世界的にSDGs(エス・ディー・ジーズ/持続可能な開発目標)への関心が高まるなか、自治体や各企業がさまざまな取り組みを行っている。今回は、JT(日本たばこ産業株式会社)が取り組む「Rethink PROJECT(リシンク・プロジェクト)」をフィーチャー。JT渉外企画室の加藤達也氏と藤木大三郎氏に、同プロジェクトの具体的な活動内容や、その成果について話を聞いた。
SDGsが世界の共通言語に
――JTが目指すSDGsの目標とゴールを教えてください。
【加藤達也】JTでは従来より、お客様を中心として、株主、従業員、そして、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足度を高めていく「4Sモデル」を経営理念として掲げており、2015年の国連採択以前よりSDGsの理念である“社会の持続的発展”への貢献を意識した活動を継続的に行っています。
具体的には、JTグループのサステナビリティ戦略における中期取り組み目標として、包括的かつ持続可能な地域社会の発展を目指し「地域社会への貢献」を掲げています。そのなかでも、「格差是正」「災害分野」「環境保全」を重点領域として位置付けています。
――これまで、日本文化のひとつである“三方よし”の考え方は、世界では理解されづらい面もあったかと思います。このSDGsという考え方が浸透したことにより、日本の企業が行ってきた“三方よし”の営みが、「これってSDGsの何番だよね」という説明で、「海外の人にも理解されやすくなった」という話を聞くようになりました。
【加藤達也】おっしゃる通り、さまざまな企業や団体の方々とお取り組みをご一緒させていただくなかで、SDGsが“共通言語”の役目を果たしていると感じます。17番の「パートナーシップで目標を達成しよう」という共通の目標がありますから、協業の相談もしやすくなりますし、私たちが取り組ませていただいてる地域社会への貢献活動についても、「〇番のことです」といった風に説明することが多くなりました。
――では、JTが取り組む「Rethink PROJECT」の内容を教えてください。
【藤木大三郎】「Rethink PROJECT」は「視点を変えれば、世の中は変わる。」をテーマに、当たり前をより深く考え、Rethink(視点を変えて、物事を考える)をキーワードに社会課題と向き合うためにスタートしたプロジェクトです。1社(単体)でできることには限界があるため、共通の課題を持っている方々と一緒にパートナーシップを築き、課題解決へ向けた取り組みをおこなっています。
社内の共通認識拡大が「SDGs」施策を加速
――このプロジェクトを進めるにあたって苦労した点は?
【加藤達也】スタート時、社内におけるSDGsやRethink PROJECTへの認知・理解という点で課題がありました。ですが、北海道から沖縄までの取り組みを社内限定のツールを使用し共有化するインフラが整ったことで、社内での「共通認識の拡大」につながり、課題は少しずつ解消できたと思います。
――共通認識が向上し、社内にどんな影響がありましたか?
【藤木大三郎】「Rethink PROJECT」を始めたことによって、全支社で一貫したコンセプトが共有できたと考えています。 何より、地域の方々に、当プロジェクトのお話をできるようになったことが大きな変化です。
――「どうしたら地域貢献ができるのか?」といった課題について、地域の方と一緒に考える機会が生まれたと。
【藤木大三郎】はい。沖縄では、今年、那覇市制100周年を祝う「#かなさなはPROJECT」という施策を官民一体となって立ち上げました。そこで、地域の皆様とJT沖縄支店が一緒に取り組みを行ったり、北海道ですと「Mm PROJECT」というものがあり「LGBT、マジョリティ、マイノリティなどさまざまな考え方の人が共存して生活するためには?」といった課題を持ち、セミナーを行っています。このように、全国各地で活動を展開していますが、その土台には“全社員の共通認識”があってこその広がりであると思います。
社外からのうれしいオファーも
――社外からはどのような反響がありましたか?
【加藤達也】従来では、こうした取り組みを弊社から「一緒にやりませんか?」というお声掛けをさせていただくことが多かったのですが、先方様から「一緒に何かやりませんか?」といったうれしいお言葉を頂ける機会が増えました。まさに、SDGsで“世界が広がり繋がっていく”瞬間であると思います。
――SDGsを実践してみて、その成果と課題を教えてください。
【藤木大三郎】「Rethink PROJECT」が立ち上がって約1年6カ月 。さまざまな施策を取り入れ、パートナーシップを結び、新しい企画も継続中です。当然のことながら地域により抱える課題がそれぞれ異なっているという体感があり、東京や大阪のような大都市や、地方都市それぞれで課題は違います。その解決には、我々だけでなくその土地に根付いている企業の方々や行政と一緒になり取り組んでいく必要があります。
2030年で終わるのではなく、100年後も続く活動に
【藤木大三郎】我々としても、1つの施策をやって「はい、終わり」ではなく、それを継続的な活動に結びつけていくことが必要だと考えています。先ほどお話しした那覇市の「#かなさなはプロジェクト」も、当初は「100周年をお祝いしましょう」というところから始まりましたが、施策を進めるなかで自然と「100年後の那覇市のために、これから100年続く活動にしよう!」という声が出てきました。
そうすると、イベント以降のアクションプランも議論されるようになり、参加者のチーム力というのでしょうか、結束力が増していったのです。同じ目標に向けさまざまな方々の力が結集していくこと、それこそが「成果」であるとうれしく感じています。また、今後も、短期的な視点ではなく、中長期的な視点で取り組みを行っていく必要があると考えます。
――SDGsの取り組みの先に目指す社会は?
【加藤達也】“誰一人取り残さない”というテーマに強く賛同しています。「Rethink PROJECT」は、さまざまな視点を向かい合わせ、多様性が混ざり合う社会の実現を目指しています。そして、さまざまな視点が混ざり合うことの化学反応を信じてプロジェクトを推し進めています。お互いが相手の立場を想像し、お互いの視点を共有し重ね合わせていくことで気づくことができる「ヒト・モノ・コト」の「価値や魅力」をこれからも発信していきたいと考えます。
【藤木大三郎】「Rethink PROJECT」では「視点を変えれば世の中は変わる、当たり前をもっと深く考えよう」というメッセージを打ち出しています。一緒にお取り組みをした皆様とその想いを共有できるようになってきた、という実感があります。
視点を変えて、物事を考える=Rethinkは、誰が正しい、間違っているといった話ではなく、お互いの視点を向かい合わせることによって、多様性が混ざり合う社会が生まれることだと信じて進んでいきます。