメージしやすいですね。

【藤原孝史】はい。まずはガンプラを共通言語とし、GUDA第一弾を2021年4月より、バンダイナムコホールディングス、BANDAI SPIRITS、バンダイナムコアミューズメント、バンダイロジパルの4社による「ガンプラリサイクルプロジェクト」をスタートしました。

これは、ガンプラを組み立て終わったあとに残るランナーを回収し、エコプラと呼ばれる再生プラモデルにしたり、さまざまなリサイクルをファンの皆様とバンダイナムコグループが一体となって、持続可能な社会の実現を目指していくものです。

――捨てるだけだったランナーを再活用するというのは、まさにサステナブルな活動そのものですね。では第二弾プロジェクトはどんな内容なのでしょうか。

【藤原孝史】第二弾は「ガンダムオープンイノベーション」で、コンセプトは「ガンダムを使ったサステナブルな活動の推進」となります。そのアプローチ方法として、ガンダムの世界同様に、我々が向き合う人口問題、環境問題、宇宙進出などの未来社会におけるサステナブルなテーマ(領域)において、革新的なアイデアや技術などを世界中のファンや企業の皆様から広く募集しています。採用されたアイデアは我々がサポートしながらカタチにしていきます。


――自分の“アイデア実現”をサポートしてもらえるだけでなく、バンダイナムコグループに認められるという点はファンにとってはたまりませんね。世界中のファンや企業の皆さんのアイデアを集める利点や目的に関して、もう少し詳しく教えてください。

【藤原孝史】1979年にアニメ放映された『機動戦士ガンダム』は2019年に40周年を迎え、うれしいことに国内外に多くのファンの方がいらっしゃいます。昨今ではそんなガンダムファンの方々がいるからこそ、さまざまな施策ができた、といっても過言ではなく、成功例も数多くあります。“我々”だけではできなかったことが、ガンダムファンの力によって達成できている実感があり、「お客様と一緒に取り組んでいく」それらを繋げてくれるのがガンダムであると認識しています。

このように、IPを通してお客様と一緒に課題解決に取り組んでいけるのも、数々のIPを保有しているバンダイナムコグループの強みなので、ガンダムを使ったサステナブル活動を世の中にもっと広げて、より多くの方と繋がっていくことを目標としています。


――おっしゃる通り、ガンダムは国籍・老若男女を問わず多くのファンに支えられています。実際、2020年12月にオープンした横浜・山下ふ頭の「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA(ガンダムファクトリーヨコハマ)」には「動くガンダム」が誕生しました。「実物大のガンダムを動かす」という期間限定のプロジェクトのため、“ガンダム愛”で導かれたエンジニアが集まったとお聞きしました。このように、「ガンダムを軸に人や知見を集める!」という活動形式なのでしょうか。

【藤原孝史】はい。良いアイデアがあっても、技術的な面において我々では到底力が及ばない面は多々あります。ですので、専門の方の力をお借りする際には、やはりガンダムという共通言語が突破口になります。事実、「動くガンダム」の成功例が示す通り、技術的な困難に直面したとき、「ガンダムのために!」「ガンダムが好きだから!」というエンジニアの方々の気持ちが、高いハードルをも超えていく“共通言語”になりました。

「来るべき“現実の宇宙世紀”」とは?リアルな社会問題と向き合う


――「ガンダム」という誰とでも繋がれるキャラクター(共通言語)を用いて課題を突破していくわけですね。では、コンセプトにある「来るべき“現実の宇宙世紀”」とは一体どんな企画なのでしょうか。

【藤原孝史】1979年に放送されたファーストガンダムには「増えすぎた人口を宇宙へ移民させる」というコンセプトがありました。そして時を経て、2021年の現在ではその作中で定義していた人口問題が、決して無視することのできない国際的な課題になっています。

40数年前の機動戦士ガンダムのコンセプトが、空想ではなくリアリティになってきている中で、ガンダムを通して、ファンや専門家の方たちと再定義して、課題に当たっていくという考え方が「現実の宇宙世紀」の根底にあるものです。

つまり、現実とガンダムという自分の好きな世界観をリンクさせ、リアルな社会問題へ向き合って解決していくという動きに「新しいイノベーションが生まれるんじゃないのか?」という期待感もあります。

――大ヒットとなった映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、ガンダムの生みの親・富野由悠季監督の原作小説発表から約30年が経過していますが、作中で語られている人口問題や環境問題、テロによる紛争は現代の社会問題そのものになっていて「まるで予言書のようだ」といった声もあります。こうした世界各国が注力する社会問題を解決するため、広く「パートナーの知見」を求めていくわけですね。

【藤原孝史】例えば、ガンダムシリーズに登場するパイロットスーツは、人間が動きやすいよう薄くて軽い形状で描かれています。ですが、実際の宇宙服はそうではありません。なので、近い将来、本当に人類が地球と宇宙を行き来する時代がやってきたときに「どのようなパイロットスーツの提案ができるのか?」というようなアイデアも面白いと思います。宇宙の話になると壮大なテーマになりますが、まずは小さな成功事案を重ねていきたいので、アイデアは広く募集しています。

IP企業の強みを活かしたサステナブルな取り組みを実施


バンダイナムコグループが押し進めるもう1つのサステナブル「未来の子供へ」


――社会問題と向き合っていくため、ガンダムという共通言語を用いるということですが、子供たちにはどんな風にガンダムと関わって欲しいとお考えですか。

【藤原孝史】小学校の高学年を対象としたプラモデル授業「ガンプラアカデミア」 (2021年10月より本格展開)という取り組みを実施します。これは、学校で組み立てる体験用のガンプラと配信映像を組み合わせた授業パッケージをBANDAI SPIRITSが無償で提供し、日本の文化でもある“もの作り”の楽しさを実感してもらうというものです。今の子供たちは昔と比べて、“もの作り”を体験する機会が減っています。手作りから学べること、気づくことは数多いはずなので、そうした活動の中から「僕なら、私なら、こう作りたい!」という“発想”や“関心”を自由に持ってほしいと考えています。

「ガンプラアカデミア」のテスト展開として、鬼怒川小学校のオンライン特別授業に協力


6月には、栃木県の鬼怒川小学校で「ガンプラアカデミア」のテスト展開としてオンライン特別授業に協力させていただきました。体育館に全校生徒82名を集めてバンダイホビーセンター(プラモデルの生産工場)とオンラインで繋ぎ、プラモデルを生産する映像の視聴や従業員との質疑応答、ガンプラの組み立てに挑戦してもらうというものですが、児童のみんなに喜んでもらえて、普段の授業とは異なる反応が多く見られた、と先生方から伺うことができました。手先を使って作る面白さを感じてもらい、子供たちの“未来へのきっかけ作り”になることも、我々のサステナブルな取り組みの一環になっています。

――ありがとうございます。

次回、本連載の2回目では「ガンダムオープンイノベーション」の担当者とCGO・藤原氏による対談を実施。プロジェクトの内容をさらに掘り下げる。

【画像】ガンプラの特別授業では、上級生が下級生にガンプラの作り方をレクチャーする場面も。こうした“教え合い”“助け合い”が各所で見られたという

ガンプラを完成させ、喜びのピースサインをする児童


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