約1カ月で“1トン”のランナーを回収した「ガンダムR作戦」 仕掛け人・田口博丈氏に聞く「ガンプラの未来」

2022年1月6日

「ガンダムR作戦」のプロデューサー・BANDAI SPIRITSの田口博丈氏

バンダイナムコグループが実施している横断プロジェクト「ガンダムプロジェクト」が、ガンダムを通じてリサイクルへの関心を高める活動として展開した「ガンダムR(リサイクル)作戦 FINAL 2021」。そのオープニングセレモニーが2021年11月19日、新宿住友ビル・三角広場で開催された。

回収した「1トン」のランナーでさまざまなインスタレーション展示


「ガンダムR作戦」は10月20日より全国31会場で展開され、約1カ月間で約1トンものランナーを回収。これまでに全国で回収してきたランナーと共に一堂に集め、3000枚のランナーを使用した「1/1ガンダムヘッド」のほか、作家メディアアーティスト・落合陽一氏やクリエィティブカンパニー・NAKED,INC.とのコラボレーション作品も展示された。

3000枚のランナーを使用して作成された実物大の「1/1ガンダムヘッド」

約1カ月で「1トン」ものランナーを回収する、ファンのガンダム愛を感じる

回収したランナーは「エコプラ」などのリサイクルに使用される


ランナーを使って茶室を製作した落合陽一氏


ガンプラのランナーで製作した茶室『可塑庵(ぷらあん)』をお披露目した落合氏は、「元々、茶道を習っていて、利休流が作っている茶室を見ていると廃材が使われていたり、地産地消の掘り出し物を使用するといったカルチャーが500年ぐらい前からある」とし、本作『可塑庵(ぷらあん)』の原材料になるランナーについては「面白かったのが、1回、誰かが使ったランナーなので、部品が付いていたりして、ランダムな成形をしている。その中で、光が入ってきたときに自然光の木漏れ日のように、美しい影を落とすのが実に絶妙」と語り、自身も楽しみながら製作したことを明かした。

ランナーで製作した茶室『可塑庵(ぷらあん)』前でエピソードを話す落合陽一氏

個人から回収するランナーには、まだ部品が付いてる物もあり「面白い」と語る

茶室で実際にお茶を煎る落合陽一氏


ファンを巻き込んだ「ガンダムR作戦」の成果とは

BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン グローバルビジネス部 田口博丈氏


10月20日、“リサイクルの日”よりスタートした「ガンダムR作戦」。当企画のプロデューサーでもある株式会社BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン グローバルビジネス部 田口博丈氏に、当イベントについて話を聞いた。

――R作戦企画が立ち上がったタイミングと、その経緯を教えてください。

【田口博丈】バンダイナムコグループで、「ガンプラ」のランナーを回収し、ファンの皆さまと共にケミカルリサイクルによるプラモデルの製品化を目指す「ガンプラリサイクルプロジェクト」が4月に立ち上がりました。その活動を推し進めていくなかで、非常に多くのファンの皆さまから反応を頂きまして「より活動を広げていかないといけない」と感じたのと、ガンダム、ガンプラというIP(キャラクターなどの知的財産)を通すことでリサイクルというメッセージをより広く伝えることができると思い、今年の夏頃に「ガンダムR作戦」の企画を立ち上げました。

――今回の企画で「1トン」ものランナーが回収されましたが、当初からその数字は想定されていましたか?

【田口博丈】リサイクルという名目でしたので、特に目標を設定してということはありませんでした。終わった結果としての数字である「1トン」という数は、ファンの皆さまの“ガンダム愛”が反映されたものであると考えているので、感謝の気持ちでいっぱいです。

ランナーの回収ボックス、4月からの立ち上げ1年間で10トンの回収を目指している


――リサイクル材を使用したガンプラ体験会キット(通称:エコプラ)の成形色はブラックなどの暗めのカラーですが、将来的には他の色になることもありますか?

【田口博丈】リサイクルについては、現在いろいろな実証をしており、「エコプラ」を生産するマテリアルリサイクルによるカラー再現も、回収したランナーを色分けして成形してみるなどスタートしたところです。新品のプラスチックへと再生し製品化を目指すケミカルリサイクルでは、リサイクル材100%のガンプラの実現に少しずつ近づいているのが現状です。段階的に、皆さまに進捗をお届けできればと思っております。

ブラックの成形色でマテリアルリサイクルした「エコプラ」


――「ガンダムR作戦」ではランナーの回収がコンセプトとなっていました。今後、リサイクル活動をどう発展させていくのでしょうか?

【田口博丈】「ガンダムR作戦」は「ガンプラリサイクルプロジェクト」の一環として開催しました。本プロジェクトは4月から始動しており、1年間で「10トン」のランナー回収を目標としていますが、私たちとしてはもっと回収率を上げていきたいと考えています。そのためには今後も回収ボックスの設置を各地に増やしていくなど、ファンの皆さまに、このリサイクル活動を知ってもらいたいと思っています。

――ガンプラとSDGsの関わりについて、どのようなビジョンがありますか?

【田口博丈】バンダイナムコグループとしては、「GUNDAM UNIVERSAL CENTURY DEVELOPMENT ACTION(GUDA)」という活動がスタートしており、その中に、ガンプラを題材に小学校の高学年を対象にした教材“プラモデル授業”『ガンプラアカデミア』といった教育的な要素も含んでいます。

『ガンプラアカデミア』は、プラモデルを通じて「ものづくり」に興味を持っていただくことを目的としていますが、ガンプラを使った授業の中でリサイクルの紹介もすることで、ちょっと難しい「リサイクル」という分野への関心も高めていけるような活動も担っていきたいと考えています。最後に、バンダイナムコグループは、ガンダムというIPを使ったサステナブル活動を行っています。ファンの皆さまやいろいろな業界のパートナーと手を組み、さまざまなアクションを行うことで、この世界の未来のために、少しでも貢献していきたいと考えております。

「ガンダム」というIP(キャラクターなどの知的財産)を使って、サステナブルな展開活動を行う


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