日本の茶業界が厳しい状況にあるという。そんななか、日本茶ブランド「一坪茶園」が、“ワンアクション”で美味しくいれられるお茶(煎茶・焙じ茶・玄米茶の3種のティーバッグ)を、同社WEBサイトにて発売した。これは、「作る人と飲む人の想いをつなぎ、日本茶の未来を創り、農家の未来を守りたい」との思いから開発されたもの。今回は、この「一坪茶園」代表にインタビューを実施し、日本茶の課題や商品の魅力について聞いた。
大手飲料メーカー原料茶葉の調達・設計に携わっていた「一坪茶園」代表の脇奈津子氏は、当時、茶農家が抱える問題に直面。急須でお茶を飲む人が減り、家庭向け茶葉の需要も減少、収入も右肩下がりになっている現状を嘆く茶農家たちを目の当たりにしたのだそう。そこで脇氏は茶葉設計技師と共に、2019年に「一坪茶園」を立ち上げ。これらの課題に取り組みながら、商品を開発・発売した。
――「日本茶が20年後に飲めなくなる」というような話がありますが、それはなぜなのでしょうか?
【脇】茶農家さんたちは、お茶を“急須でいれること前提”で作っているのですが、実はここ20年、おじいちゃん、おばあちゃんのいる3世代家族や旅館といったところ以外では、急須というのはほとんど使われていないんですね。そういう状況のなかで“飲み手が何を求めているのか”、茶農家さんたちは分からない。そして売れなくなり、儲からなくなってきている。悪循環のなかで「自分の子供には継がせたくない」と言う状況です。20年後には、茶農家さんの約8割が茶業継続が困難になると言われています。農家を継ぐ人がいなければ、日本茶の文化も失われてしまいます。
――「一坪茶園」はどのような課題に取り組まれているのでしょうか?
【脇】「産業・雇用を守る」ということ、「良いことをしながらビジネスをする」ということ。「一坪茶園」はサステナブルなビジネスを推進しています。
急須を利用した茶葉需要が激減し、廃業する日本茶業界(農家)といった課題に対して、作る人と飲む人の想いをつなぎ、お茶の新たな需要を創造・茶関係人口の増加させ、日本茶の未来を創っていく。
そして「一坪茶園」は、衰退の一途を辿る日本茶のクラフトマンシップを「美味しく」「 手軽に」「エシカル」 に楽しめるライフスタイルへ、グローバルに創造し、お茶(特に茶農家の収入源となる一番茶)が適正価格で継続的に売買される仕組みづくりをしていきます。
国連で採択されたSDGsでは、【8】働きがいも経済成長も【9】産業と技術革新の基盤をつくろう【15】陸の豊かさも守ろうの3つの目標に取り組んでいます。
――発売された煎茶・焙じ茶・玄米茶はどのような商品ですか?
「一坪茶園」では、急須がなくてもいれられ、どんな温度でも美味しい味わいと香りが楽しめるティーバッグのお茶を、共同創業をした茶葉設計技師の永井大士(まさひと)の知見を最大限に生かしながらデザインしました。
“急須でいれること前提”で作られたお茶は、熱いお湯を注ぐと香りが立つようにできているのですが、「一坪茶園」のティーバッグは、“水出し”で、マイボトルにティーバッグをポンと入れるだけで、美味しく楽しめるよう、しっかり香るように原料を厳選・複数茶葉を火入れ・黄金ブレンドしています。常温や冷水なら、少しずつ茶葉が開き、1~2時間後にはお茶が愉しめます。
ちなみに、ティーバッグというのは通常2グラム程度の茶葉しか入っていないのですが、「一坪茶園」では品質の良い茶葉が黄金ブレンドされ、7グラムも入っているんですよ。
(キャンプ用品メーカー)スノーピークさんでも米国・日本をはじめ、グローバルに「一坪茶園」のお茶を扱っていただけることになりました。マイボトルにティーバッグをポンと入れるだけで、シーズンを問わず一年中、キャンプのような水しかない状況でも「手軽に」「美味しい」お茶が飲める。誰でも、失敗せずに簡単に作れる「手軽さ」と「美味しさ」と茶業界を救うという「エシカル」を実現した、今までにない「一坪茶園」のグローバルな挑戦が始まる。
取材・文=平井 あゆみ