持続可能な社会をつくるための国際目標「SDGs(エスディージーズ)」。人権問題の解決や自然保護など、17の具体的な目標が定められている。その中でも近年の異常気象やプラスチックによる海洋汚染などのニュースを見て、環境問題に関心を持つ人は増えているのではないだろうか。
日本を代表する老舗ホテル・帝国ホテルでは環境保護活動のひとつとして、ホテルで出たコルク栓をリサイクルしコースターとして再利用している。帝国ホテル大阪の広報担当者にリサイクルを始めたきっかけや、ホテルとして環境問題へ取り組む思いについて聞いてみた。
質の高いサービスと共に、最大限の環境への配慮も
帝国ホテルは1890年に日本の迎賓館として開業。伝統と品格ある空間、質の高いおもてなしを提供する一方で、環境問題への取り組みにも積極的だ。
「ホテル業は『電気や水を大量に使う』『たくさんのごみを排出する』という、環境負荷が高い産業のイメージがあります。帝国ホテルでは高品質な商品やサービスを提供すると同時に、環境への配慮に最大限努めることも企業としての社会的責任を果たすために必要であると考え、2001年に環境委員会を発足しました。2020年にはサステナビリティ推進委員会と名を改め、SDGsを基盤とした取り組みや活動を行っています」
廃棄されていたコルク栓を再利用。イベントやフェアで使われるオリジナルコースターに
環境に配慮した取り組みのひとつが、ホテルで出たワインのコルク栓をリサイクルし、オリジナルコースターに生まれ変わらせるというもの。実は、東京、大阪、上高地の3か所にある帝国ホテルを合わせると、コルク栓の排出量はなんと年間で約880㎏にもなるのだそう(コロナ禍による影響がない場合の目安)。
「コルクリサイクルは、従来廃棄していたワインのコルク栓をリサイクル素材として再利用し、ごみ排出量を削減することを目指して2014年に始まりました。コルク栓の引き渡し先は、障がい者の就労を通して社会参加を支援する社会福祉法人で、コースターや小学生向けの教材などを作る一工程を担っています。当初は引き渡しのみでしたが、2016年よりオリジナルコースターの製造を依頼し、購入しています。お客様へのノベルティなどに活用することで、循環型環境活動を推進しています」
リサイクルで作られたオリジナルコースターは、主にホテル主催のイベントやフェアの販売促進、ノベルティとして使用されている。「それぞれの企画にあったキャラクターやロゴを印刷して製作しています。無料でお渡しするものですが、デザインなどはチープにならないよう気を付けています」とこだわりのポイントも。
現在、帝国ホテル大阪では「ドアマン・スヌーピー」アフタヌーンティーのノベルティとしてプレゼントしている。コースターは環境活動の一環でもあることをアピールしており、利用者からも好評なのだそう。
ホテル業界のリーディングカンパニーとして、使命感を持って社会貢献を
帝国ホテルグループでは、東京、大阪、上高地、ザ・クレストホテル柏の4ホテルでエコマークを取得し、環境省の「環境 人づくり企業大賞」を2016年から5年連続で受賞するなど、環境への取り組みが評価されている。最後に日本を代表するホテルとして環境活動を推進する思いを聞いた。
「初代会長・渋沢栄一の『社会の要請に応え、貢献する』という信念のもと、日本の迎賓館として生まれた帝国ホテル。そのため、社会の要請に応えたいという意識は従業員にも深く根付いています。環境活動を通して社会に貢献することも働くモチベーションとなっており、ごみの分別の徹底や省エネの啓発は社内に十分浸透しています。今後も国際的ベストホテルを目指す企業として『サステナビリティ』と『ラグジュアリ―』の両立を追求し、帝国ホテルブランドのさらなる向上を目指します」
一流のサービスと社会貢献に対する強い思いを持って行動する帝国ホテル。今後の活動にも注目していきたい。
取材・文=松原明子
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