世界的にSDGs(エス・ディー・ジーズ/持続可能な開発目標)への関心が高まるなか、各企業でもさまざまな取り組みが行われているが、具体的にはどのようなことが行われているのだろうか?今回は、九州フィナンシャルグループ・肥後銀行で、SDGsに取り組んだ経緯や、具体的な活動内容について聞いた。
SDGsってなに?
SDGsは、国連に加盟する全ての国が、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すための国際目標。持続可能な世界を実現するため、「貧困」「飢餓」「健康と福祉」などをテーマにした17の目標と169のターゲットで構成。アジェンダでは、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。
阿蘇の森林保全から生まれた「おしゃれすぎる銀行」
ーー肥後銀行では、SDGsの取り組みに賛同する以前から、環境や社会に配慮した事業活動を行ってこられたそうですね。
【広報担当者】はい。当行ではこれまで、植樹や田植えなど地下水保全活動や熊本地震後の創造的復興に向けた金融支援といった形で、環境・社会に配慮した事業活動を行っています。そうした活動がSDGsに合致するということで、3年前に経営企画部内に「サステナビリティ推進室」を設置しました。
ーーなるほど、SDGsをきっかけに銀行内に専門組織を作られたということですね。では、そこでは具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか?
【広報担当者】ESG・環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governence)関連の投融資推進や地域産業振興・復興支援取り組みの強化、地域間格差のない金融サービスの提供など、さまざまな角度から取り組みを行っています。
もちろん、以前から注力している「地下水保全活動の3本柱」も継続しています。1つ目は、水源かん養柱を育成するための「阿蘇大観の森」での植樹、2つ目は、耕作放棄地を利用した「阿蘇水掛の棚田」での水田湛水事業、そして3つ目は、野焼きボランティアなど「阿蘇の草原」の維持活動です。
阿蘇大観の森では2006年から現在まで61.6ヘクタールに約14万本を植樹し、阿蘇水掛の棚田では2011年から毎年田植えや稲刈りを行っており、今後も継続して取り組んでいきます。
ーー地元企業が地域の良質な自然を守るのはとても意義のあることですね。そのほか、「おしゃれすぎる銀行」として、リニューアルした子飼橋支店も話題です。
【広報担当者】SDGsやサステナビリティを推進する企業として、何かできないかと検討した結果、同支店には、それらのコンセプトを盛り込んだデザインを採用することになりました。
インテリアデザインには、「阿蘇大観の森」の間伐材をふんだんに使用しています。そのほか、床や壁、天井、椅子など、阿蘇の自然を思わせるような「自然と調和したデザイン」を意識しているので、お客様にとって心地よい空間に仕上げることができました。
ーー環境に配慮した店舗はほかにもあるそうですね。
【広報担当者】例えば、LED照明は全支店の約8割、太陽光発電は11店舗に導入済みであり、2021年11月15日にリニューアルオープンした菊池支店も子飼橋支店と同様に間伐材や太陽光発電など環境に配慮したつくりになっています。本店では、使用する水の約6割を雨水で賄う設備や、大気汚染の浄化を目的とした植栽を整備しています。これをモデルケースとして、今後の店舗設計にも反映していきたいと考えています。
SDGsを取り入れた新たなビジネスモデルを提案
ーーSDGsの取り組みを実践される中で、御社を取り巻く環境や御社内など、どのような変化がありましたか?
【広報担当者】SDGsの認知度は、2020年は熊本の企業において3割程度でしたが、2021年には7割と増加傾向にあり、大手シンクタンク(帝国データバンク)の調査結果では、SDGsに積極的な企業の割合が熊本では約5割に達し、その割合は全国トップとなっており、SDGsに取り組む企業が着実に増えています。取引先の企業から、当行の取り組み内容などに関しての問い合わせや、当行のSDGs関連商品のご案内が増えており、今後は、認知度向上とともに、興味を持つ企業の増加が予想されます。
ーー「SDGsコンサルティング業務」も特徴的です。
【広報担当者】当行では、2020年4月に「SDGsコンサルティング業務」をスタートさせました。簡単に言うと、SDGsを企業活動に取り込んで新たなビジネスチャンスを生めるよう、バックアップをしていく事業になります。
日本には毎年のように大規模な災害があり、10年後、20年後を見据えて、不確実な時代を乗り越えるために事業活動を継続していかなければなりません。その指針のひとつとしてSDGsはとても重要な考え方でもありますので、それを軸に、お客様のニーズにマッチしたビジネス開発をサポートしているところです。
ーーSDGsをどう企業活動に結びつければよいかわからない企業にとっても、頼もしい存在となりそうですね。今後、SDGsを続けて行く中で、どのような社会を目指されていますか?
【広報担当者】九州フィナンシャルグループ・肥後銀行は業務を通じて、お客様と地域の持続可能性を高め、そして当社および当行の持続可能性を向上させてまいります。そして、その好循環サイクルを持続的に回すことを目指して、今後も活動を続けていきたいと思います。
ーー最後に読者にメッセージをお願いします!
【広報担当者】日本でも最近、テレビ番組や新聞などでSDGsの話題が多く上がるようになっていますが、世界では日本に比べより先進的な取り組みが行われています。日本の取り組みをより推進するために、読者の方にもSDGsを理解し、まずは身近なところから取り組んでいただければと思っています。